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165/186

165.幸運

目の前で行われている訓練に目を奪われていた、魔王に仕えていたサキュバスの目から見ても闘技場で魔王が人間の強者をなぶり殺しにして恐怖で支配を確立するためのショーに見えた、違いは止めを刺さないだけだろう


魔王の役目を演じるのはエルフの女性だった、魔力から上位種なのだろうと推測される、恐らく古エルフだろう、この世界ではハイエルフと言われているが世界樹と非常に繋がりが強固な存在なのは同じだ、魔王の力を得たダフネと遜色ない力を持っている様だ


精霊魔法を使いこなしこの世界の聖女と思われる女性が指揮するパーティを圧倒している、精霊魔法だけでは無く短剣を用いた接近戦闘に加えて呪詛まで使用して見せた、まるでダフネの戦いを見ている様だ、意図的に模倣しているのだろうか?呪詛の使用には魔道具らしい短剣を使用している様だ


勿論戦い方に違いもある光の精霊で視力を潰して騎士相手に接近戦を有利に持ち込んで同士討ちを警戒させ魔法での支援を躊躇させる、自分の魔法の射線は回避すれば後衛に向かう位置とタイミングで放たれる、痺れを切らしたのだろう聖女自身が接近戦を挑む、この聖女も異常だった


自身への魔法防御を付与して打撃にも使用可能な杖で戦っていた、パーテイは魔法で援護する聖女の魔法防御に絶対的な信頼が有るのだろう平気で巻き込む事を厭わずに魔法を放つ、聖女はエルフの視界を自分の身体で遮りながら戦っていたそれでもエルフの短剣が聖女に掠り傷を付けた後に動きが悪くなり勝負が付いた


毒か呪詛を直接身体に送り込んだのだろう、このエルフとダフネが戦えば勝敗はどうなるのだろうか?ダフネも新たに獲得した力を自分の物にするために必死で鍛えていたが、目の前で見せられた光景は意味が違う本来の戦い方では無ない筈の戦闘で、私達が魔王と共に撃退した勇者パーティ以上の戦力を圧倒して見せたのだ


何が気分転換に神殿を案内しましょうだ、もてなしに提供された食事を含めて全て力を誇示するためのデモンストレーションを兼ねていた、食事は大変美味しかったし魔力増強の効果がある食材が使われていた


「普段は毒耐性を獲得するための料理も提供しているのですが最近は初めての方にお出しできる様な代物ではなくなっておりますので別のメニューにしております」

そんな事を料理人が言っていた


とても毒が入っている様には見えなかったが実際にその食事で聖女の治癒を必要とする者が出ていたし、食事を楽しんでいるのは一部の強者に限られた、今思えば訓練でエルフに挑んだ者達を含む精鋭だけだっただろう


それ以外の者達は料理に口を付ける順番にも気を付けていた様に思う、毒の含まれていた料理を胃袋が空の状態で身体に入れたくは無いのだろう、普段から毒に対しての警戒心を養いつつ気が付いていながらその毒を摂取しなければいけない


頭がおかしい、狂っている、魔人だってこんな食事はしない暗殺書を養成する組織と言われても信じただろう、次いで別の場所を紹介された、卯月殿の趣味だと言う実験場だ、魔力を使用しない武器や兵器を作成する事に凝っているそうだ


一部は研究を禁止されてしまったそうだが条件が限定さえるほどやる気が出ると言う、意味がわからない実験所の地面の砂がガラス状に変化していたこれを引き起こした兵器が禁止されたと言う、別の方法でこの威力を再現するのが目的だと言う


魔法で良いではないの?高い魔力を持った者が特権を得るのはこの世界でも同じ明確なルールで権力を維持するための基礎だ、何が楽しくて無能な奴らに戦う術を与えなければならない、何故こんな馬鹿な道楽にのめり込んでいるのだろうか?


「魔法による探知を掻い潜り要所に壊滅的なダメージを与える事が可能なのです、未知の世界でこれらが実戦投入されていたらどうするのです、その対応策も研究しなけらばならない」

卯月殿がもっともらしい理由を並べている


そう言いながらただただ純粋に楽しんで研究している様だ、どこかで見たことがある、そうだアンデットの素晴らしさを語っている時のリッチだ、天才とキ○○イは紙一重だと言うがその通りだろう、今までの計算された力の誇示と違い生温かい目で見る事が出来た


「内緒にしてくれるなら禁じられた玩具も見せてあげる、原料と部品は個別に保管しているのよ」

楽しそうに奥に入って行った、そのあと多くのアルラウネ達が慌ててこの場所にやって来た


「お客様、失礼致しました、私が案内を引き継ぎますので付いて来てください」

穏やかな口調だが有無を言わせない迫力があった


「何かあったのですか?」

歩きながら聞いてみた


「卯月様が禁則事項に触れたために反省房に案内してところです」

背後から戦闘音が聞こえる


次いで強力な魔力を持った何者かの気配を感じ静かになった、先を歩くアルラウネが溜息をもらす、しばらくして静かになった、抵抗虚しく捕まったのだろう、思えば気が合う面白い相手だったのに残念だ、そう思っていたら意外な事にご機嫌な卯月殿と再会した、何か沢山資料を持っいた


「あれを没収される代わりに別の設計図を頂くことが出来ました、しばらく退屈しないで済みます、後のことは先程のアルラウネが引き継ぎますので失礼します」

と実験場に向かっていった


やはりあのリッチと同じだドラゴンの骨を手に入れた時のリッチと同じ目をしている、リッチはドラゴンの骨を持て余していたが彼女はどうだろう、ある程度の難易度の研究材料を与えられているのだろう、しばらくは引き篭もって出てこないだろう、ある意味気前よく私をもてなしてくれてもいたのに残念だ


私の対応を引き継いだアルラウネは真面目で厳格そうだ誰の血で育ったのだろうか、何故か聖女の様な気配を感じさせる、先ほどの訓練の光景を思い出した、彼女の血だろうか?後は大人しくしないといけない様だ卯月殿ほどでは無いが強力だ魔力を感じる上に同格らしい別のアルラウネも複数待機している


「訓練で魔王役をされていた方はどなたですか?」

教えて貰えるかは分からないが聞いてみた


「あれはマチルダ様です、先代の魔王を倒して世界樹の苗を賜ったと聞いていますが、真実は分かりません、良くも悪くもエルフを逸脱していますので、呪いで魔王に身体を奪われたと考える者もいますが、世界樹の僕たちも従えてまして正体が分かりません、私は魔王討伐の際に英霊の魂を降臨させた影響と思っていいます」


「先代の魔王とは?」


「ダークエルフの女性でした、女神様の使徒に敗北し和平を飲ませれていました、その状況を嫌って冒険者として活躍していたマチルダ様が仲間を失いながらに討伐を成功されたという話です」

質問に真摯に答えてくれている様だが、真偽不明な噂を越えるモノでは無かった


色々な可能性があるがこの世界に手出しすべきでは無い理由が増えた事は確実だ、私は手駒を失ったが代わりとなる力は得たし、元に世界に戻れば手駒も補給出来ると考えれば悪くない結果だ、石像にされ解毒された後に食肉に加工されるオークの最後と比べればどれだけ幸運な事か

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