138.対面
久々に自分の身体で酒を楽しみながらつまみ代わりに水晶玉で海戦の続きを楽しもうと準備をしていたら招かぬ客がまた訪れた、正直参戦はしたくない、この身体であれば遅れは取らないと思うが割に合わない相手だ
「ツクモ様、初めて御前に参上しました、私の実家の愚か者が無礼な行いしたのではないかと思いお詫びに伺いしました」
挨拶をした後盟約の巻物を出して跪いたクローシス国の者には違い無さそうだが先の愚か者と何が違うと言うのかだろうか?
「詫びじゃとな、ならばここで腹を切れ、某が解釈してやろう、お前の死体と魂を触媒にして少しは願いを叶えてやるための力として使ってやろう」
脅し半分に返事を返した
「承知しました、私の魂で娘のケイシャをこの国の女王にして頂きたい」
女は短剣を出して自らの腹にそれを突き立てた
覚悟は有る様だが、流石に正式な作法は分からない様だが覚悟は見せて貰った、先ほどの使い走りの男よりは使える身体の依り代になるだろう
アイテムボックスから刀を出した所で異変に気が付いた
床に置かれた巻物が女の血を吸っていた、血を吸った巻物から声が聞こえた
「ツクモ、其方この言葉を聞いている時にわたくしががまだ存在しているかは分からないがわたくしの子孫に力を貸しては貰えないだろうか宜しく頼む」
成程子孫の血で発動する伝言か
そういうことであればやる気を出さないといけない、それにしても今までにこの様な事は無かった正しい使い方が伝わっていないとは情けない話だ、いやケイシャが伝えていないのかもしれんこの程度は自分で解析しろと言いそうな奴だった
女の傷を精霊魔法で癒す、もう会えない友の願いであれば自らの身体で助力せねばなるまい、詳しく話を聞くと娘に某の名をそのまま名付けた様だ、漢字の無いこの世界では同じ名を付けてジュニアだとか二世と称する事が有るが友と同じ名と言うのは面白い、その名に相応しい女であれば良いのだが
まずは、この国の現状と戦をしている国の事を把握しようか、情報を得るのに適した術式の手本が某の宮殿の周りで見本を見せてくれている「影武者」のスキルで術式を写し取るとしよう、術者の特性による効果の補正は得られなかったが十分に目的を果せる精度で再現出来た
使い魔を使うより同時に広範囲を探査出来る虫使いとでも言ったら良いだろうか、別のスキルを併用して毒や薬を使役する虫を介して暗殺や支援にも使える様だ、私なら魔法を使えば活用出来そうだ予想していなかった成果であるが、某の宮殿の周りの虫を放置して良いものか悩む程度には危険な術式という事でもある
熟慮したがこちらの動きを偽装するために放置する事にした、術式を写した事で監視能力も把握している警戒させるよりは良いだろう
「イライザ様、クローシス国の辺境伯の使者だと言う者がお見え出すがお会いになりますか?」
卯月がオロス国に来てからのいつも通りに咲夜を抱いたまま俺に報告した
対応を俺に任せたあと昨夜の頭に咲く蘭の花の香りを楽しんでいる、昨夜はそれを気にする様子も無く集中している「法王国」に残して来た自分の分身を操ってカムイや千夜の世話を手伝っているのだろう
俺や卯月が気が付いていないだけでここに居る身体の方が分身かもしれない、分身と自由に入れ替える事が出来る様で分身が何体いるのか俺も把握していない、実際は全てが本体なのかもしれない
国境の砦にオロス国の先代の王と共に詰めていたところだ、国境を越えれば使者をよこしたクローシス国の辺境伯が治める領地となる、戦を仕掛ける前の挨拶だろうか?
「なかなか強そうなエルフの女性でした、カオリ様といい勝負です、イライザ様でも楽しめそうでしたよ」
咲夜が卯月に抱かれながら報告してくれた
「もしかしたらダークエルフかも知れません気配が異常でした、峠道にしかけた迷いの魔法もそれが存在しない様に通過しました、破られた形跡も無く一切効果を発揮しませんでした」
報告が続いた
「流石咲夜様頼りになりますわ」
卯月が咲夜を強く抱きしめる
咲夜が頭を前に傾け後頭部を卯月の鼻に打ち付けた、ゴーレムの筈だが鼻血が滴る
「咲夜様、積極的ですわ、咲夜様の白い花びらに私の血が赤く映えて最高です、私に咲夜様の花粉をかけて頂きたいものです、楽しみですわ」
咲夜が暴れるがゴーレムの力が強く振りほどけない様だ
見ていると咲夜が魔力を練り上げ頭の花が別の花に変化した、いや身体ごと入れ替わった様だ
「この魔力は卯月でち?どうしてあたちを抱きかかえているのでち」
アンジュと入れ替わった様だ、自分の分身以外とも入れ替われるのは初めて知った
「卯月、なんのつもりでち気でも狂ったのでち?」
アンジュの言葉に卯月が無言でアンジュを床に叩きつけた、顔から床に叩きつけられ粉塵が舞う
「貴女の仕業なの?アンジュ!咲夜様を何処にやったの?」
卯月が魔力を練り上げながら魔槍を出した
「きっと咲夜がスキルを使ってあたちと居場所を入れ替えて卯月から逃げたんでち、今度は何をやらかしたのでち?」
アンジュが卯月を責める様な口調で煽った
「アンジュ、さっきまで何処にいたの教えなさい」
咲夜を追いかけるつもりだろうか居場所の手がかりを聞き出しにかかった
「カオリ様の造った氷の城でち、あたちの迷宮でもあるから様子を見て
アンジュが言い終えるまでに再び咲夜と入れ替わった
「取り込み中であるか?都合が悪いなら出直すがどうだ?」
気が付けばエルフの女が部屋の中に居る
「咲夜どうしたの、急にやってきて、付いて来てっ欲しいって何かあったの」
次いで妖精の道が開かれた、今度は香織とヒルダが部屋に入って来た咲夜は援軍を呼びにいった様だ
「咲夜様そうならそうと仰って下さいませ」
と再び抱き上げよう近付く、咲夜は大人しく再び卯月の腕の中に納まった、そんなに嫌でも無いのだろう
「お待たせした、みっともないところを見せたな面目ない、要件を伺おう、いかな用向きだろうか?」
咲夜の行動から見ると安易に争うべきでは無い相手と言うのだろうか?それとも逆に3人で確実に仕留めるべき相手と見ているのだろうか
咲夜は今まで刺客や侵入者に対して素早く反応していたどちらも考えられるが卯月に身体を預けている所を見るに戦闘は考慮していないのだろう、相手がダークエルフである可能性に言及していたし2人と関わりでもある人物なのだろうか?
「ヒルダ殿、こちらの方と面識はありますか?わざわざ咲夜が呼びに行ったようですが」
相手がダークエルフで無くても良いように無難な質問をぶつけてみた
「魔力に覚えがあります、海戦で大した挨拶をして頂いた相手です、どうしてこちらに」
ヒルダが警戒しながら相手に声をかける
「ほう、面白い返礼をしてこられたされたのは貴女でしたか、お会いできて光栄です、一度お手合わせいただけないでしょうか?」
面白そうな話しだ、退屈な見張りをしていたが名勝負が見れそうだ、たまには観戦も良いだろう




