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148.選任

放置できない報告が上がって来ている、イライザ様とカオリ様の間の娘の千夜様の事だ、2人の間に子供が生まれる事は性転換のポーションの存在を含めて理屈は分かる事だ、長男と同じ様に女神様の起こした奇跡という事で信者たちは理解し祝福しているので今更問題にならないが彼女の知性と力が異常に過ぎる


何処の馬鹿が送り込んだか不明だが刺客と思われる人間を洗脳して兄や姉と呼んで側に置いている、邪悪な考えの者を改心させる奇跡だとも考えられるのだが、親の持つスキルを考慮すると安易にそう判断して安心してはいられない、見定めなければならない、めでたく奇跡と認められたとしてもそれはそれで放置する訳にはいかない


私自ら出向いて千夜様の素養を見定めた、不思議な感覚だった、私が千夜様の力を判断しに訪れた筈なのに私が試されている様な気がした、恐らく善意も悪意も反射して自分の好ましい存在へと誘導するスキルが発動しているのだろう、見定めようと訪問した私もまた見定められていた、覗いてはならない深淵であると同時に到達すべき至高の高みでもあった


イライザ様とカオリ様の許可を取って神殿にお迎えしたい人間だ、手元から放したくはないと言われるのであれば千夜様のための神殿という体裁を整えて人員を派遣する対応が必須だ、2人の反応を推測すれば最初から神殿の体裁を整える方向で動いた方が良いだろうと判断し動くことにした、この判断も本人のスキルで誘導されているのだろうが妥当と言える判断であろう


「セーラ様、半分引退した私に何の御用でしょうか?」

武術の指導役に付いているガンダルフ殿の元を訪れた


「ガンダルフ殿、貴方の弟子をお借りしたい」

私が千夜様の神殿に派遣する人員の要として白羽の矢を立てたのはフレデリカとポールの2人だ


実力もあり女神様の奇跡で蘇った者達だ、魔王と因縁があり暴走する事が有ったが今はガンダルフ殿が鍛えあげ2人が結ばれた事もあり精神的にも安定していると聞いている、2人の間に娘がいる事も選定理由の一つだ千代様と良好な関係を構築出来るだろう


2人を中心として人員を選定し、イライザ様とカオリ様の信頼されており、最近実力を付けているうえに千代様と良好な関係を構築しているカチュアを神殿を預かる司祭に指名した、私が現地にいるカチュア以外の人員を伴い千代様の元に赴くとカオリ様がアンジュというアルラウネを連れていた



彼女がスキルで神殿を建立すると言うのだ、信じられないが目の前でその力を見せ付けられた、「迷宮作成」スキルから派生して「神殿建立」と言うスキルを発露させたのだと言うこれはカオリ様の血で育ったアルラウネだからであろう、その神殿は司祭となるカチュアに管理権限が付与されている


「可愛らしいでち、あたちが一肌脱いだ甲斐が有るでち」

とアンジュがフレデリカとポールの娘を見て誇らしげにしている


フレデリカとポールを含めて殆どの者は「一肌脱いだ」の言葉を神殿の事だと思っている、私もそう思ったがその時カオリ様が変な顔をしていた、あの顔は何か後ろめたい事が有る時の顔だ何度かカオリ様を説教した私だからこそ気付けた一瞬だけの微かな変化だ


心当たりがあった、ヤヨイ様とユリアン殿が女神様の奇跡と結論を出したフレデリカの女性化の事だ、知りたくない事ですらあったし今更非難する事も出来ない、勿論公表する訳にもいかない不都合な真実だ、何度か味わった頭痛に襲われたカオリ様もその真実に気が付ているのだろう


先ほどのカオリ様の表情から誇らしさではなく苦々しさを感じた理由はあの件がアルラウネの独断だった事が推測される、当時フレデリカとポールはイザベルの事もあり魔王カトレアを強く恨んでいた、私個人にとっても苦々しい想い出だ、イザベルを含めて私怨を宥めるために安易な方法で誤魔化すような約束をしてしまった


