126.挑発
「ウルリヒ様、王城に向かって一直線で向かって来る飛行体を見張りの者が確認しました」
部下が駆け込んできた
主な家臣を集め今後の対応を協議していたところだだった、今までであればこんなに早く報告は上がってこないが王城の上空に化け物が出現し城内の外部につながる位置にいた者すべてが石にされた後に監視体制を見直した成果だ
「バリスタを用意しろ、射程に入り次第撃ち落とせ」
俺の指示に従い部下が部屋を出て行った
「にゃ~!」
その時母の残していった使い魔の猫が怒ったよう鳴き声を上げた
「アドルフ、ここは任せた」
急いで部下の後を追い指示が伝わる前に追いつき物見の塔に向かう
そこから見ると塔に配置しているバリスタに矢がセットされ弦を撒きあげている素早い対応と褒めるべきだが今回は状況が違う、手旗で各バリスタの責任者に待機の指示を伝える、しばらく待つと射程に入る少し前で飛行体が停止したよく見るとそれはグリフォンで背に2人の騎乗が確認でき旗を持っているその旗は母上のものだった
「モルガン様の旗印を確認しました」
部下も気が付いた様だ
バリスタから矢を外して引き金を引き弓の弦が空気を引き裂く音が響いた、相手にその音が聞こえる事は無いが敵意の無い事を示すための行動だ、その一連の動きを母の使い魔が見ていた
大きな旗を出させてこちらの意図を伝えた伝えた歓迎すると言う合図だ、その後魔法を発動し中庭を明かりで照らした、母にも意図は伝わった様だグリフォンが中庭に降り立つ、その飛行速度も着地した後に大人しく背に乗る者を下す動きも訓練された素晴らしい動きだった
母だろう女ともう一人髪の長い女がグリフォンから降り城内に続く入り口へまっすぐ進んでいる、身体の動きから見ても1人は母に間違いなさそうだ、間違いが起きなくてよかった母はこの国でトップクラスの魔術師だそして一度怒ると手が付けられなくなる
父が酷い目にあうのをよく見てきたそのせいで女に対する苦手意識があり婚約者でありながらリディアにもアプローチを出来ずにいた、そのために好意を持ちながら別の男に奪われる事になってしまった、それでも今回の様な時には頼もしい
母と共にこの城を訪れたのは「法王国」に所属する神官であのサンゴと言う海神の眷属を限界させている契約者でもあるという、この世界に招いたのは彼女の師にあたるカオリと言う勇者だという、魔王軍との和平を結ぶにあたって重要な役割を果たしたと人物と聞いた
彼女の名はスセリ、長い金髪が眩しかった
「私がグリフォンで出向きクローシス国の軍船を港から出られない様にして来ましょう、後は王の御決断だけです」
隣に立つ母の目が早く決断しろ言っている
「まて、そう簡単にクローシス国と戦端を開く訳にはいかない、あの島に対する割譲要求に対しても我が国の方針すらまだ固まってはいないで無い状況です、母上もご存じでしょう、何故こんな過激な事言う者を連れてきたのですか?」
言葉にした後に気が付いた
母はクローシス国の我が国に対する要求を呑む気など初めから無かったのだと
「私が島に出向いて島を割譲した後に彼らの旧領を保証して説得してきましょう」
と船を出した目的は正にこれだったのだと
「母上貴女は・・・」
思ず口に出ていた
「ウルリヒあの島を失えばこの国は終わりです、20年も経たずにはクローシス国に飲み込まれる、貴方も分かっているでしょう?」
母が俺の呟きに対しての言葉はこれだった
その通りだろう、吞み込まれるのならまだ良いが放置されて無視されるかも知れないそうなれば緩やかに国が滅んでいくだろう求心力を失い、バラバラになる、そんな事は俺にも分かっている、必要なのは勝利なのだと
「それでも、この国をチップにして賭けに出る訳にはいかない」
俺は母に答えた
息子が煮え切らない態度を取り続けている、このままでは早かれ遅かれこの国は終わる、正確には王家の命運が尽きる事になるそして多くの民も道連れになるだろう、一部の世渡りの上手い奴等が生き残るだけだ
息子に言う様に賭けには違いないが、勝算のあるうちに少なくなったチップをオールインする時なのだ、最早手段は選んでいられない、息子に王位を譲っているが夫を再度担ぎ出すしか無いだろう
「そういう話でしたら、私はこの件から手を引くことに致しましょう、島に戻り珊瑚様と今後の方針決めなくてはなりません、師より任された神殿です、島の統治者が変わろうとも守る義務がありますので失礼します」
スセリが準備しかけていた水鏡をしまい立ち上がった
「スセリ殿お待ちをクローシス国が貴女の神殿の存続を認めるとはお思えません、馬鹿息子を幽閉してでも我々は島を守ります、どうかあなた方の助力をお願い致します」
残された少ない切り札まで失う訳にはいかない
スセリが準備した水鏡をしまい再び準備をした、それまでの間にも眠たい話が聞こえて来ていた
「今更何を周回遅れな話をしているのだ?戦う戦わないの話などもう手遅れで無意味だ、いかに戦い、いかに勝利するかの話をするべきであろう、お前達の手札には我とスセリが有るのだ、この島は場代としてベット済みだ、確実に勝てる手札が配られている、どれだけレイズするかを考える場面だ「法王国」から融資を受けることも出来る、相手の持つチップをどれだけ巻き上げるのか?それを決めればいい、そうだろう?」
一気にまくしたてる
「お前が逃がした女以上の姫を隣国から献上させてやろう、市場の魚のようにお前の前に並べてやる、それともお前は男の方が好みか?跪いてケツを隣国の王に差し出したいのなら好きにしろ、綺麗な顔をしているし可愛がって貰えるかもしれんな」
そのついでに王を煽った
この状況でここまで言われて怖気づくなら母親の言う様に早々に隠居してしまえば良いのだ
「良いだろう、あの時のクジラの化け物と幽霊船を貸して欲しい、利子として十分な寄進を神殿に納めよう、後払いでも構わないだろう?」
「そう来なくては嘘だろう、カオリ様も参戦させる、王として実力を証明してみせろ」
楽しくなってきた、どうやって巻き込んでやろうか?次にアンジュが来た時に2人で考えれば良い、開戦さえしてしまえば止めたとしても介入してくれるだろう




