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119/187

119.海水浴

予定より遅くなったがついに海にたどり着い、初めて見る海に感動していると仲良くなって一緒に付いて来た珊瑚にいさんが愕然としていた


「どうしたでち?この世界の生きた海でち、珊瑚にいさんは嬉しくないでち?」

思っていた反応とは違うため声をかけた


外見は綺麗なねえさんなのだが性自認は男のため「珊瑚にいさん」と呼んでいる、案内してくれたアストリッド殿に仕える人間も不思議そうにしている


「こんな冷たく荒々しい海は初めてだ、私の知る海はもっと温かく色鮮やかだ、こんな白黒に近い海ではなかった」

珊瑚にいさんが呟く


「「同盟」は北部に位置しているため冬が長く海は夏を除いてこのように荒々しくなります、それでも豊かな海で鱈や鮭などの多くの恵みをあたえてくれます」

案内してくれた女性が解説をしてくれた


「海への感謝はここでも同じようで素晴らしい、勝手は違うがこの世界の海を楽しもう、案内を感謝するそのしるしにこれを送ろう」

珊瑚にいさんが宝石珊瑚を渡していた


思わぬ送り物に女性は喜んでいる、あれがどの様に出来たか知らないままに、アストリッド殿の館に来るまでに色々な所に寄り道をした


カオリママとあたちが召喚し私の魔力で実体化を維持している珊瑚兄さんは見た目だけなら美人な若い娘だ、あたちも可愛い少女の外見だ良い獲物と勘違いして攫おうとした馬鹿共の成れの果てがあの宝石珊瑚だ


用意していた花の苗や種と共にアストリッド殿への贈り物に加えた、その時に彼女に仕える女性たちは目を奪われていた


喜んで礼を言い仕事を果して主人の元へ引き上げていった


珊瑚にいさんが海に飛び込んだ

「アンジュも来いよ、冷たい海もなかなか気持ちが良い」


その言葉に誘われてあたちも続いた、海の水を身体で味わうと異変を感じた、私の身体に海水の塩分が毒として作用した様だ「蟲毒壺」が喜んでいる、私以外では海水を毒と感じる事は出来ないからだろう、カオリママとイザベルねえさんに聖水に入れられた時の様に刺激を感じる、今回は熱さでは無く痛覚を刺激された


「あっあっあっ・・・」

痛い、傷口に塩を塗りこむという言葉を聞いた覚えがあるが全身でそれを感じていた


「アンジュどうした?」


「いいでち、聖水もいいでちが、海水も効くでち!」


「そうなのか、良かったな」

それを聞いて珊瑚にいさんは呆れた様な顔をして海に潜っていった


あたちは打ち寄せる波に揺られながら周囲に海藻を浮かべて海面を漂い海水の味を楽しんだ、聖水の時程は時間がかからずに耐性を獲得した、その後余韻に浸りながらしばらく浮いていた





面白い娘だ私を倒し契約を強要した勇者に仕えているアルラウネだ、勇者に含む物がある私と違って純粋に勇者をカオリママと呼んで慕っている、初めは気に入らなかったが岩塩を蟻で掘り進め我の為の神殿を地下に造ってくれた


今のこの姿は勇者の認識が具現化したものだそれに沿って私の神像が神殿に塩で造られた、私を信仰により好ましい有り様に固定していこうとしている、我が生贄として一時は同化したスセリと転生した2人の神官を含む村人たちの祈りは我が本当の姿に戻ることを妨げる


自分は男だという思い以外は彼女達の信仰によって塗り替えられてしまった、その自分は男だという思いすら塗り換えれれてしまうかもしれないが我がやろうとした事を逆にやられているのだ、彼女達の信仰が続く限りはつきあってやろう


いずれ我はこの世界で忘れられて元も世界に帰る事になるだろう、本来の姿に戻った時に我はどの様に感じるのだろうか?あるいはこの世界で信仰が拡がりこの世界に根を張る事になるのだろうか?


アンジュは岩塩と共に眠る山の近くに残る海の成れの果てから私の元の世界の生き物に近い化石を掘り出しその中のから魂の残るモノををアンデットとして蘇らせた、それらの作業に付き合っているうちに我とアンジュは意気投合していた、そして今もこの世界にも生きた海が存在したことを知った


そして今我は冷たいが生命力にあふれる海を満喫している、別の場所には我の良く知る海も存在する事だろう、またアンジュと共に遊びに行きたい、アンジュが目的にしていた毒を持つ生き物も多く生息している様だアンジュが海水を味わっている内に幾つか捕まえておいてやるとしよう


海に浮いているアンジュに獲物を見せると喜んでくれた、自分でも探すつもりだろう周りに浮き輪代わりに漂わせていた海藻が急激に成長して海岸を覆い尽くす、植物の妖精としての特徴を見せてくれたその力も大したものだ


「アンジュはシュブニグラスの眷属でもあるのか?」

思わず私は訪ねていた


「分からないでち、豊穣神とは縁が有るはずでちが、名前を告げられた事はないでち」

アンジュから答からは確証は得られなかった


その豊穣神がシュブニグラスであれば私の仕えるガタノソア様と敵対する可能性があるのだがこの世界でその因縁に捕らわれずとも良いだろう、この世界で共に仕えている勇者カオリの力は我が眷属として仕える神に近いものも含んでいる


アンジュも石化毒や石化の呪いも使えるのだ余計な事を聞いたのかも知れない、彼女は好奇心が強い自力でシュブニグラスとつながってしまいかねない、もっと我らの力を学習して貰らう事としよう頼もしい仲間になってくれるだろう


この世界にガタノソア様を顕現させることも夢ではない、勇者カオリ様は我が神の巫女となりえる力がある、アンジュは「カオリママは魔王になるべきなのでち」と言ってもいた協力関係も構築可能だ、そうなれば我の存在も高みに到達出来よう

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