14.追憶
女神様の指示に従いミネア嬢の魂をもとの肉体に返し、フェンリルたち住む雪山へと魔法で跳ぶ
使徒が神域から現世に降臨するたには女神の指示と莫大な神力が必要だ専用の神器に蓄えられておりそこから使用する、神器は2つしかなく連続で使用できるのは2回までとなるが再充填に5年くらいかかるため余程の事が無い限りそんなことはしない
私が使徒になってからも連続使用は一度も無い一回の降臨で1か月現世で活動が可能だ、その間に出来るだけこちらの陣営の勢力の拡大に努めることになる、犬飼さんへのスキルや特典の譲渡に対して口出し出来ない様にされてしまった、まったく女神様はこういう時には悪知恵が働くものだと呆れた
降臨の影響で頭が痛くなり前世の事を含め過去の事象を思い出す事がある、自分の視点の時もあり俯瞰で見る神の目線の時もある、今回は神の目線で前世で私の魂がこちらに渡るきっかけとなる事故の少し前からだ、路地に大会の成績が悪く早めにリタイヤした連中が集まっている話の内容まで聞こえてきた、それは私を路地裏に連れこんだ後に乱暴するの順番の話だった、気持ち悪くなり、虫唾が走り、殺意がわいた
そしてその後に重く感じたのは後悔と感謝だった、もちろんこのゴミムシどもにでは無い、女神様のへのものだった先日半日の間土下座させて説教をしたとき女神様はこの事には一切言及されなかった、何故あんなことをしてしまったのか、女神様はわたしを助けてくれていたのに
私は前世でも。勇者として魔王を討伐した時も、その後使徒になってからも恋愛感情など感じたことは無かったおそらくこの後もそうだろう、私の楽しみは真剣勝負だったトレーディングカードゲームがそうであり魔王討伐の旅での多くの戦いがそうであり魔王との決戦がそうだった、使徒になりその真剣勝負から遠ざかって久しい、今回の降臨では女神様のためダークエルフ共を相手に真剣勝負を楽しみ勝利を捧げよう、相手は勇者時代に戦ったダークエルフの女族長の娘だろうか息子はミネア嬢が倒している
その思考に引っ張られかつての強敵の事を思い出す、私が譲り受けた勇者の身体の本来の魂を喰らったのが彼女だった、勇者の記憶は魂を喰われた時に奪われ酷い虫食い状態だったが他人の日記を読むようにたどれた一番大事な記憶が残っているのだろう、共に戦う戦士と恋人同士で魔王を倒した後結婚しようと約束していた、戦士にとってダークエルフの族長は恋人の魂を奪った憎むべき敵で、私は大事な恋人の身体を道具にする冒涜者だった
それでも共に魔王を倒す仲間だ最初は黙って共に戦ってくれた、最初はダークエルフとの戦いが多く戦士も恋人の敵討ちとやる気を出してくれた、出し過ぎたくらいだった、戦いが進みダークエルフ達にある程度の被害を与えたが女族長を仕留める事は出来なかった
最低な事に私はその戦いを楽しんでいた、自分や仲間たちが傷つくことも気にしなかった死ななければすべてかすり傷だと、共に戦うフェンリルや聖女、魔法使いとの連携も素晴らしかったどんな傷も聖女が癒してくれた、ただし戦士にとっては大事な恋人の身体を傷つける事が許しがたい冒涜であった、このころになると私は自分自身も含め勇者パーティをトレーディングカードゲームのデッキの様に考えていた、カードは自分の剣と魔法、戦士の斧、フェンリルの牙と魔法、聖女の神聖魔法、魔法使いの魔法だこれを組み合わせデッキを構築して敵に勝利するゲームだ
次第に戦士との連携がうまく取れなくなっていった、必用ないのに恋人の身体を守ろうと庇い無駄に傷を負う、恋人の身体を気にしてとどめをさすタイミングを逃す、敵が強敵になるにつれそれは悪化していったそれでも魔王軍を追い詰めていくことが出来たていたが限界が近づいていた、私にとって戦士は抜くべき不要なカードだったデッキの回りを悪くするゴミカードだ、戦いも長期化し厭戦気分も拡がりかけていた
その頃ダークエルフの女族長から秘密裏に和平の打診があった使者として送られてきたのは人間の女性だった、彼女は「魔導国」が『異世界転移』て無理矢理つれてきたうえに魔法で魂を縛って戦わされていた勇者パーティの一人で女族長の短剣でたまたまその魔法が解けた「魔導国」を共に戦わされ死んでいった仲間の敵として恨みダークエルフに協力していた
私にとって悪い話ではなかったが戦士は激怒し猛反対した、それでも再度女族長と直接話す約束を交わした戦士には会うだけだ機会があれば打ち取ると説明し納得させた
こちらからは私がフェンリルを連れて出席し、ダークエルフ側は女族長が使者として訪れていた女性を伴っていた、この状況は私にとって理想的だった聖女や魔法使いには知られてはいけない話だったからだ、
私は和平ではなく停戦を求め一つの条件を付けたそれは、ダークエルフが戦士を魔王の直属の配下の仕業に見せかけて暗殺する事だ
女族長はそれを聞いて驚き、笑いながら喜んだ様な表情を見せたが目は何一つ笑っていなかった、その後魔術契約をおこなった戦士の暗殺、秘密を守る事、暗殺成功後2年の停戦の契約をかわした、契約の文言に抜け道が無いかも確認したすべてのカードのテキストを隅から隅まで確認してオリジナルコンボを作っていた経験が役に立った
無事暗殺は成功し私のデッキは完成した、世間的に勇者に別人の魂が入っているとは知られていない、恋人を失いながらも戦い続ける勇者の話は蔓延しかけていた厭戦気分を払拭してくれた、その後の戦いは本当に楽しかった私のデッキは積み込んだかのように回ってくれた
魔王を倒した後女族長から息子の嫁になって新しい魔王にならないかと誘われたが断った、彼女は戦闘でも交渉でも楽しい戦いを交えた相手で変な話だが尊敬していた姉妹にならないかと誘われたら私はどんな回答をしただろうか
そして追憶から解放され雪山の寒さが私の頭を冷やし感じていた頭の痛みも消えたほんの一瞬のことだがしっかり憶えている
あらためて誓う、これから1か月の戦いを楽しみ勝利を女神様に捧げると
現状を把握し自分の使える手札を確認しデッキを構築する、相手の手札を読み意図を読み解く今回の対戦相手は私をどれぐらい楽しませてくれるだろうか、陣営的に敵は弱い方がいいに決まっているのに私は強敵を望んでいたミスプレイをするようなゴミムシでは満足できない、前世の決勝卓の様な対戦相手と戦いたい




