105.食事会
セーラの最高司祭の後継者としての引き継ぎを手伝っていたはずが審問官として「法王国」の伯爵家の館に立ち入り検査をしている、イザベルの報告を受け違法奴隷を扱っていた組織を壊滅させ20人程の被害者を保護しその3倍以上の組織の構成員を捕らえて南神殿に連行した、その中にイザベルが確保した組織の幹部は不思議なくらい取り調べに協力的だった
明らかに何らかの精神的な操作を受けた痕跡がある、イザベルから尋問用の魔法を使用したと報告を受けているがその魔法を使用した術者の情報は開示できないと言って何も話してくれない、同僚を拷問する事も出来ず神殿に滞在してもらった上で聞き取りをしたが報告書の内容以外は話せないという答えを繰り返すだけだ
保護した者達や他の構成員から聞き出した話から分かる事はイザベル以外に女性の神官が1人と冒険者風の女魔法戦士の2人の関与が分かった、組織のアジトの襲撃には非常に強力な魔獣を使役している様だアジトの現場検証では食い残された手足が残るだけで何人の構成員が死亡したのか正確な事は分からない
違法奴隷の販売先の内イザベルの権限で調査出来る所は既に捜査が終了している、明らかに越権行為だが証拠となる被害者を保護しており奴隷を購入した顧客も素直に罪を認めている、何らかの精神操作を受けているのは組織の幹部と同じだ
流石に国内の伯爵家に突撃する事は自重した様だが
「ユリアン様、情報が洩れる前に審問官を動かして館を押さえなければ証拠隠滅のために被害者に何が有るか分かりませんよ」
と逆に私が責められる有様だ、これ以上拘束しても無駄かと思案していると
部下から報告があった、疑いのある伯爵家の政敵である同じく伯爵家の家の当主の息子が私兵を動員したうえでして奴隷取引の証拠だと言う書類を審問官の詰め所に持参して告発したのだ、この貴族の手で関係者への根回しも終わっているという、あまりに都合が良い話だ
「イザベル!貴女の差し金なのか?」
部下からの報告を聞き彼女に詰問した
「後ろ暗い事をしている輩なのです敵も多い事でしょう、運が良かっただけです、私も手伝いましょう」
「問題にしないと確約していただければ2人の協力者にも参加してもらいましょう、少しぐらいであればお話をする時間も取れるでしょう」
イザベルは差し金だと認める回答はしないが今の状況からみると間違いなさそうだ
「良いだろう、私は何も知らなかった、たまたま発生っした政争が拡大する事を止め裁定をするために現場に駆け付けるだけだ、その後で私の権限で捜査を進めよう、協力者と共に行動してくれればいい」
「そうだ明日聖都で評判の店を予約しておこう、私の名を言えば個室に案内する様に準備をしておこう来てくれるね?」
イザベルの笛で踊るのは癪だが今さら止められない
セーラに魔王と戦う場を用意してくれと泣きつくような小娘がどうしてここまでの事をやる様になったのだ、魔王の影響なのだろうか?
「ユリア様・マチルダ様御足労頂き有り難う御座います」
イザベルから捕らわれていると思われる神官の救出に協力を求められた、
娘のシエルはチヒロ様に託して身軽な2人で駆け付けた、この2人でとイザベルの希望に答えた結果でもある、ダークエルフの身体で「法王国」聖都に連れて行くわけにもいかず、子供の身体のチヒロ様もあまり危険な場所に出したくない
到着した時には屋敷の周囲を兵が包囲していたイザベル様が土の精霊を使い地下からの逃走を防ぎ、私が神聖魔法の「聖域」の聖域で転移による闘争を防ぐ、スキルで強化したカオリ様の「聖域」と比べれば確実性は無いが余程の高位の魔法で無ければ突破出来ない筈だ
準備が終わると審問官たちを率いてユリアン殿も合流された、兵士たちが屋敷に突入した警備の兵や護衛に雇われていた冒険者や傭兵も数の差に気付いてほとんどが投降した様だ、転移魔術による逃走も気配すらなく無事に当主を捕らえ捕らえる事が出来た、神官も薬で眠らされていただけで無事に救出で来ている
行動が遅れていれば2日後の満月の夜に邪神への生贄にされるところだったと言う、定期的に以前から生贄の儀式を行っていた様だ、翌日お礼をしたいという事で聖都で評判の店で食事を御馳走してくれると言う、今日はイザベルの手配した宿に宿泊する事になった
「ユリア様・マチルダ様、明日の食事の時にお願いしたい事があります」
宿で夕食をを楽しんでいるとイザベルが訪ねて来た
部屋で話したいと言うので一緒に夕食を済ませて部屋に招いた
「実は今回の神官を奴隷として売り飛ばした組織を壊滅させるために私の独断でカトレア様とダリア様に協力して頂きまた、この事を隠すためにお二方に力を借りた事にしたいと考えております」
イザベルが私達に一芝居打って欲しいと言う
「それで、今回の救出劇に協力を求めたのですね、過剰な戦力と思っていましたが裏が有ったのですね」
結構面倒な話だ
「心苦しいのですが組織の幹部から情報を引き出すために精神魔法を使用しておりまして、これもなんとか誤魔化したいのです」
流石にそれは無理なのでは?
「ユリア、森からチヒロを呼ぼうか?精霊魔法で精神に干渉出来る者は彼しか居ないが、明日に間に合うか分からないわよ」
表向きは別人だ平行思考でつながっているがこのような言い方になる、実際に披露してくれとは言わないだろうと聞かれるまでは黙っていることにした
困ったものだ、ダリア様の精神魔法は対象者に後遺症を残す事が多い、精霊魔法でも感情を揺さぶり情報を引き出す事が出来るがそこまでの悪影響は無い
「香織に頼んで後遺症の出る自白剤を造ってもらうしかないか」
言ってから不安が出てきた、香織はあまり嘘を隠すのが苦手だ、アンジュの方が良いかも知れない
「そうだ、アンジュに自白剤を造ってもらえばいい、イザベルとも関係は良いのだろう?魔法薬にすれば矛盾は最小限に出来るだろう、今は使い切っている事にすれば良いだろう」
イザベルもユリアもこの案で話をすることに賛成してくれた
口裏合わせをしてお礼の食事会と言う名の査問会に向けえての準備を済ませた
「イザベル、魔王に力を借りた様だな、別に責める気は無いが、ユリア様達まで巻き込むのは止めて欲しいな」
いつから気付いていたのだろうか?
「ユリアン殿、弥生様からゴーレムを引き継がれたのですか?」
気になって尋ねる
「マチルダ様、お互い手札は隠しておきましょう、今回はイザベルがご迷惑をかけてしまいました、2人で食事をお楽しみください、イザベルから聞かなくてはいけない事が有りますので失礼します、ここの会計は後でイザベルが払いますの好きなだけ注文してください」
イザベルを連れてユリアン殿が店を出て行った
可哀そうに私も迂闊だった、運ばれてきた料理は評判の店というだけあって美味しかった、もう少し食べたかったがイザベルに悪いし追加注文は無しにした




