103.後継者
「セーラ、ユリアン良く来てくれました」
本神殿の奥にある自分の部屋に2人を招いた
女神様の加護で身体の外見は若いままだが寿命が近づいている、無理矢理持たせて後5年あるだろうか普通の人間であれば十分に最後の余生を送るのに十分すぎる時間だろうが最高司祭としての私には後継者の選択を含めてやるべき事が山積みだかつて自分が仕えた聖女は使徒となり女神を継いでいる
恐らくその女神も後継者を見定めた様だ、先延ばしにしてきたツケを払う時がきた、幸運な事に私も候補者の候補を見つける事が出来た、あまりに非常識な選択だと思うが今自室に呼んだ2人に調査させた結果2人に絞り込んだ
1人は勇者カオリ魔王を討伐した訳では無いが実力は間違いないが問題がある、それは司祭としての資質だ、将軍や王としてなら周囲の者を引きつけて勝利をもたらし家臣と共にその勝利で得た成果を守っていくだろうが最高司祭として「法王国」をまとめる者としては不安がある
その不安を考慮してもそれ以上の実力を持っている「聖杯」のスキルを発現させているし、好ましくは無いが「蟲毒壺」のスキルも所持している簡単に死ぬことは無いだろう、恋仲のイライザも頼もしい守護者となるだろう、性格も善良で温厚と聞いている、いささか短慮ではあるがセーラが補佐すれば問題無いが歳が若すぎる事が気がかりだ
そしてもう1人が異常な選択だその人物は魔王カトレアだ女神様の後継者でるヤヨイ様との関係から選択肢にあげた、イザベルからの報告をセーラから聞いた時最初は何を馬鹿な事を魅了でもされているのかと疑ったものだが経歴や現在のカトレアの力を見ると相応しいと思えてきた
和平の継続を決めた会議での行動をセーラから聞いている、勇者カオリが起こした奇跡の事もだ、最新の報告では神聖魔法を取得したと言う今後も力を伸ばしていくだろうとイザベルが心酔している様だ監視役としては失格だが彼女が仕えていることが導いた側面もあるだろう
「私の後継者を決めなくてはいけない時が来ました2人の意見が聞きたい、あくまで意見を聞くだけよここで決定する訳では無いから本音を聞かせて貰えないかしら?」
私の考える候補所を伝えた上で2人に問いかけた
「私はセーラ様が相応しいと思います、私と共に魔王討伐を果しました、聖女としても、魔王討伐後の本神殿の副司祭となるまでの地道な活躍も最高司祭の後継者として相応しいと思います」
「カオリ様の力を疑う気は有りませんが今後様々な経験を積んだ後でも遅くは有りません、本人にとっても子供の成長を確認した後でこの国そしてこの世界を背負う方が良いかと思います」
ユリアンの答えはこうだカトレアに対しては何も言わなかった
言外に有り得ないと言う考えが読みとれる、当然だろう私自身が彼女を後継者にする事には抵抗がある2人に止めて欲しかったのかも知れない
「私はカトレア殿を推します、勿論魔王カトレアとして最高司祭の後継者にする訳に行かないでしょうが、エルダーリッチの弟子になる前のイドニア=フォン=ローゼンベルグとして、いいえ1人のイドニアという女神様の僕としてならば後継者として相応しいかと」
「彼女がこの提案を承諾するのが前提ではありますが、彼女が神官として司祭として実績を積むまでの繋ぎとしてならば私が最高司祭様の後を継いでも構いません、カオリ様は実力は十分以上ですが儀式や祭礼を取り仕切る者としてあまり相応しく有りません、今後の成長に期待して次の候補としてなら何とかという程度です」
セーラの意見はこうだった
彼女の意見が妥当だろうか、カトレアが魔王の責任を放棄して私の後を継ぐ事は無いかもしれない、それこそ女神様が神託を下しでもしなければ難しい、逆に神託さえ下れば私達の考えなど関係無く喜んで最高司祭になるだろう
「実際に指導もせず相応しく無いといと決めつけるのはどうかと、繋ぎ役であるかは別として後継者がセーラ様である事は2人の意見は一致しています、カオリ様を本神殿に招いて最高司祭様自ら指導してみてはいかがでしょうか?」
ユリアンがセーラの意見に対して自分の考えを伝える
「そうですね、魔王カトレアに対しても打診はしてみましょう、断られる可能性は高いでしょうが最初から無理だと諦める事も無いでしょう」
セーラが答えた、ユリアンは「どうせ無駄だろうがやってみればいいだろう」と苦々しく応じる
結果として魔王カトレアに対する打診はしない事になった、それを一番喜ぶと思ったイザベルが反対したからだ
