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132.特等席

「モルガン様、お引き合わせしたしたい方がいるのですが通して良いですか?」

不意に声をかけられた


慌てて声の聞こえた方向を向けばカオリ様とアンジュ様が初めて見る女性を連れていた、城の周囲や内部を並んだ氷柱に映し出されているこ城内の管理室にだ、「通してよいですか?」と言いながらもうこの城の重要区画に連れ込んでいるではないか


善良だとは思うが良くも悪くもマイペースだそしてそのペースが異常だ、今まではその性格に助けられているが一抹の不安は常に付きまとう、私は気を付けているしウルリクも早々にサンゴ様と通して恐怖の洗礼を受けているが、「王族に対する態度が」だの「よそ者が大きな顔で」だのと陰口を言う馬鹿がまだまだいる


この城を見てもその恐ろしさが分からないその愚かさが私には恐ろしい、巻き込まれたくないので見つけ次第暴力や魔法で教育したら、その行動を咎められた、私を含めてこれから本格的に戦争が始まるが敵に対しても自らを律さなければいけない、虐殺や婦女暴行は戦争に付き物だがそれを赦してはくれないだろう


味方になってくれているからこそ、厳しく裁かれるだろう、実際訓練の後で酒場で給仕の少女を乱暴した馬鹿がポーションで女に変えられ若い美人に見える幻覚をかけた上で同類のいる兵舎に放り込んだのだ


神聖魔法で部屋を隔離し半裸の状態で放り込みしばらく時間を置いてお楽しみの最中に幻覚を解き、次いでポーションの効果を解除した、その次は馬鹿を襲った馬鹿に同じことを繰り返した、乱暴されかけて逃げ込んできた被害者と判断して保護した部屋には褒美として酒をプレゼントし次の部屋に放り込む、一晩かけて兵舎の部屋を一巡した


その後に逆恨みをしてカオリ様を集団で襲った極めつけの馬鹿が集団幻覚のなか仲間の一人をカオリ様と思い込まされ兵舎に連れ込んだと信じて野外で戦友たちの前で尻を掘る醜態をさらしたままサンゴ様に石に変えられたまま放置されている、そんな彼等を助けようとする者は誰もいなかった


「彼等が罪を悔い改めたら石化は解ける」

とカオリ様は言うのだが石化が解けたところで彼らは救われるのであろうか?


犯人が客を取って被害者に保証させろとまで言われていたのだが、ようやく彼らに救いの手が差し伸べられた、職務として仕方なくかも知れないが彼らの上官が懲罰部隊として最前線に配置するからその条件でとりなして欲しいと泣きついてきたのだ


確かに戦功をあげる機会でもあろう名誉の戦死だとしても彼らからすれば救済かも知れない、渋々ながら受け入れてくれる代わりにカオリ様からの訓練がはじまった、無駄死にする事もまた許しがたい様だ、二重の意味で面倒見が良いあるいは執念深い対応だった、食事に関しては私も巻き込まれた兵士に与えられる食事として見れば上等な部類だが耐性が無い者は麻痺や石化が付いて来る


スセリ様が治療してくれるのだが彼女も時々遠い目をしている、何か悪夢でも思い出しているのだろう彼女も通った道なのだと推測できた、同時に彼女の力の源泉を知ることが出来た、そして私の魔力も上昇していく事を実感した、このままではカオリ様にこの国を乗っ取られるのではと恐れたくらいだがその気が有れば既に奪われていることだろう


そしてこの城には一部に死んだ目をした兵士も含まれるが精鋭が集めれた、海の上で無ければ逃亡者が出ていた事だろう、カオリ様の試練を乗り越えた一部の者が本国に派遣されて他の軍の教練を実施する事になった1年もすれば我が国の兵の練度は跳ね上がつっているだろう


そんなカオリ様が連れてきた人間がまともな人間の訳がない、スセリ様のような当たりである期待と共に恐怖も感じるのだ


「モルガン殿、わたくしの兄が興した国の実質的な指導者だと聞いているが期待したほどでは無いな、カオリ殿を基準にするのがそもそも間違いなのだろうな」

名乗りもせずにいきなり無礼な言葉をかけてきた


「わたくしが王女になったクローシス国がオロス国と称していた時代でもモルガン殿なら十分に女王が務まるだろう、わたくしと違い平和に国を治めていくように見える、その代わり領土を増やす事は出来なかったであろうが」

その口は次々に無礼な言葉を紡ぎだす


ここに居るのが私だけで良かった、家臣が居れば別の問題が発生した、玉座でウルリクがサンゴ様にやらかした醜態の二の舞になった事だろう





「ほう、忍耐力が有るな、流石に少し顔には出ておる様だが合格点だ、わたくしが拡げた領土を拡大できず維持すらまともに出来ない役立たず共に引導を渡してやってくれ、わたくしが許そう」

モルガンというこの国の王を産んだ女魔法使いに声をかける、国母と言われ権力を掌握している様だ


「褒美に名を教えてやろう、ケイシャだ、ケイシャ様と呼ぶことを許す」

これで十分だ後は見物の時間だ


ここに来る途中ににアンジュがこの国の周辺国の状況を使役する蜂をつかって調べてくれたヨルムンガンドの礼だという、カオリ殿は興味が無さそうだがサンゴ殿は周辺の国の情報を伝えてくれた、私が息子に残した国の今の王は愚な事に自分の妃1人満足に統治出来ていない


愛人の子を孕んだ妃の息子を自分の子と信じて疑いもせず泳ぎも出来ない王子を後継者にすべくこの国の新たな島に触手を伸ばしている有様だ、確かに島の価値を考えれば指をくわえて現在のオロス国の発展を許す事など考えられない


だとしてもだ、わたくしであれば島の価値に気が付いた時点で冬の中でも軍を動かして占領し実行支配を優先する、悠長に使者を派遣して相手に自国の思惑を教えてやる愚行を犯すこと絶対にない、島にいたサンゴ殿に撃退された可能性もあるが、早々に動けばリディア王女やカール殿を保護して正当な権利を主張出来たものを


クローシス国に付くのが自分の人間時代を考えれば正しい道筋だろうが、両国の指導者を見れば違う道も見えてくる、長い年月で国同士の政略結婚もありどちらの国王も私の子孫なのだ、血と言う意味で考えれば托卵されわたくしの血が絶える可能性のあるクローシス国の現状は放置出来ない


とは言え今更わたくしが介入する程の思い入れが残っているのかと言えばその熱はもうさめてしまっていた、しばらくは特等席で見物させて貰おう、お気に入りの人物が見つかるやもしれぬ、消えてしまっていた火がまた炎を上げるやも知れない


きっと楽しませてくれるだろう、その結果次第ではわたくしに新しい道が開かれるだろう、人間に戻るという選択も提示されている、最高のタイミングで地上に戻る機会を得た事に感謝している

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