147.特別
私は真の魔王と出会った、それは最高の巫女も既に手中に収めていた、私以外その事に気付いてはいない、巫女の力に気付いている者はいたが、その表面しか見てはいない、私もそんな無知な愚か者のひとりだった、いや逆かも知れない魔王が最高のスキルを覚醒させた言うべきであろうか
私がこの世界に戻って世界の実力者の情報を集めた、権力には執着は無い様だったが勇者と聖女と崇められている2人が最強だろうと見定め、その二人の弱点を探った結果私はそれに支配された、利用しようと近づき利用される存在に堕ちた、そしてその末路に満足さえしているしている、それを恐れる心さえ塗り替えられてしまうだろう
「お姉さん、愛している人が居るのでしょう?」
私の望みは叶えられた
大切に執着し未練がましく縛っていた魂に私の望む器を与えてくれた
「シグネ、君なのか?随分と可愛らしくなって」
そう微笑みながら抱きしめる私の勇者の前で私に残っていた野心は消えていた
私は理解した忠誠心では無く家族としてそれを認識していた「ファミリー」という自我をもったスキルとそのスキルを発露させた千夜と言う少女を守っていけば私の愛しい拓真は永遠に私の恋人であり夫として私を愛してくれるのだと
呪いであり祝福でも有るのだろう、千夜に殺意を抱いて近づいたものは魂を奪われ彼女の兄や姉に作り替えられていた、私は利用しようと近づいただけなのでそのような最後を迎えずに済んだ、最高の結末と言っても良いだろうが、果たしてこれは私と言えるのだろうか?その様な疑問すらやがて消えていくのだろう
幸せと言う首輪に繋がれてこの魔王に飼われる事になる、私以外にもそうして魔王の家族になっている者達がいる彼らは幸せそうだそして、幸せななまま魔王のために生きて死ぬのだろう
「千夜、まだシグネさんに遊んで貰っているの?お勉強の時間よ」
ママが呼んでいる
「お姉ちゃんまた、遊んでね」
ママから精霊魔法を習う時間だ、2人のママとママの血で育ったアルラウネ達は特別だ私が無理に「お願い」しなくても私を愛してくれる、思いのままにならない事もあるがそれが良い、対等以上に付き合えるのはママたち以外はカムイ兄さんだけだ
私や私の家族に悪意をもって近付く者は私のスキルで悪意を反転してしまえば新しい家族になってくれる、そういえばもう一人玩具がいるヒルダちゃんだ、私を手に入れようとしているみたいだ、まだ諦めない、スキルで家族にするのは簡単だけど友達も欲しいのだ
他にも従弟がいるらしいのだが叔母様が私を警戒しているみたいでまだ会っていない叔母様に仕えるアルラウネ達から話を聞いている会うのが楽しみだ、叔母様には私に対する悪意が無いため私のスキルの対象には出来ない、世界樹の加護もあり「ファミリー」も手を出せずまた出す気も無い様だ、だから対等な親戚付き合いをしている
そうだ、まだ頼もしい家族がいる早太郎と言うフェンリルだ彼とママの従魔でもあるスーザンという人狼の産んだ三姉妹がカムイ兄さんに侍っている、お互いに恋愛対象とは思っていない様だ姉弟の様な関係で兄が懐いていて遊んで貰っている、そもそも兄はまだ子供だ
遊びと言うには危険なじゃれ合いだ、三姉妹が精霊魔法で傷を癒せるのでいつも大怪我をしているが周囲も慣れてしまい好きにさせている、私も巻き込まれそうになるが咲夜と言うアルラウネが止めてくれる、2人のママの血で育ったアルラウネだ分身して身の回りの世話をしてくれる
最近仕事に余裕が出来てきたが、まだまだ見ていて恐ろしさを感じる時が有る、イライザ様とカオリ様の長男のカムイ様は力が強く普通かと言えば逸脱しているが子供らしい所がある、あまりに異質なのは妹の千夜様だ精霊魔法で空気を振動させて会話が出来る、そしてその受け答えは大人のそれだ
最近になって千夜様に従う者が次々と増えている
「カチュア様、何か手伝う事は有りますか?」
千夜様のために出来る事を求め、それ以外の仕事も手伝ってくれる、それぞれが特殊技能を持っている何故この様に献身的に仕えられるのか分からないが、最初は打算的な目的やもっと後ろ暗い目的で近づいて来た者もこの様に変化する
近々ではシグネ様だ、とんでもない魔力を持ている方で、千夜様の守護者の役目を担っている気が付けば彼氏のタクマ様も合流して2人で幸せそうに役目を果されている、イライザ様は何か諦めた様に2人を含めて彼らの存在を認めている
本当は自分の役目を奪われたという寂しさと、香織様との2人の時間を持てる喜びを天秤にかけているのだろう今ではシグネ様とタクマ様に子供の事を任せておられる、私の役目はカムイ様と千夜様に「法王国」の歴史や女神様の起こされた奇跡、歴代の勇者や聖女、そして使徒様の活躍を物語として語る事だけになっている
その中に聖女の仲裁によってお互いを認め愛を育んだ魔王と勇者の物語がある、その魔王と勇者の名が魔王シグネと勇者タクマだ、魔王は女性の魔人として語られているが千夜様が姉と慕うシグネ様は魔力こそ高いが人間だ
シグネと言う名は立場を超えて愛を貫き、正しい道を歩んだ者の名として伝わっているため庶民の間では娘の名につける事があると聞いた事がある、逆に貴族から見れば使用人と駆け落ち等身分違いの愛に走る事を連想する様で避けらてれる
勇者の名は地位に関わらず名付けられる事がある、お互いの名を2人が意識したのかも知れない、名前の由来通りにお互いを愛し合う関係になった事は素晴らしい
成人並みの知性がある千夜様は、神官として修行し聖女に選ばれたイライザ様はともかく、異世界から招かれこの世界の事に疎い香織様以上に「法王国」の歴史や女神様の教えを理解されている、異常な人心掌握能力も考えれば神官、司祭、と順に階段を上り最終的に「法王国」を導く存在になるのではと期待している
私がそう考える様になってから伸び悩んていた私の神聖魔法の力が強くなっている事を実感しだした、他の千夜様に仕える人たちほど狂信的ではないし成長も穏やかではあるが確かにそれを感じた、私は自分の出来る事を最適な距離感をもってお仕えしよう
千夜様は「カチュアは私の大事な先生だよ」と言って下さる、周囲の者をお兄ちゃん、お姉ちゃんと呼ばれているが彼ら以上に特別な関係だと誇れるのが不思議だ、それを心地よく感じている私がいるのだ




