122.アンジュと珊瑚
俺が王位を獲得した後3ヶ月が過ぎ新年を迎えようとしていた、噴火に伴う津波の対策を切っ掛けに民からの評判も良くなり祝賀する空気にあふれ、隣国をはじめ「同盟」内の各国とも友好関係の確認は取れた、俺の王位継承を承認してくれている
「同盟」内の序列は構成する10国の中で下から数えた方が早いが、そのおかげで冒険者ギルドの暴走から始まった魔王軍の襲撃のターゲットから外れていた、情けない話しではあるが「同盟」内での影響力も拡大している、とは言え我が国が大きく成長した訳ではない
いま我が国と東西に隣接する2国を含む3国の間で問題になっているのが先の噴火で新しく誕生した島々の領有権問題だ、直線距離としては我が国が一番近いのだが、3国の中で我が国の国力が一番下だ、何としても我が国の領土としたいがなかなか難しい、最近噴火も落ち着き、上陸して調査し入植して領有権を主張したいところだ、先を越される訳にはいかない
今すぐにも調査隊を派遣したいが現時点でも海は荒れ困難な任務となる、政変を起こした時に俺の即位に反対していた連中から人を集めて船を出させたが帰っては来なかった、冬の海に飲まれたか?任務を放棄して隣国に亡命でもしたのだろうか?その後に残していた家族が逃亡などしていない事を見ると前者の様だ
漁師の話を聞くと島から火山のモノではない明かりが島に友っているという、先を越されたのかと落胆しているところ我が国の港に1隻の船が入港した
「珊瑚様、ここがこの国の首都になります」
リディア王女に従っていたカールという男が説明してくれた
リディア王女は私が回収した思い人のジークの死体をアンデットに変えて2人で二度と戻らない航海に出た死んだという意味ではない、永遠に海を彷徨うか新天地にたどり着くのかは彼女の力次第だアンジュが死霊魔術の魔導書を与えていた
私も流し読みで内容を確認したがリッチとなる秘術まで記されている素晴らしいものだった、現魔王の妹弟子は師の力を借りてその秘術を進歩させ人間の肉体と変わらない現身を維持しているという、リディアの今後の研鑽次第ではそこまで至る可能性もあるだろう
今日はその後始末だ、残されたカール達はこの国の新たな王に恭順すると言う、私には愚かな事だと思える、カオリ様の創造した島には素晴らしい未来がある、重要な航路の少し北側にあり火山による海岸線の隆起も港を造る条件を意図したものだ
外海からの高い波を防ぐ様に岬が配置されている、火山の影響で水温も安定してこれから訪れる本格的な冬にも凍る事は無いだろう、貿易の中継港として発展が約束されている、当然奪い合いになる島であるが私とアンジュが周辺の海底から沈没していた軍船や貿易船を探してアンデットの船団を用意しているし、カオリ様の後ろ盾のあるすぐに人口も増えていくだろうに
それをみすみす献上しようと言うのだ馬鹿げている、とは言えリディアという神輿が失われたのだ里心も有るのかも知れない、この国の国王が我への信仰を捧げるというならあの島の守護者になる事もやぶさかではない、その確認のためにここに来ている
港で役人を通して話がつき謁見が叶う事になった、私とカールが王座の間に通されたそこには威圧する為だろう衛兵たちが並んでいる左右に各12人合わせて24人、王座に王が座り右に宮廷魔術師が控えている
「ウルリク様、このような場を設けて頂き感謝致します、リディア王女に仕えておりましたカールです、リディア様は海神の贄となり我ら不肖の家臣の為に島を残して下さいました、何とかそこで命を繋ぎ船を仕立てて恥ずかしくもここに参上いたしました」
「如何なる要件で今更戻って来たのだ?その首を差し出しに来たのか?」
新たな王はウルリヒと言うらしい
