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150.計画

千秋と弥生がテーブルの上に駒を並べて真剣な顔で向かい合っている、側でカーリアが少し詰まらなそうな顔で眺めていた


世界の情勢を反映した盤面を弥生のスキルで再現して「法王国と魔王軍との間に戦いが起きた場合を想定して対応策を確認する」と言う名目でボードゲームを楽しんでいる、有用だとは思いうが、そうならないために全力を尽くして欲しいとも感じる、とは言え最悪の事態に備えると言う意味では疎かには出来ない


「千秋、このシグネと言う魔人の血を引いた人間はどちらに付くと思う?」

弥生が聞き捨てならない名前を言っている


私が勇者と仲を取り持って勇者の故郷に送り出した魔王の名だ、私は2人の相撃ちを偽装した、その嘘は私が女神になる階段を昇る過程で使徒に迎えられた際に神殿が私の功績として公表したため奇跡の一つとして語られている


この奇跡は評価が分かれており、魔王憎しの強硬派からは消し去りたい不祥事と見做されてもいるが、現状の魔王軍との和平が成立している状況から、最近は穏健派が主導して説法で取り上げられる事が多い、尾びれや背びれが付いており、完全な美談に変わっているが真実は少し違う


スキルで感情を捻じ曲げ勇者と魔王を番にして島流しにした、「どうにかな~れ」と不発弾を信管が付いたまま異世界に投棄したとも言える、その魔王の名を持つ女が千秋と弥生が駒として扱うくらいの力を保有してこの世界に現れた


緊急事態だ、あの勇者は異世界で何をしていたのだ?幸せに暮らせるように向こうでも価値のある宝石や金貨も持たせて送り出した筈なのに、いや落ち着け、人間の寿命と魔人の寿命は違う、勇者が先立つのは当たり前の事だ、魔王だけが異世界で生き残りこの世界に帰還したのだろう


人間の血が濃くなっているという事は向こうで自分自身の身体を産むことで現地に溶け込んだのだろう、それが何故今更この世界に帰還したのだろうか?今も恨みを持っていても私に直接危害を加える事は出来ない、問題無い全て順調だ、弥生に女神を継いで貰うための引き継ぎは完了している


そもそも逃げ出すような事態ではない、現世にはイライザやカオリもいる、手元には頼りになる使徒が控えているのだ、何も恐れる事など無いのだ、弥生に嗾けられた犬共と比べれば幾重の防壁が守ってくれている、戦力的にも距離的にも安全だ取り乱すな女神の威厳を守らなくては駄目だ


目の前のボードゲームも半年後に弥生が降臨して女神を継ぐ前の最後の仕上げをするための準備だ、先代の女神から私への引き継ぎがいい加減だったために苦労した、その轍は踏むまい私の目線での情報を偽りなく伝えなければならない、威厳よりも使徒の怒りを防ぐことが肝要だ


「私達の故郷はゴミ捨て場じゃないのですが」

弥生が私を責める


返す言葉が無い、自分が聖女時代に蒔いた種だ甘んじて非難を受けよう


「この盤面は20日程前の状態でしたよね、最新の情報を確認してはいかかですか?」

見物していたからだろう、カーリアが落ち着いて冷静な意見を出してくれた


「試合の途中だが仕方がない、情報を更新しよう」

千秋が言う


「私の方が優勢だったが仕方ない、私の判定勝ちで良いな」

弥生がスキルを発動して盤面が少し変わり駒の配置が換わる


千秋は不満げな顔だが文句は言わないそれが結果を証明していいた、魔王城にいたシグネの駒がイライザと香織の屋敷に移動して新たな駒が増えていた


「へ~、乾拓真と言うのか元勇者みたいだね、シグネは元魔王だ女神様の言う通り恋仲の様だ」

駒を持ち千秋が感想を語る


「おや、カップルで千夜に恩義を感じている様だね、まだ2歳にもなっていないだろ、フレデリックとポールもいる、あれフレデリックって男だったよな?」


「ああ、男だった、過去の話しだ今はフレデリカだアンジュがポーションで性転換してポールとくっつけた、迷惑なキューピットだ香織がお灸をすえていたよ、アンジュに効果は無かったみたいだが」

千秋の疑問に弥生が答える


「千夜も駒になっているのね、あの2人の娘なだけは有る様ね、セーラが手配したのかしら?結構戦力を配してる、暗殺者や間者もいるわ」


「審問官では無くて暗殺者に間者がいるの?所属は?」

今度は千秋が駒から読み取った情報をきいて弥生が疑問を投げかけた


「千夜の支配下にあるみたいよ千夜の駒から読み取った情報だからそうなんでしょ、駒になるだけの力がある、セーラも大変だわ、一緒に魔王討伐をした仲間だから良くわかるの、あの娘真面目だから」


「魅了か洗脳か?何にしても人心掌握のスキルでしょうね、元勇者や元魔王にも影響を及ぼしているわ化け物よ、うまく導けば将来は最高司祭を継いでくれそうだけど、今の副司祭様の胃は大丈夫かしら?」


「セーラなら神聖魔法で自分を癒しながらでも責任を果たすわよ、エナドリ決めて徹夜する社畜みたいだけどね、厳しそうならユリアンも手伝うでしょ2人なら大丈夫よ」

千秋が勇者時代の仲間をそう評価した


どうやら私を恨んで戻って来たかは別にして問題は起きない様だ、千夜というイライザと香織の娘が真っ当な道を歩む限りは安心できる、後は女神を継ぐ弥生がうまくやってくれるだろう


「千秋、今度は打ち合われ通りに2人で楽しもう、私が魔王側で良いな?」


「それで良いよ、1週間で討伐出来れば私の勝ちだったよね、魔王は魔王城から逃げるのは無しで良かったわね?」

2人で最新の情報でゲームをやり直す様だ


心配したシグネの件は取り越し苦労だった様だ、仕事もないし今日も二度寝しよう、私は2人の会話の違和感を聞き逃して2人の暴走を未然に防ぐ機会を逃した、それに私が気が付いたのは弥生を現世に降臨させた後だった

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