139.果し合い
「受けてもいいですが、どの様な勝負をお望みでしょうか?」
私がエルフの女から勝負を挑まれそう回答した
売られた喧嘩であり、相手はクローシス国側に立っているのであれば拒否できるかもしれないが、既に一度やりあっている、その後でドライアード達から術式の由来を聞いた、何故この世界の住人から故郷の神話を教えられるのかと驚いたが世界樹が知識を集積する役割を持っているからだろう
もう一つ受けても良いと答えた理由がある、血が滾るのだ、私の身体に流れるダークエルフの血のせいだろう、ここにイザベルの身体で来ていたのなら回避しようとしたのだろうかと考えれば疑問も残る、それならば私の魂が望んでいることになる、そこまで考えた時に相手から望みを告げられた
「術式では某の負けだった、そこを覆そうなどと思ってはいない、これで遊んで貰いたい」
と言い刀を出した
「アイテムボックスに刀、と先の術式、同郷のようですね、魔術とスキル抜きで楽しみましょう、暗器も含めて装備している物だけで構いませんか?」
もう少し条件をしぼる
「魔道具の類はどうする魔力を帯びていない純粋な刀も用意で・・・いや忘れてくれ魔道具は有りにさせて貰おう」
妙な感じもしたが私のメインの短剣2本は共に魔道具だ有り難い条件であり拒否する理由は無い
「ここでやるのか?流石に刀の方が有利だろう、咲夜2人に戦場を用意してやれ、そうだな以前庭に植えて貰った竹が良いな良い感じに林を造ってくれ」
イライザ殿が提案して、外に出て咲夜が能力で竹林を産み出した
1メートル前後にランダムに太い竹が生えている足もとは固い石ば混じっつた荒れ地のままだが一部岩が埋もれているためか根が露出していた
「良いな、おあつらえ向きだ、いい趣味だ殺し合いに相応しい」
そういって刀を抜いて竹に切りつけている
ポンッと軽い音がして竹が衝撃を受け流して刀の太刀筋をずらした、竹の表面に傷はついていたが切断は出来なかった様だ
「ほう、抜き打ちの切り上げでは刃を弾きよる」
その言葉の後上段から斜めに切り下ろした
今度は音も無く刃が通り竹が斜めに切断され切断面に沿って滑りとがった竹が地面に突き刺さって枝なガサガサと音を立てた
「いいな、魔力を籠め力が逃げない角度なら切断できる、良い塩梅の障害物だな、さて楽しもうではないか、某の名はツクモ、ホンダツクモじゃ其方の名を聞こうか」
「氷上千尋、いざ尋常に」
ヒルダと名乗るより前世の名を名乗るのが相応しいと思った
「良きかな、良きかな、良い名乗りじゃ、些か某の名乗りはこの世界に毒されていたようじゃ」
「本田九十九参る」
そう言うと一気に間合いを詰めて速度を優先した横薙ぎの抜き打ちが私の首を狙う
間に竹があるが刃に魔色が込められていない、嫌な予感がして間合いを取ると竹を素通りして刃が襲ってきた、魔法で強化してある私の衣も存在しないかの様に首に傷を付けて血がにじむ、肉を切り裂く時にだけ刃に魔力をのせているようだ
竹が切断された訳でも無く、衣にも傷は無いただ私の肉体だけを傷つけていた、切りたいモノだけを選択して切れるのだろうか?果たしてあの刃は私の短剣で受け止める事が出来るのだろうか?お礼とばかりに弥生殿から贈られた短剣を投擲すると刀で弾かれた
少なくとも相手は防御にも使える様だ、短剣の能力で右手に短剣を戻し構える、左手に香織から貰った短剣を握っている
「良い反応だ、嬉しいぞ、大抵は初太刀で終わってしまうのだがお前は素晴らしい、惜しむらくはお前が女に生まれた事だな、こんな姿で生まれ変わってしまった某が言う事ではないがな、それでも共に刀をもって勝負をしたかった」
余裕があるのか好き勝手な事を言ってくる
「香織、九十九殿の希望を叶えてあげたいわ、私用に刀と二人に性転換のポーションを用意して頂戴、仕切り直すわ」
「武器を追加するけど構わないわよね、貴方も男の身体になりたいのならこれを飲みなさい」
香織が出してくれたポーションを先に飲んだ後で残る一本を投げて渡した
「有り難いが今使うかは考えものよのう、男の身体に戻る利点以上に間合いが狂う事の悪影響が大きいからな」
いやはや楽しい、竹に対する確認までし見せた上て刀の能力を使った初見殺しの一撃で仕留められなかった、驚いていたのは某の方で、身体で受け止めても能力を隠さなければいけなかったのに投げられた短剣を弾いてしまっていた魔道具の効果で切る対象を切り替えるのだがそこまで気付かれただろうか?
