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142.挨拶

上手く紛争が解決して、被害も最小限に収めた、これでセーラ様から小言を言われずに済みそうだ、この紛争を通して良き出会いもあった、話を聞いてみると江戸時代初期の武士だったという、アンジュがおにぎりのお礼に刀を送られた事を縁に親しくなる事が出来た


最初の接触は九十九殿が私がオロス国に貸与した氷の城をねらって隕石を落とし、私がスキルで玄武を具現化して回避した事だ、その返礼にヒルダ姉さんが落雷をお見舞いした、幸いな事に彼女が大事にしていた庭は無事だった、宮殿の方はそれほど思い入れは無いと言う話だ


宮殿は元々リッチの方のケイシャ殿から譲られたモノで無駄に広いため持て余していたのだという、オロス国の行く末を見守りたいと言うケイシャ殿に宮殿を返して魔王軍の支配領域に引っ越す事になっている、お気に入りの庭はアンジュが迷宮として取り込み移設する事になっている





「素晴らしい、この迷宮を我に譲ってくれると言うのか?何を企んでいるのだケイシャ殿」

予想外の提案に驚きながらこのリッチの行動の裏を探る


「カオリ殿から例の氷の城を譲られましたのでわたくしでは管理能力を超えてしまい両方を維持する事が出来なのです、今後はオロス国の後ろ盾として活動するつもりです、立地的にもあの迷宮は不便です、その点サンゴ殿ならば海中の方が何かと使いやすいでしょう」

ケイシャの言っている事は分かるが疑問が残る


「それならば迷宮を移転すれば良いではないか?アンジュもやった事が有ると言っていたが?」

純粋な疑問だったがケイシャ殿にとっては信じられない事だった様だ


「アンジュ殿と比べられても困ります、彼女は異常です、そもそもカオリ様といい何故ヨルムンガンドの毒に触れて平気なのですか?」


「聞けば、クジラの腹の中と氷の城の居住部分だけでは無く魔王軍の支配領域にも迷宮を構えているそうではないですか?」

ケイシャ殿の言葉から困惑すら感じる


アンジュはそれ以外に島の神殿や、岩塩鉱山に神殿を創造し維持している、どうやらこれは「迷宮作成」とは別に「神殿建立」と言う別のスキルを獲得した成果の様だがこれ以上力の誇示は不要だろう、私は初めてこの世界で戦った相手があれだったお陰で最初はあのレベルが標準だと誤解していた


ケイシャ殿でも十分この世界の上澄みだ、暗黒神に見込まれた訳でないのに曲がりなりにも人間時代の身体を維持している事は奇跡的な事だ、この後も研究して力を付けていく事だろう、不完全な救済に終わり2人で永遠の船旅を続けるリディア嬢を探して弟子にするとも言っていた、その上で新天地に導くと言う


他者に師として指導する事は自らの力や技を磨く事に繋がる、ツクモというダークエルフもいる様だしオロス国が同盟を支配するだろうと思ったが、どうやらツクモ殿はアンジュの迷宮に引っ越す様だ空き家となる宮殿はケイシャ殿が使用する事になってらしい、それでも同盟を制圧するために必要な時間が多少長くなるだけだろう


スセリも例の島に残る様だし、我も気が向けば手助けしてやれる、最大の障害と言うか懸念事項はカオリ様が同盟での独断専行を「法王国」の上層部に気付かれない様に立ち回る事が出来るかという点だ、うっかり言う必要のない事まで喋ってしまいかねない、「法王国」にとって手遅れになるまでだけでも我慢して欲しいものだが、こればかりは我が手出しする事は出来ない


取り合えず組織は別にして個人で力のあるアンジュの言葉で言う「二流吸血鬼」とは繋ぎをとって共闘関係を構築したい、世俗に興味が無い様だが、あちらの立場から見ればオロス国が拡張路線に舵を切るのは目障りな行動と映るだろう、海を見るために一度会って挨拶はしているが今の状況はその時とは違う、早い段階で改めて挨拶しておくべきだろう





