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121/185

121.蹉跌

父と俺の野心を叶えるために謀反を企て成功した、いやこれは謀反ではない、本来の後継者とされていた従姉が婚約者であった俺を裏切って奴隷上がりの男を選んだからだ、確かに武勲を上げた優秀な男だが奴隷から解放されて親衛隊に取り立てられただけで満足すべきだったのだ


叔父である先王が死に際に奴を後継者である娘の王配に選ぶという間違いを犯した事が発端だ、この国を正しく導くために選んだ道だ、俺の父には将軍として国を支えてくれというのが先王の遺言だった、だからこの国の未来のために行動を起こしたのだ


「死を前にして兄は間違った道を選ばれました、賢明な女王陛下に置かれましては正しい選択をして頂きたい、既に禍根となるあの奴隷上がりの男は打ち取りました、本来の正しい道にお戻りください」

わが父が軍を掌握して親衛隊を制圧し、女王に戴冠する前に王女に迫った


「私の心はジークのものです、簒奪者よ、私は夫の後を追います」

仕方が無く王女を捕らえ彼女の魔法を魔道具の枷で封じて父に仕える魔術師に自殺を封じる呪いをかけさせた、無理矢理俺のモノにしてしまえば良いとう父の言葉に対して、私は別の選択をした


リディアから俺のモノになると言わせたかったのだ、リディアに忠誠を誓うの者達の助命と引きかえに俺のモノになれと迫っても首を縦には振らなかった、そこで父や魔術師と相談してリディア達を自力で航行出来なくした船に押し込んで外海まで運び海流に任せる事にした


古い刑罰で罪人を追放するためのものだ本来は数日分の水と食料共に小舟で沖に流す国に戻る事は出来ない、伝説に海の神に救われて遠くの大陸へと運ばれて新たな国を興した者もいると伝わってもいる、迂闊に正規の継承権一位の者を殺すよりは今後の統治にとっての悪影響は少ないだろういう意味もある


最善は本来の婚約通りに俺達が結ばれる事だ、船で漂流する内に気が変われば魔術師が枷に施した監視魔魔法を辿って救出する事も可能だ、救援を望む際の魔法の合言葉をリディア伝えて海に流した


気が気でなく一日中監視の水晶玉を眺めていたが父に叱責され魔術師からも諫言された、王として為すべき事を為せという、魔術師からは弟子に監視を引き継がせると言う、母も共に訪れもしリディアが改心しなかった場合には隣国などから王妃に相応しい娘を見つけると言い俺を慰めてくれた


気分を替える為にも統治の仕事に取り掛かっていると、魔術師から報告があった

「ウルリク様リディア殿達の船で進展がありました」

シャチが船の近くを訪れたあと海神の使いらしい3人の女性が現われたという


急ぎ水晶玉を置いている魔術師の部屋へと向かった、リディアがその3人の中の1人と交渉している様だ


「向こうの声は拾えないのか?」


「ウルリク様無理です、最初に説明した様に向こうの様子を眺める事しか出来ません」

俺の問いに気が利かない返事が返って来た


「そんな事は分かっている、今からでも使い魔等で何とかならんのか、唇を読める者を呼んで来い、リディアの顔と女の顔を大きく見える様にしろ、それくらいなら出来るだろう」

すぐに対応してくれたが同時に2つの場所は見れれない様だ


リディアの顔が大きく水晶玉に映った、3日程だが疲労しているのが分かる、自分のした事なのに心が痛んだ伝えた合言葉を唱えてくれと強く願った


そうしていると読唇術を習得している外交官を務める男がやって来た、そこで水晶玉に信じられない物が移りこんだ、瘴気をまとった大きな口がリディア達を飲み込もう迫る、リディアの顔を拡大していたために周囲の異変に気が付かなかったのだ、その後水晶玉が暗転し次いで映像が途切れた


「あれは何だというのだ?」


「ウルリク様、あの3人の娘が海神の使いで有るのなら、リディア殿が不敬を働き僕の怪物に襲わせたのかも知れません、あるいはリディア殿が自分達を生贄に捧げて我らへの復讐を望まれた恐れもあります」

魔術師が進言してくれた


「すぐに沿岸部の民を高台に避難させろ、本当に海神の使いであれば津波を起こしてこの国への裁きとするやもしれぬ、民にはこう伝えよ、「王族でありながら守りべき貞操を捨てた罪深い王女への裁きであると、民を救うために正しき王のウルリヒに神託がくだった」とな、すぐに配下の者を向かわせろ」