「カトレア様以外が魔王になる事が問題です、ダリア様が最有力ですが和平を破るまでは無いとは思いますが、魔王軍の勢力拡大に舵を切る事になるでしょう」
イザベルの意見とユリアンの考察も一致して中止する事になった
「香織、本神殿から使者が来ている」
子供を授かり幸せを噛みしめている所に面倒な話が持ち込まれた
本神殿で司祭として癒しの奉仕をして欲しいとの事だ、私達の所まで来ることの出来ない者達にも癒しを届けて欲しいらしい
「では、「法王国」各地の神殿をまわるのはどうでしょう?本神殿まで来ること出来ない方もおられるでしょうし、私も各地をまわってみたい、早太郎で移動すれば時間もかからないでしょう本神殿の方で巡回地と予定日を布告して頂ければ有り難いです」
本神殿の意向と個人的な希望を叶える事が出来る、ヒルダ姉さんとユリアが弥生様と「同盟」の諸国を巡礼して回っている話を思い出して提案した
「まずは本神殿まで来て頂きましてセーラ様と打ち合わせをして頂けないでしょうか、私の一存では答えかねます」
使者として訪れていた若い神官が答える
イライザが竜に変身して神官と共に背に乗り本神殿まで向かう事にした
「イライザ様、街から目撃されない場所に降りて頂けないでしょうか?」
確かに竜のまま向かえば大騒ぎになってしまうだろう、今回は神官衣を脱いでから返信し私が持って来ている、一緒に乗っていた神官の希望に応えて途中から徒歩で街に向かう
観光気分で街を見物しながら本神殿まで向かった、神官は真っすぐに行って欲しそうだが流石に口に出して急かす事は無かった、イライザが恐ろしいからかもしれない、空を飛んでいる時間以上を物見遊山に使い本神殿に到着した
使者に来た神官が取次ぎ、セーラ様が出迎えて下さって初めて入る奥の部屋に通される
「やけに堅固な防諜対策だな、ただの奉仕活動では無いのか?」
イライザが疑問を口にする
「そうですね、正直にお話しましょう、最強司祭様の寿命が近づいております」
セーラ様が話し出す
「内密にその寿命を延長したい訳だ、俺と香織のスキルがあれば対処が可能だ、体調不良を国内に公開して皆に健康回復の祈祷でもさせればその祈りを織り上げて寿命を延ばせるだろう、準備が出来たらまた呼んでくれ」
「香織、帰ろうかカムイを早太郎に見させているが出来れば母乳をやりたい」
立ち上がるイライザに続いて私もたちあがる
「お待ちください、既に女神様の奇跡で何年も寿命を延ばしたうえでの事なのですあと五年持てば良いところなのです」
セーラ様が引き留める
「それなら、後継者選定か?俺たちが意見を言う立場だとは思えないが、確かに勇者と聖女だが神官や司祭としての経験は無いし候補者が誰か知らないが俺も香織も直接親しい者は居ない、誰が一番強いかなら見てやれるがそんな決め方じゃないだろ」
イライザの機嫌が悪くなっていくのが分かる
「次の候補は私です、相談したいのは私の次の後継者の事です、忙しい中来て頂いて感謝しています、もう少しだけ話を聞いて頂けないでしょうか」
セーラ様も気が付いたのだろう宥めようとされた
「イザイラ、先に帰ってカムイの相手をしてあげて私は神聖魔法で帰還すればすぐに帰れるから話を聞いておくわ」
こじれると面倒だ先に帰って貰おう
「香織はお人よし過ぎる、1人で置いて行けるか一緒に神聖魔法で帰ろう」
「セーラ様よ、先に自分の引き継ぎと根回しをやってくれ俺たちは反対しない、必要なら支持もしてやる俺は元からはやる気は無いし、香織には向いていない、覗いているのは審問官様か?聞いているんだろ帰らせてもらうからな」
イライザが私の手を取る
「イライザちょっとまって、セーラ様、各地の神殿を巡って奉仕をする話ならお受けしますので日程の案が出来ましたら知らせてください、それから問題が無いのでしたら今後のために神聖魔法「帰還」の目標座標の設定をしておきましょう」
と私の意志を伝えた
「そうですね、先の事になりますが連絡しましょう、その際に各地でカオリ様から説法をして頂く事は可能でしょうか?」
セーラ様から質問があった
「あまり変な期待をしても無駄だと思うが、それぐらいなら香織でも何とか出来るだろう、香織の胎に俺の子がいる、子連れで巡礼は出来ない、やらせたいなら早めに予定を組んでくれ」
イライザも構わない様だ、セーラ様に挨拶をして「帰還」の目標座標を設定した後「帰還」でイライザと共に自分の屋敷に戻った