真摯に彼女達に向きあい正しい道へと導くべきだだったのにとの反省の思いと同時に彼女達に危険な魔道具を授けたカオリ様に対する怒りも蘇る、駄目だ私が私情に流されてはいけない、結果だけを見れば平和的な解決に至っている


今考えなければいけないのはアンジュと言うアルラウネが敵に回る事にならない様にする事であろう、一つ間違えれば魔王になってもおかしくない力を持っている、性格はカオリ様に近いだろう、良かれと思って暴走するタイプだ、カオリ様と良好な関係を維持する事が肝要だろう、同時にもしものために備えなくてはいけない、ユリアンに指示して防諜の為のゴーレムの運用を可能な限り強化させよう


最近はカオリ様も「法王国」の歴史や慣行に明るくなってきている、カチュアに千夜様と一緒に更なる学びを提供して貰えば良好な関係を維持する一助となるだろう、子供らしからぬ知性もあり若い娘の千夜様の方が理解が早いかもしれないが娘の手前カオリ様にも良い影響が期待出来るだろう





実質的な謹慎を経て長い再訓練でもあるガンダルフ様の元での修行から解放された、師として尊敬できる御仁ではあるのだが自分達のやらかした事に対する引け目もありどこかに居心地の悪さは消えなかった、新たな使命を受けて師と兄弟子たちに送迎の宴を開いて頂き思いのたけを吐き出す事が出来た


まだまだ現役ではあるが師の年を考えると最後の別れとなるかも知れない、その別れを晴れ晴れとした気持ちで迎える事が出来てよかった、私とフレデリカとの愛の結晶である娘にミネアと言う名前を与えてくださったのはガンダルフ様だ、師の自慢の弟子の名を頂いた、その弟子の活躍でイザベルや私達が蘇る事が出来たのだ


女神様の奇跡でその自慢の弟子と魂を交換してこの世界に導かれたのがカオリ様だ、今回の使命はカオリ様とイライザ様の間に生まれた娘のための神殿を守る事だ、親から素晴らしい力を受けついで将来が期待されている、その娘の千夜様に近い年齢の娘がいる事も私達が選ばれた理由の一つと聞いている


私達の娘も才能を引き継いでいてくれるだろうがまだ二歳の赤ん坊でしかない、一緒に遊ぶまでには時間が掛かるだろうがまずは一緒に生活していく事になる、千夜様は少々お転婆だとは聞いているが基本的に穏やかな性格の様だ、専門で子供の世話を手伝ってくれる者も選ばれているしフレデリカも喜んでいる


実際に会ってみて驚く事だらけだったが優しく私達を迎えてくれた、審問官として鍛えた緊張感が緩まないかと気がかりなくらい穏やかな場所だったが、稀に好ましくない者もあらわれるその時は千夜様のスキルで会心して千夜様の家族になるのだと聞いている


千夜様の将来が期待される理由を理解するとともにセーラ様が言っていた懸念も理解出来た、強すぎる力はその持ち主の道を誤らせる事がある、私達の娘には彼女に友人として接することの出来る者が必要だから共に暮らす事になる


千夜様なら女帝としてでも名君になり得るのかも知れないがそれは1人の人間としては必ずしも幸せな人生とは言えない、彼女の選択であるのならそれも有りだろうが環境がその道しか選べない様になってはいけないだろう選択肢を用意すべきなのだ


彼女が自分自身の意思で世界を望んだ時には私も剣を捧げているかもしれない、確かにそれだけの魅力が千夜様にはある、その魅力が世界の平和のためなる様に私達はここに来たのだろう、イザベルは事もあろうか魔王にその可能性を見出した、私情を排除すれば理屈としては分かるが納得する事は出来ないままだこれは私の修行不足なのだろうか?

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