「頭が痛い、私に仕えてくれている者から隣国の様子が報告された、私個人の目線ならなんとも思わない、「同盟」全体が多少魔王軍に良いようにされたところで、恋人である、いやもう夫であるシグルドもさして気にすることは無かった、事実「勝手に自分の名を旗印に使っているだけ」と気にしていなかった


だが私がこの情報を聞いた時点では2国が小島の領有権をめぐる小競り合いから発展した戦争の結果王族同士が婚姻関係を結んで戦力を削らない形でひとつになってしまったと言うのだ、当然「同盟」内のバランスは崩れるだろう


もしこの国が領土的野心を外に向けるなら私の屋敷の在る国がターゲットとなりえる、実際争いの元となつた島にはこの国の王も興味を持っいたようだ、私と違い正確な情報を把握できない愚か者はこの2国の合併を好ましく思わない上に、それに到る衝突で軍が消耗したと思い込んでいる


漁夫の利を狙い軍の動員を図っているようだ、魔法により存在を隠蔽している私の屋敷も何かの拍子に巻き込まれ存在が明るみになりかねない、情報を収集しつつこの国の動きを見てると海軍の先遣隊の30隻の軍船の内半数が1人の魔獣使いに沈めれられた、全滅させる事も容易であっただろう


船の上空を海鳥が群がったと思えば海面近くの小魚を狙うかの様に急下降した、その海鳥たちは船の甲板を目指していた、船に海鳥が衝突した程度で何も起こる訳がない最初の船が沈むまで皆がそう思っていた使い魔越しに見ていた私もそうだった


だが船に衝突する寸前に海鳥が石に変化していた、外部から石化したのか海鳥がそのような力を有しているのは使い魔越しには判断できないが船を貫通して海まで潜った後再び無傷で海面に浮かび上がりまた空に舞い上がって次の船を襲った


危険性に気付いて矢や魔法を放つが一羽すら仕留められないまま15隻が浸水して海に沈んでいった、残る半数の船は戦友を海から救出して撤退するしか選択肢は無かった、港に引き揚げるまで襲撃はされなかったが一定の距離を保って海鳥が追尾していた、その後大鷲に乗った女が港の上空を旋回した後その海鳥達を引き連れてオロス国の方向に凱旋して行った


そして今去年の冬の初めに訪れたサンゴ殿が神官服を身にまとった女性を連れて訪れた「法王国」で私を塩変えて消滅間際に追い込んだ神官と同じ匂いがする雰囲気も力も別の系統だが目の前にいる女には、容赦と言いば良いだろうか優しさが感じられない、冷徹に必要な事をやり遂げる徴税官の様な冷たさを感じた


何故同じ匂いがするのかは挨拶のあと話をして理解出来た同じ師匠が鍛えていたからだ、2人で彼女を鍛えた師匠の内1人は私も縁が有る人物だがこんな人間性の一部を研磨して削り取るような修行をするのだろうか?実力は確かだが人の好い少し抜けた所があったと記憶している


ならば契約を結んでいるというサンゴ殿の影響だろうか?正体を知りたいが知らない方が良いと、居るはずの無いもう一人の自分が警告するのだ


「ご迷惑をかける様な事にはしないつもりです、庭先で多少騒音をたてるかも知れませんがご容赦下さい」

土産も貰い丁寧に挨拶を受けたが素直に喜ぶ事は出来なかった


勿論この話を拒否する事など論外だ、余裕を見せながら承諾する以外に選択肢は無かった、一枚噛んで自分の利益を確保したそうなシグルドを話し合いの席から追い出して早々に話を纏めて引き上げて貰った


これは断じてシグルドが私以外の力をもった女性と関わらせたくは無いと言う嫉妬心では無い、皆無だと言えば嘘になるが男女関係なく関わってはいけない存在だと確信したからだ

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