相手の短剣も便利な能力がありまだ隠している能力がありそうだ、世辞の言葉で時間を稼いで対処法を考えようとしたが、それを利用されて間合いの不利を解消する言い訳にされた、男同士で刀の勝負を望む様な言葉を吐いたのは某だ、流石に吐いた唾は吞めぬ
相手の用意したポーションなど口に出来る筈も無い、相手だけが男の身体と新たな刀を手にした、右手の短剣はアイテムボックスに収納されたが左手に構えていた短剣が刺青に変わり腕に収まる、身長が高くなりリーチも伸びた、それに合わせて着替え某の刀に対して重りにしかならない防具も全て外している
カオリと呼ばれていた女が刀をこの場で錬成していた能力を測ってみたがとんでもない業物で様々な能力が目の前で付与されていく、対処が二択や三択を強いられる異なる能力を見せつける様に付与して能力の干渉も無い名刀が出来上がる
今更魔道具で無い純粋な刀の勝負に変える事は出来ないし、その刀は握り飯に変わって某の腹の中に納まっている、ここに来て詰んでいるのでは無いかと後悔に襲われていた
「良い刀じゃな、この後はどちらかが確実に命を落とす勝負になりそうじゃな、それはそれ望むところじゃが、某がここ訪れた最初の役目を果せなくなっては本末転倒じゃ、先にそちらを片付けたいがいがどうじゃ」
この提案は受け入れられオロス国の先の王を交えて密約が結ばれた、オロス国の現国王とクローシス国の辺境伯の娘が姻戚を結んで二つの国を治める、お互いに理の有る話でとんとん拍子で魔術契約も交わされた、そして某の遅延策も時間切れになってしまった、爽やかな美丈夫に変わた千尋殿が勝負の再会を促す、不覚にも自身の女の身体に引きずられ魅力的に感じてしまった更に勝ち目が薄れていく
そんな時に救世主が現われた
「チヒロ様、また浮気ですか?やはり私が付いて行くべきでした、凛も待っているのですよ直ぐに森に帰りましょう」
「ユリア、誤解だこれは武人に対する礼儀なのだ、決してやましい事は考えていない」
「女性を相手にしてポーションで男性になる事の何処が「武人に対する礼儀」なのですか?話しは森に帰ってから伺います」
千尋殿は魔法で転移してきた女性に転移魔法で攫われていった
恐らく命拾いしたのは某の方だ魔法やスキルを制限しない勝負であれば勝つ自信があるが、今の条件ではかなり勝算の低い強敵だ、仮に勝利したとしてもそんな相手がここだけでまだ2人いるのだ、ほっとしていると勝負が流れた詫びにと2人から勝負を挑まれた、特にイライザという女は正面から戦えば某より強いだろう、気遣いは不要と丁重に断った
手段を選ばなければ殺せる相手だと思うがそれも確実とは言えない、辺境伯妃の願いがオロス国に勝利する事でなかった事が有難かった、不可能とは言わないが状況が厳しすぎた、王族の暗殺に全力を注いで五分の賭けが成立するかも怪しい、その様な丁半博打に命は張れない