さして興味は無かったが人にしてはまあまあな力を持っている様だがカオリ様の足元にも届かない、リディアが夢中になったジークにも多少劣るだろう、女を奪われる様な男だが、リディアも短慮な事だ王配にむかえてジークを愛人にすればよかろうに
「それにいる女は何者だ?何故王に跪いて挨拶をしない死にたいのか?」
王の怒りの矛先が我に向いた
成程、見る目が無い男だ隣に控える宮廷魔術師が慌てている、まだ若いのだろうが部下には多少恵まれている様だ
「愚かな男だ、女を奪われた挙句、謀反を起こし王を僭称する、誰に暴言を吐いたのか教えてや・・
「黙れ無礼もの!」
我の言葉を遮る馬鹿がいた
まだ王が黙って聞いているのに何と馬鹿な奴だ、部下に恵まれてもいなかった様だ間引いてやろう、剣を抜いてかかってくる馬鹿を邪眼で睨み石に変えた
「殺風景な部屋だ我が調度品を増やしてやろう」
残りの衛兵にも視線を送り最初の馬鹿の仲間入りをさせてやった
「カール、恭順は受け入れられなかった様だ、残念な事だが丁度いいこのままこの国を頂こう、アンジュ出番だ!派手にやってしまえ!」
空が暗転し上空にクジラのアンデットが出現する、港を封鎖する様に海中から幽霊船の船団10隻が浮上した、クジラが白く潮吹きをするとその潮を浴びた城内の者達が石化していく、見事だ城の外には一切被害が出ていない、そして城内には王と魔術師を除いて動く者はいない、我なら住民もまとめて石に変えるところだ
「珊瑚様、お待ちください、先に紹介しなかった、私の不手際です御慈悲を頂きますよう伏して願います」
カールが頭を床にするつける様に懇願する、そうだこの男が残っていた、当然味方は石にはしていない
愉快な事に先にカールが王に示した礼よりも深い敬意を示す態度を王と隣に控える宮廷魔術師に見せつけた、事前に示し合わせた事では無いが、その事が私を満足させた
「カールに免じて我に改めて挨拶する機会を与えよう!礼を尽くすのであれば振り上げた拳を下ろしてやってもいい!」
王座の間にテーブル珊瑚を生成してそれに腰かけて宣言する
そのテーブル珊瑚はお互いの立場そ示す様に玉座より高い位置で私は王を上から見下ろしていた
「我を神と崇め神殿を建てるのであれば、あの島が手に入る、お前の軽い頭を下げるだけで良いのだ、安い買い物だと思うがどうだ?隣の賢者に知恵を借りても構わない、お前達2人以外はこの様だ、これ以上恥をかく事も無く済むでは無いか」
「お前達が弁えるのではあれば私は島に戻り、空のを舞うクジラや港を封鎖する船も引きあげてやろう、その後に石化も解除してやる、カールがお前に跪く場面からやり直せばよかろう」
この脅しに王も宮廷魔術師を膝を屈した
王座の間のに造ったテーブル珊瑚も消してアンジュの乗るクジラに乗り石化を解除した、城の上空を旋回して悠々と島まで飛行して凱旋した、港を封鎖していた船も通常の軍船を超える船速でクジラを追う様に海上を進んで港を後にした
途中からカオリ様の監視の目を感じたが黙認された様だ、人命に被害を出さなければ許される様だ、アンジュもそれを感じたのだろう「やばいでち、やり過ぎたかもしれないでち」と慌てていたがしばらくして落ちついた、その後島に引き上げてきたカール達と祝杯を上げた、王はこの島の自治を認め首都にも私の神殿を造ると約束したという
しばらくしてお目付け役にスセリが島の神殿に派遣された、2人の神官が転生した村は落ち着いた様だ、アンジュはクジラでこの島に必要な物資の輸送するために彼女の迷宮に引き上げていった今後は定期的にクジラでこの島を訪れるだけになってしまったのが残念だ
私とアンジュを2人だけにすると危険だとカオリ様が判断した様だ、しばらくやりたい放題だったがこれからは堅実にこの島を発展させていこう、いずれ海を介して南まで私のへの信仰を拡大してやろう、アンジュは陸から南を目指す言っていた南国で祝杯を上げる日が楽しみだ




