115.失言
「セーラ様がお見えです、客間にお通しして待って頂いております、今はカチュア様が対応中ですが謝罪する事が有るのでしたら早く向かわれた方がセーラ様の怒りも早く収まるでしょう」
私とイライザの血で育てたアルラウネが作業の一段落したところで報告をしてくれた
「サクヤ有り難う、少し記憶を整理してから対応するわ」
返事をすると作業部屋から出ていった
可愛い娘の様なアルラウネだが言葉は少し可愛げが無い、力も強く他のアルラウネからも信頼されている、いやモテる、その内気に入った相手を見つけて受粉させるだろうとイライザが言っていた、私達2人の血の影響もあるがどうやらマンドレイクとして長い間成長を続けた株らしく血を与えた時点で私より年上だったと後で知った
イライザと同じくらい生きている様で50年以上生きている事になるよく見ると頭に咲いている蘭の花のオシベも立派だ杉の様に辺り一帯に花粉をまき散らす様な事はしない様で安心した、アンジュに会わせてみようかとも思うが受粉した後はどうなるのだろう実が出来て種が出来るのだろうか?そう言えば卯月は自分の種をまいて残機として準備していると聞いた事がある株によって性質が違うのだろう
脱線しながらも私の最近やらかした事を思い出そうとするが心当たりはいくつも出て来る、最近だとスセリに任せた神殿の件だろうか?アンジュと一緒に色々やり過ぎたのかも知れない、珊瑚も大陸の隆起で海水が干上がり岩塩層が出来た山を気に入っている様だ
彼女達も2人で意気投合して化石からアンデットを作成したり珊瑚の神殿を地下に造ったりやりたい放題だった、私もそれを知っていたが黙認んしている、秘密にしていたし、2人にも外部に漏らすなと注意していたがこれがバレたのだろうか?
最近だともう一つ心当たりがある、スセリの力が問題になったのだろうか?けれどスセリも成長して私が「蟲毒壺」を従える様に珊瑚と上手くやっているはずだ、イザベルの時の様な失敗はしていない、はずだ、多分、きっと大丈夫な気がする、それでも考えると不安になってきた、いや私が珊瑚と直接契約しているのだもしもの事など無いこれは自分を騙す嘘ではない真実だ
「セーラ様お待たせしました、また何か不手際でもありましたか?」
客間にと向かうとセーラ様が物思いにふけっておられた様で、私に気が付かない私の歩き方も原因かもしれない後ろめたい事が有るため恐る恐る入室していた
「カオリ様、忙しいところ手を止めてしまい申し訳ありません、今回の来訪は確認したい事がありましてお伺いしました」
あまり怒っている様な感じでは無いが油断してはいけない
「その確認したい事とはスセリの神殿の事でしょうか?」
バレていない事まで自白する必要は無い、セーラ様がどこまで知っているのか探りを入れよう
「それも含めての事です、カオリ様は「法王国」内での影響力を拡大したいとお思いでしょうか?」
はて?どういう事だろう?
「弟子の成長は私の喜びではありますが、他に変な意図は無いつもりです、確かに慕われる事は私としても有り難い事ですが、丁度今まで作業をしていた事等で収入も有りますし、特にこれ以上何かを望んでいる訳ではないです」
「成程、もう一つお聞きします、カオリ様は名誉欲もないのですね?ヤヨイ様から託された神前もクロエに任せておられているようですし」
「そうですね、十分満足しています、イライザとの間に娘も生まれましたカムイに安心して暮らせる世界を残してやりたいです」
「そうですか、その安心して暮らせる世界を「法王国」やこの世界にも分けて頂けないでしょうか」
何が言いたいのだろう?
間接的ではあるが争いが無くなれば世界は平和になるだろう、そして魔王軍という潜在的な脅威があれば人間の納める国々の間でお争いも抑止できるこれ以上私に出来ることがあるだろうか?
「実は、カオリ様には神殿の運営に最終的には「法王国」の運営に強力していただきたいのです」
セーラ様が面倒な話を切り出してこられた
どう答えたらいいだろうか?「法王国」内を巡った時に説法をしたが、そんなに評判は良くなかったはずだ、特に神殿のお偉いさんには受けが悪かったらしい
旅の途中でイライザがセーラ様は私を最高司祭にしたいと思っているだろうと言っていた事を思い出す、勘弁して欲しい、イザベルからカトレアさんが神聖魔法を会得したと聞いている、そこで名案いや迷案を思いついた
「セーラ様、話半分に聞いて下さい、カトレアさんの司祭としての適性をどう思われますか?もう一つ私が実力で魔王の座を奪い取って魔王軍を掌握してしまえば平和になると思われますか?」
聞くべきではないかも知れないが今なら冗談で済むだろう
セーラ様の顔に驚きが見える、無言の時間がしばらく続いた
「その質問に対する回答は持ち帰られて下さい、非常に興味深い、最高司祭様の意向も確認しないといかないでしょう」
まずい事を聞いたのかも知れない
やはり口は災いの元だ、でもセーラ様の機嫌が少し良くなったような気がする
「カオリ様、もう一つ聞きたい事が有るのです、スセリに任せている神殿の事です、神殿を建立した場所を領有している貴族が不満を持っている様です、特に領主の妻や2人の娘そして妻の実家で領主に仕えている一門の有力者が岩塩の権益を奪われたと思っているようです」
「2人の娘達が社交界で神殿側が横暴だと吹聴している様で、今回は正当な手順を踏んでいましたので無視しておいても大きな問題は無いのですがカオリ様の考えをお聞きしたいと」
よかった、地下神殿の事が発覚した訳では無い様だ
今回は貴族の妻と娘達が不満を持っている事が問題の様だいうことか、何か贈り物をして機嫌を取れば良いのではないだろうか?金銭や宝石だと問題だろう何が良いだろうか?そうだ今ドレスの仕立てをしていたところだ、この世界の社交界の流行は分からないがドレスの材料となる生地を送れば良い
貴族ならば贔屓にしている仕立て屋もいるだろう、お抱えの者が居てもおかしくない無駄にはならないだろう
「セーラ様少しお待ちください」
作業室に向かい贈り物として相応しい布を探した
色は何が良いだろうか?白ならば好みの色に染められる、魔力を籠めてこの世界で私が織った布は問題が起きかねない、日本から持ち込んだ生地の中から女性が喜びそうな光沢のある純白の生地を選んだ
「セーラ様、まずはこの布を不満を抱えている貴族に贈って様子を見ましょう、私が届けると不手際があるといけないので神殿から贈って頂けると有難いです」
セーラ様の目に驚きが見えた
セーラ様も聖女を務めた司祭とは言え女性には変わりない日本製の布の素晴らしさに驚いているのだろう、贈り物として相応しい様だ、これで一安心だ




