161.手合わせ
「ダフネお姉さんは魔王になって向こうの世界を支配するのでち?なら良い物が有るでち、女だと舐めれるでち、このポーションで性転換出来るので使うか使わないかは任せるけど持って行くでち」
アンジュが私にポーションを渡してくれた
「ツクモ様もこのポーションで男になったのでち、ツクモ様はこの世界に転生する前に男だった記憶があるから戻ったと言った方が正しいしれないでち」
アンジュのこの言葉は衝撃だった
ツクモ様に幻滅した訳では無い、それは今まで男としてに女に手を出していないという事を意味している、私にもチャンスが有るかも知れない
「アンジュさん重ねてお願いがあります、族長として部族を率いる心構えを聞きたいのですがツクモ様と引き合わせては頂けないでしょうか?」
今度はしっかりと名前も指定した
はっきり言わないと今の族長であるカミラ殿の前に案内されてしまうかもしれない、彼女が無能と言う気は無いが私がこれから目指す道とは違う目的を目指していいる方だ、部下の手前ツクモ様に合う正当な理由も必要なため目的も伝えた
「ダークエルフの族長としての在り方を知りたいとな?」
さてどう答えたモノか
この世界に食指を伸ばした魔王に仕えこの世界の女神の使徒の手で魔王の力を与えられた女族長から問われた、某は確かに一時はダークエルフを支配して魔王に仕えた、だがその役目を全うしてはいない、仕えた魔王が暗黒神の力を手にするまでの間部族を利用しただけだ、その後は次の族長も定めずに出奔している
「某は自分の力を磨くために部族を利用したに過ぎない、道具でしかなかった、多少は愛着があった故に庭木の様に手入れをして剪定もした、不要となりその道具を手放した後は道具が自分であるべき姿に戻ろうと枝を伸ばして自然の森に帰っただけだ」
初めに某が族長として目指すべき存在では無いと告げた
それでも手ぶらで返す事は恥を忍んで教えを受けようとした現役の族長に非礼となるだろう
「其方は呪いを練り上げ使いこなすのであろう、アンジュ、狂化や魅了の呪いも収集していたなそれを含めてダフネ殿に伝授してやれ」
「戦いでは勝利のために犠牲は付き物だ、どうしても部下を失う時が訪れる、それならばその死は無駄死にであってはいけない、効率的に命を消費しなければならぬ、それがたとえ自分自身の命であろうとな」
些かダークエルフの有り様とは相容れない思想だ
族長に絶対の忠誠など望むことなど愚かな事だ、力を示し欲を叶える事が族長の求められる事だ、だがダフネ殿には魔王の力が有る、某が参考にしたのは忍びの組織だ、厳しい掟を呪いで形成できる、実際ダフネ殿が部下に施し某が切った呪いは優れたものだった
アンジュがその呪いの断片を回収して再現し進化させている、趣味の良いモノでは無いが有効だ魔人の魔王の持っていた力と合わさせば強固な掟として作用する、某がかつて仕えた魔王の力をスキルで再現して使用した経験から魔人の力の有効性も知っている、恐らくダフネ殿も似たような力を得ていよう
ならばその力を使いこなすために必要な事は実戦を越えるモノは無かろう
「アンジュ、好きに暴れられる場所を用意してくれるか」
呪いの伝授も終わるのを待ち声をかける
「良い場所があるでち」
アンジュはそう言うと迷宮の入り口に向かうので某とダフネ殿が続く、階段を下りていくと白い小石が敷き詰められた空間に出た
「師匠を真似て庭を造りかけている階層でち、石を配置する前なので好きに暴れても問題無いでち」
確かに何もない
大方某が語った事のある枯山水を目指しているのだろうが広すぎる、何を目指しているのだろうか、だが敷き詰められた小石の足場は御前試合の様な趣と言えなくもない
「良きかな、ダフネどの気に入れた魔王の力を見せてくれ遠慮は無用だ」
その言葉に頷くとダフネ殿が無詠唱で魔法をつかった牽制で勝負が始まった
その魔法を相棒の刀で切り裂き魔力を吸収する、その魔力で周囲に障壁を築く、連射させる魔法をそれで弾きながら障壁を分割して隙間を通すように魔法を切り裂いて障壁を維持する魔力を吸収していく、効果が無いと判断した様で魔法陣を展開して詠唱を始めた
吸収の追い付かない強力な魔法で圧倒する気なのだろう、だが足が止まっている、スキルで分身を創造しこちらも足を止めて魔法を封じるための術式を展開させる、その上で本体魔力を押さえ隠形術で姿を隠して回り込む背後を取り勝利宣言をするが返事が無い、気が付くと分身の首に短剣が付きつけられていた
「ほう、面白い考える事が同じとはな」
スキルで創造した分身を解除して目の前の幻影を切り消失させた
魔法では勝負は付かないようじゃ後は刀で相手をするか、ダフネ殿も短剣を抜いている、そんな某の思いを踏みにじる邪魔者が現われた、敷き詰められた小石が魔力を帯びて集まり人の形を形成した、2人が使用した魔法の魔力を吸収したようだ
3メートルほどの高さの人型が4体恐らく防衛用に小石の中に隠されていたのだろう、某には構わずダフネ殿を取り囲むように移動している
「アンジュ、これはなんだ?邪魔だ、機能を停止するか脇にどかせろ!」
ダフネ殿を庇える位置に移動しながら叫ぶ
「待って欲しいでち、あたちは何もしていないでち、この庭の下準備は如月に任せていたのでち」
要領を得ない返事が返ってきた
仕方が無いのでダフネ殿と共にゴーレムの一種であろう人型を破壊すべく迎え撃つが魔法は吸収されてしまう、刀では効果が薄いため小石に施されたルーンだけを対象として切っていくが刃が通った部分の小石が崩れ落ちるだけで戦闘力は低下しない
その上攻撃したからだろう某も敵と認識して攻撃を始めた、周囲に別の人型が形成されていくのが見える、如月の作成したモノの様で出来上がりの素晴らしさ評価したい気持ちもあるが、いまは純粋に脅威として排除しなくてはいけない
「取り合えず避難させるでち」
アンジュがクジラのアンデットを呼び出して2人を呑み込むことで安全を確保してくれた
クジラの胃の中とは思えない場所にダフネ殿と二人きりになった、見事な蓮の花が咲いた池に中に大きな漆塗りの屋形船が浮んでいた、静かな場所だが戦闘で高ぶった心が行き場を失い持て余してしまう、それはダフネ殿も同じだが仕切り直して戦うには狭すぎた
「如月を呼んでくるのでしばらくそこで待っていて欲しいでち」
アンジュの声が魔法で届く
仕方がない二人で先の戦いを振り返り分析でもするとしよう
「ツクモ様」
ダフネ殿が声をかけて来た
向こうも戦闘の後で興奮しているのだろう顔がうっすらと赤くなっている




