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135/189

135.勘違い

船団の中で最も大きい船に軍の主だったものが集まり軍議を開いている、切り札を切って祖先が盟約を結んでいたと伝わる存在しない事になっている魔術師の助力を願った


国の危機に限り使用する様にと口伝で伝わる巻物で今回が最後の一巻だ元は3巻だったとも10巻存在したとも伝わるが真実は歴史の中に消えてしまっている、確かなのは今回が最後になるという事だけだ、効果は絶材だった天空を赤く染めながらオロス国の誇る氷の城に流星が迫る


だが敵の殲滅とクローシス国の勝利の確信は霧散し絶望に堕ちた、城が浮き上がり巨大な亀が支えている、城を砕きオロス国を滅亡に導くはずの流星は津波となって我が国の誇る海軍を襲う武器に変わってしまった


それでも希望は残っていた、最大の好機を敵は有効活用できないままに傍観している船の被害も軽微で沈んだ船無かった、まだ戦える、勝機はある、目の前の城を海戦で落とす事は現実的に不可能だが操っているのは同じ人間だその証拠にしばらくして城は海上に着水している、いかな高位の魔術師であっても魔力は有限だあれだけの事をやってのけたのだしばらくは派手な事は出来ない筈だ


「狼狽えるな!敵の魔術師が魔力を使い果たした今しか機会は無い、今なら手が届くのだ!」


「敵が攻勢に出れば終わりだ、城に上陸して奪い取るそれしか無かろう、先陣を切る名誉が欲しいものは者は名乗り出よ!」

集まる者達の前で叫んだ


普段であれば我先にと名乗りて争いなるはずの呼びかけに応える者はいなかった、予想出来た結果でもあった、こんな時には


「臆病者共め、こうなっては王自ら城に乗り込もう、少しでも勇気が在る者だけが俺の船に乗り込め、臆病者は不要だ泳いで国に変えれ!」

こう叫べばいいのだ海上に逃げる場所など無い皆が王である俺に続くだろう


だが目の前で起こった現実が俺にその言葉を叫ぶ勇気を奪っていた、皆も思っているのだもし魔力が尽きていなかったらと、狼狽える我々が最後の勇気を振り絞って自滅するのを待ち受けているのではないかと


だからといって今更和睦など出来ない、格下の国に頭を下げれば俺の王として築いてきた全てが瓦解する事になるだろう、そもそも此方から仕掛けた戦だ敵も簡単には矛を収めないだろう、俺の首一つで解決するのであればいい方だろう


「王よ何も馬鹿正直にあの城を相手にする必要は無いでしょう、船団を分け島を落とせばいいのです、最新の帆船でこの城を引き付けてもらえば島だけでは無く首都もがら空きです」

こんな進言をするものが現われた


いつもなら卑怯者と罵倒し即座に否定する策に俺は名案と褒め策の詳細の検討をしていた


「王が空き巣狙いとは呆れたものだ」

幼い女の声がした


「あの城を浮き上がらせ、某の宮殿に雷を落とした奴に礼をするために出て来てやったのだ、次の王になりたい者は付いてこい魔法であの城まで運んでやろう」

咎める前に次の言葉が俺の家臣団の忠誠に楔を打ち込んだ


「それともまだ王としての役目を果す意思が残っているのであればすぐに部隊を選抜しろ、10分だけ待ってやろう」


そこにはダークエルフの小娘が立っていた、俺よりも、いやこの船に居る誰よりも低い身長にもかかわらずこの小娘の存在感が俺達から逆らう気を奪っていた、何故か皆がこのダークエルフが先の流星を降らせた者だと理解していたのだ、今の言葉は真実だと





「アデル、クレール、折角来てくれたのになかなか出番が無くて退屈させてすまないでち、でもそろそろでち、この状況なら相手の逆転の手段は要人の暗殺くらいしか考えられないでち、この城の有人の部分はあたちの迷宮なのでち、つまり一番の御馳走を2人に優先的にまわせるでち、リクエストは無いでちか?」

2人が暇そうなので声をかける


「そうですねアンジュ様から頂いた弓を実戦で試してみたいですね」

2人はしばらく前から暇を持て余して自分で使う矢を仕上げている、カオリママが消費したコカトリスのくちばしを矢じりに加工している、あたちの迷宮で育てている竹とコカトリスの羽が主な材料だ


