↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
141/188

141.ツクモ

果し合いが中断したまま依頼人の希望とオロス国の思惑が両立する着地点をすり合わせて合意に至った、某にも利益はあった、握り飯の対価に刀を残した相手の主人から謝罪を受けお礼を頂いた


「うちのアンジュが物の価値が理解出来なかった様で失礼な事を致しました」

丁寧に頭を下がられ、刀も返って来た


その刀はいい意味でも悪い意味でも変わり果てた姿になっていた、異常に魔法が付与されており、素材も変質していた、某がこの世界で共に歩んだ記憶を引き継いで意思も持つようになっていた、食い物と引きかえに他人に譲られた事を不快に思っている様でどこか病んでいる様に感じた


鞘も魔法を増幅する杖としての役割が与えられ仕込み杖の様に気を付けなければ刀であるとは分からない、この世界で反りの有る武器は主流では無いため初見では気付かれないだろう


確かに有用だ魔力と気の乗りも素晴らしい、某の魔力と気を吸収して更に成長しようとしている、苗木を植え飛び越えそれの成長に合わせて跳躍力を鍛える忍びの鍛錬を思わせる、自らの成長に付いてこれなければこの刀は何を仕出かすのであろうか?


その恐怖を感じながら久々に鍛錬をしている、お詫びにと贈られた米俵もアイテムボックスに入れたまま米を炊く余裕も無い、刀の機嫌が直るまで折角の御馳走にもありつけないだろう、修行を怠り食欲にまければまた刀の機嫌がわるくなってしまうだろう有難迷惑とすら思える


今も琥珀の中で眠っていた体が悲鳴をあげている、まだ某は強くなれると言う喜びもあるが共に成長する刀に付いて行かなけらばいけないという心理的な負荷もまた重く圧し掛かる


辺境伯家を支援してクローシス国を掌握させるために、某を含めて暗躍する事になっているが、すぐに「暗躍」と言う言葉の意味を問い詰めたい事態を目撃する事になる、某が辺境伯家の跡取りの娘に付き添いオロス国の氷の城を訪れた時にそれを見せ付けられた


事前に筋書きは知っている、真面目にクローシス国を憂いて国を背負う決断をしたケイシャ嬢を事前に書き上げられた台本に沿って予定の結果に導くのが某の役目だ、半分以上が即興だが上手く役を演じきれただろう


城がゴーレムに変わり更地になるのを唖然として見つめていた演技する必要などなかった、卯月という魔術師がやり遂げた事だ前世の石垣で築かれた城郭とは違う思想と技術で全てが石で築かれた王城が無惨に解体されていく、落城とはまた違う悲哀を感じた


何代にもわたって引き継がれてきた歴史が魔法一つで瓦解する様はただただ虚しかった、武器をとって抗う事すら出来ない、討ち死にする機会すら与えられない、野犬を追い払うかのように騎士や戦士を足蹴にして王城を形作っていた石で創造されゴーレムが立ち去るのを見送る事しか出来ずにいる


それでも某の憐憫は脇に置いて会談は予定通りに着地した、ケイシャ嬢とオロス国の国王の一騎打ちとなり、某も立会人として相棒となった杖の上に立って空の上にいる、同じく立ち会う人となったオロス側の女性神官を見てため息を漏らした、どれ程の人材を抱えてるのだろうそれが上澄みだとしてもだ


私がダークエルフを束ねて魔王を支援していた時を思い出すがその時の勇者や聖女に引けを取らない力がある、イライザ殿や香織殿は別格だとしてその2人の鍛えた弟子が他にもいる様だ、今代の魔王が和平を飲んでいる事も納得できる


某の支援した魔王は勇者を返り討ちにした後自分に力を与えた暗黒神を殺す事で暗黒神の地位を簒奪した某もそれに手を貸した、前世で仕えた主より魔王との共闘は愉快な時間だった、その後はただひたすらに自らのやりたい事に時間を費やした


エルフに化けて盟友であった暗黒神が戯れに覚醒させた魔王を討伐した事もある私に惚れた勇者に勝負に勝てたら付き合うといって稽古の相手にして弄んだ事もあったが勇者を狙う聖女が慰めながら恋を実らせて私の元から巣立って行った、勇者は失意と共に重たい愛を抱えて2人で自分の世界に戻っていった様だ


私は女の身体を持て余している、男に抱かれる気など更々無いがこの世界で鍛え磨いた技がこの身体に染み着いている、果し合いの時にも思った事だが男になる事にもまた抵抗がある、誰かに懸想すればその時に選択すればよかろうと貰った性転換のポーションはアイテムボックスに眠っている


前世では小姓として男と男の睦みを間近で見聞きもしている、私が認める相手はどの様な者であろうか?身体は新品のままで今でも若さを保っているこのまま後生大事に守るのも可笑しなものだが相手が必要だ、等と考えていると決着が付いた


お互いに見せ場もあり良い試合と言えるだろと安心していると別の問題が露呈した、オロス国の国王に思い人が要る様だ、試合には勝利している訳だし戦況もオロス国が優勢だった、側室にでもすれば良いのではと思ったし、もっと機を見て話を進めればよかろうにと思うが思いを寄せる相手が悪かった


思い人は某と共に立会人を務めたスセリ殿だ、幸か不幸か王を弟子としか見ていない、好意的な捉え方をしても姉として弟の成長を見守るような感情だろうか、かえって高い障害となるだろう


「スセリは我の大切な巫女じゃ、お前程度に渡せん、そもそもお前が何をしようとスセリは手に入らん、スセリ、力の差を、そして格の違いを見せ付けてやれ」

若い王の不器用さを見ているとサンゴ殿が場を氷付かせる台詞を吐いた


実際その後に惨たらしい一方的な瞬殺劇が見られた、王がグリフォンを駆りスセリ殿が大鷲を駆った、スセリ殿が王の槍を躱し空中でグリフォンに飛び移り王を海に突き落として勝負は付いた


その後、面白半分に私の友であり、ウルリク王とケイシャ嬢の両者の祖先であるケイシャ殿が己に因んで同じ名を付けられたケイシャ嬢にスセリ殿と勝負をけしかけた、立場上スセリ殿が手加減をしたのだろう、名勝負と言える試合を演じてくれた、最後は勝利を譲り大鷲から落ちて海の上にスセリ殿が降り立ったその後海中からエイがスセリ殿乗せて観戦している者達の元へ戻り、試合は打ち止めになった


海に落ちたウルリク王をケイシャ嬢が引き揚げている、この後2人は結ばれて国を治めていくのだがスセリ殿に対しての敬意もお互いを結び付けている助けになっている様だ、スセリ殿は島の神殿に留まりこの国と法王国の友好関係を維持する役を担っていくだろう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。