164.再教育
また問題が持ち込まれた、最初に持ち込まれた問題がまだ完全に解決していないと言うのに困ったものだ。最初の問題は淫魔に誑し込まれた勇者とその慰み者にされたかつてのパーティのケアだ
カオリ様が制約で元の仲間の3人の女性に絶対服従を強いられた勇者と彼に恨みと同時にかつて抱いていた思慕の板挟みとなって行き場も正しい方法も迷子になった気持ちを持て余している、今では勇者が3人の共有の下僕として罪滅ぼしをしているがいつ虐待されて命で罪を清算する事になるか分からない
かつての同じ目的を目指していた関係には戻れないとしてもそんな悲劇で終わらせたくはない、そんなところに持ち込まれたのが4体の石像だ
「クロちゃん忙しい所悪いんだけどこの4人も一緒に面倒を見てあげて欲しいの」
「クロエですカオリ様、いきなりこの様なモノを持ち込まれましても困ります、どの様な由来の者達ですか?」
呼び方を訂正して質問をした
面倒なモノに決まっているのだ、重要な役目を任される事は名誉だと思いながらも問題をこれ以上抱えたくはない、リッチに率いられたアンデットを救済する方が遥かに楽だったあれは後腐れが無い、魂を解放すれば良いだけだ力で解決できる、悪い意味で師匠であるカオリ様に似て来た事を自覚する
「アンジュが保護した勇者パーティなんだけど今回弥生様が取引して帰還させる予定の世界から持ち帰って来たのよ」
保護?戦利品の間違いだろう
「待ってください、向こうの世界で石化を解いて安全な所で解放してあげれば良いじゃないですか?」
出来れば拾った場所に返してきて欲しい
「それがアンジュがお邪魔していたリッチの迷宮を攻略しようとして返り討ちになった結果がこれなのよ、他にも世界を取り戻そうと別の勇者達が活動しているけれど戻した所で結果は見えているのよ」
成程言いたい事は分かる
雨に濡れた捨て猫の様に息を引き取とるかアンデットの素材にされるのがおちだ、カオリ様はこの世界んで保護したいのだろう、だがそれを彼らは望むのだろうか?たとえその先に死が待っていようと彼らは戦いたのではないだろうか?
「分かりました、私がお預かりします、ただし、彼らが再び魔王たちに挑むのと言うのであれば私は彼らの望みを叶えてあげたい」
私は正直に自分の考えを伝えた
「ではこの先彼らが戦う事になる弥生様が取引を交わした魔王に会わせてあげましょう、彼女に会ってから彼らの導き方を考えてあげて下さい」
私はその魔王に面会した
彼女はダークエルフの女性で一言で言うと化け物だった、一対一であればカオリ様の方が強いだろうがカオリ様が特別なだけだ、この世界のダークエルフを率いているカミラ殿とは違う凄みが感じられた、将来の事を考えれば生かして返すべきでは無い存在ではないのかと思わずにはいられない
「緊張しなくても良いのよ、この世界に手を出す気は無いわ、人間の中にも貴女の様な者が何人も居るのですからですら、魔王の力を得たのにこの世界の同族の男にすら私は及ばなかったのよ、自分の世界すら持て余しそうなのにそんな自殺行為はしないから安心して頂戴」
魔王の力を得た彼女が私に告げる
彼女の言葉は本当なのだろうか?本当に彼女を越えるダークエルフの男が居ると言うの言うのだろうか?だとすればこの世界もまだまだ広い様だ、この後4人の石化を解いて状況を説明する事になるがどの様に話をしたら良いのだろうか?
「これ以上の抵抗は無意味だ」と告げた所で納得はしないだろう、しばらく石化を解かず先送りにしたいとすら思う、流石に勝利の可能性が消えてしまうまで待てば自殺同然の戦いは避けるだろう、その方が彼らのためかも知れない
それでも選択の機会を奪ってはいけない、その選択が彼らの命を奪うとしてもだ、逆の立場なら石化を解いてくれた感謝以上の絶望を与えてしまう事になる、僅かな希望が彼らを殺す事に成ろうともそれを私が奪う事は許されない
結果として彼らの戦意はとうに奪われていた、私はそれに安堵しつつも虚しさを感じた、彼らは互いの無事を喜びこの世界で生きる事を選んだ、力を磨き再戦に備える事すら放棄していた、石に変えられる前の事は何一つ話してはくれず、ただただ感謝を伝えられた
これで良かったのだと自分に言い聞かせた私が奇跡で蘇った時の事を思い出す、私が再び立ち上がれたのは霊薬の効果だっのだろうか?今回私が石化を解いた祈りの力が不足していはいなかっただろうか?私が彼らの死を避けたいという思いが彼らの心を完全には癒す事を妨げてはいなかったと言えるだろうか?その問いに応えてくれる者は居ない
この先今の和平が崩れたとすれば今の様に仲間を癒す事が増えるだろう、その時に迷う様な事は出来ない傷を癒し再び死地に送り返すのが私の役目になるだろう10年近い平和が私の覚悟は緩んでいたのだろう、カオリ様が私に彼らを任せた意味に気が付いた今度も和平が延長されると決めつけていたのではないか?
冷静に考えるのであれば、恐らく和平は維持されるだろう、だがその予想が希望的観測に流されたモノであってはならない、最悪の事態に備えるべきなのだ、いま面会した魔王がこの世界の魔王軍と手を結んで我々を襲うかもしれない、弥生様が噛んでいるのだ
油断させた上でこの世界に踏み込んだ奴らを皆殺しにする事を選択するかも知れない、今の面会は倒すために敵の力を知っておけいう事かも知れないのだ、5年前にイザベル達が手痛い目にあっている、想定しなければいけないこの神殿の戦力であのダークエルフを打ち取るとすればどうすれば良いのかを
緩んでいた心が引き締まるのを感じる、ルイーズとオスカーを誘って実戦訓練をしよう、相手をしてくれる異世界の勇者達も居るのだ恩返し代わりに付き合って貰う事にしよう、彼らに復讐戦の機会を与えてあげる事になるかもしれない、私が支援すれば勝算もあるだろう、単純な魔力は増しているが5年の間に鈍った勘は錆と同じだ磨き直そう