この矢を私が「蟲毒壺」で創造し2人に与えた弓で放てば石化の効果が発動する、カオリママが敵であっても死人は少なくする様にと指示を出したているため、最適な武器となる、今回2人がエルフに見える様にポーションで白くした肌に黒い毒蛇の刺青に見えるのその弓が映えている


あたちも暇つぶしに将棋盤を出して盤上に駒を並べてドミノをしたり2人を誘って山崩しをしたが誰も楽しくない微妙な時間が過ぎていくだけだった、すぐに耐えられなくなって2人に矢の製作を再開させた、師匠のゲオルグ爺さんが居れば一局指せるのに、残念ながら2人は将棋に興味は無い


最近師匠がカミラ様から習って気が付いたらあたちが相手をしている、始めは飛車角落ちで手加減されていたが悔しいので勉強して今では平手で五分の勝負が出来るまで上達した、カミラ様に頼んで戦術書や詰将棋の本を手に入れた、実際に盤上に並べてやってみよう、将棋盤や駒も異世界から取り寄せてもらったものだ


そうして時間を潰していると敵が城に上陸してきた、小舟に兵を押し込んで魔法で運んだようだ、アデルとクレールが的が出来たと、さっき迄に作った矢を持って迎撃に出て行った


あたちは将棋盤を片付けて従魔のヨルムンガンドを呼び出す、ここまで敵が侵入する可能性は低いが、逆に言えばここに到達できる者は強敵だ準備はしておいて損は無い、誰かが来るまで2人の活躍を蜂を通して観戦しよう


2人はカオリママが懲らしめて懲罰部隊送りになり城を守らされている奴らの援護を始めた、素人なら同士討ちもあり得る戦場に2本の矢を一度に弓につがえて一度に放つ、敵2人の武器を持つ腕に傷を付けながらその後ろにいる敵に矢を命中させる1射で4人を石像に変える、あっという間にその戦場にいる敵を無力化して見せた


2人の勝利を寝ころんでヨルムンガンドの口に足を突っ込んで毒を吸収する、その代わりにあたちの魔力をヨルムンガンドに吸収させながら見ていた、あたち達の間でだけ成立するじゃれ合いだがこれを見てケイシャ殿はドン引きしていた、カオリママは行儀が悪いと注意し、珊瑚はツボに入ったようで大笑いしていたがこれが一番効率が良いのだ


「酷い事をするものだ、助けてやるから某に協力する気は無いか?」

そうしていると侵入者から声をかけられた


私がヨルムンガンドの餌にさせていると誤解したのだろうか?確かに門番として召喚したモンスターに餌として私を食わしている様に見える構図だ


「城内を案内するだけでいい、そのまま食い殺されたくは無いだろう?」

やはり推測の通り誤解している


声の主を見たところ話しかけてきたのはダークエルフの少女だ


「勘違いしないで欲しいでち、この子はあたちの可愛い従魔でち、可哀そうに鉄砲玉にされたみたいでち、保護してあげるから武器を納めるといいでち」

ヨルムンガンドの毒液まみれの足で立ち上がって返事を返した


明らかに相手が困惑している


「心配ないでち、呪いで縛られているのなら解呪してあげるでち」

説得を続けた


「何じゃそれは、もうよい汝のお陰で興が覚めた某は帰る」

持っていた刀を鞘に納めて出口に向かおうとする


「大丈夫でち?危ないからしばらくここに居る方がよくないでちか?食事も用意するから戦いが終わるまでゆっくりしてればいでち」


カオリママが戦時食として用意してくれたおむすびを出した、あたちはいま食事を終えたばかりだ、アルラウネは一応口からも食事は出来るがあたちはやはり根である身体から吸収する方が好きだ


それを見てダークエルフの少女が固まっている


「握り飯じゃと、この世界に来て400年こんな所で再会出来ようとはかたじけない、礼にこの刀を置いて行こうさらばじゃ」

おむすびを手にしたダークエルフが消えてしまった


あいつは何だったのだろう転移魔法だろうか、幻影だったのだろうか、それにしては確かにお礼代わりと置いていった刀が残っているのだ、あまりに釣り合わない礼だが、見逃してくれと言う意味なのだろうか?

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