残念だがも手に入らない思い人には最後に俺の役に立ってもらおう


「ウルリヒ様、もし何も起こらない場合には逆に王の間に傷をつける事になります、ご再考ください」

魔術師が俺を諫め様とした


「構わぬ、俺の名誉など後で何とでも回復できるが民が失われては国が亡ぶ、お前は母と共に海神の怒りを宥めるための儀式を行え、ついでにそこで俺に従わなかった者達を生贄として処刑してしまえば良かろう、どちらに転ぼうと俺の功績に出来よう」

この言葉を聞き家臣たちが動き出す


欲しかった2つのモノの内既に片方が他人に奪われたその上もう1つまで逃す訳にはいかない


民の避難が完了し夜が明ける前に北の海から火山の噴火が見え吹きあがる溶岩の光が空を照らす、その後に1メートルほどの津波が沿岸を襲った、海神の起こした事なのかは不明だが俺は運が良い、人命への被害は避けられ、俺の指示で民を避難をさせた事も海神の怒りを宥める儀式も俺の効果と主張できる、今回の政変も神の思し召しと正当化出来よう





アンジュの操るクジラの胃の中で船で漂流していた者達から話を聞いた、舌打ちしたい気持ちを抑え顔に出ない様にポーカーフェイスを保ちつつ今後の対応を考える


リディアをはじめとして彼女達の話をまとめると「真実の愛を貫いたら、裏切った婚約者にザマァされて追放された、海神の御使い様、彼の敵を討って下さい」となる、勿論聞こえの良いように自分達の正義を主張してくるのだが、アンジュに使い魔を放たせて裏をとった結果がこれだ


だからと言って、お前らの事は知らないと海の上に戻して放り出すのも寝覚めが悪い、事実上の死刑からは救ってあげる事にしよう、島流しに減刑してやることにした、もう少し大陸から離れた場所に移動し、海底火山を噴火させて新たな陸地を造り、そこまで彼女達を運んだ


恋に溺れた王女に巻き込まれた者達が可哀そうに思えたからでもある、寒冷地で育てられるジャガイモの苗を与えて、これからやって来る冬を越せる様にアンジュに「迷宮作成」で神殿を造らせ必要な食料と水も用意した火山に樹木も生やし精霊魔法で畑作が出来る土も用意した


高い火山のおかげで海上を漂う霧や水蒸気が雲となり雨も降るだろう、ある程度の方向性を示して後をアンジュと珊瑚に丸投げした、早く帰って千夜の世話をしないといけない、イライザに任せて来たがもう少しで一晩を超え昼に近付いている怒らせると面倒だ


一か月後にアンジュから連絡を受けたリディア嬢が旅立ちの挨拶をしたいと言うのだ


「カオリ様私達を救って頂いて感謝しております、アンジュ様と珊瑚様のお陰でジークと2人で旅に出る事が出来ます、本当にありがとうございました」

彼女の隣にアンデットナイトが控えている


晒されていた彼の死体を回収してリディア嬢が彼をアンデット化した、アンジュから死霊魔術を習ったという、2人が航海に出る為の船は幽霊船だスケルトンが櫂を漕いで進む、船自体もアンデットであり魔力で航行することも出来るという話だ


「彼と王位の両方を望んだことが間違いだったのです、これからも旅すがら力を付けてリッチになることを目指します師匠からそのための魔導書を賜りました、カオリ様に救われた命をこのような使い方をすることをお許し下さい」

リディア嬢が私に謝罪した


「貴女の旅が目的地にたどり着くことを祈りましょう、それでも旅に疲れたら私を頼ってよいのですよ、不自然な有り様から解放して輪廻の輪に戻してあげましょう」

これが彼女達へ手向けの言葉として送った、再会する事は有るのだろうか


最後にこの島に残していく彼女の家臣たちの事を頼まれた


「リディア様は自らを海神の生贄として儂らをこの島まで導いたのです、遠回りをしましたがこれからは故国のために生きる事にします」

彼らは彼らの道を進むことを決めた様だ、私や珊瑚を海の神の使いだと信じている様だ


もう少し幸せな結末は無かったのだろうか?リディア嬢が王女として故国に弔い合戦を挑む様な未来と比べれば平和な結末だと自分を慰める、最善の結果を迎えたのは間違いないのだが、この結果を超える最高が有ったのではないかとも思ってしまうのだ


イライザと力を合わせればリディア嬢の思い人を人として蘇らせることも出来るが彼女の覚悟を穢す事となるだろう、女神様を信仰する神官であったスセリ場合とは違いの私の自己満足のために「法王国」の人々の感謝や祈りを使う事は出来ない

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