魔物退治1
ミラは、朝というには少し遅い時間に起きて来て、メイドを呼びつけると、部屋に朝食を用意させた。朝はまだ頭がはっきりしていないから誰にも会いたくはないと言う事だったが、アンゲルとルーベンスは、バカはいつ起きてもバカのままだから気にすることはないのにと囁き合った。
しかし、まだレナーリアが起きていないうちに騒がれてもイベントが台無しになってしまうので、レナーリアが起きてくるまでは、ミラにも大人しくして貰うことにした。なので、ミラの朝食は、部屋に用意をさせた。朝食後は、王都を見て回りたい。
と言うので客人の到着が遅くなると言う事で、馬車の用意をしてさっさと出掛けさせた。
その間に、アンゲルとルーベンスは、客人を迎え入れる準備を着々と熟し、ランドルフの熱も下がったので、出来上がった書類の束を持って、ランドルフの元を訪ねた。
「大体さ、街中で会って誓約書を書くなんてあり得ないじゃないか。」
「ペンと紙を持って歩くランドルフ様・・・・・あの頃はあり得ませんね。もし、貴方があの時期に持っているとしたら・・・・なんだと思います?ルーベンス様」
「軽薄男が落ち歩くものなんて何もないでしょう。」
「中々に酷い言い様だね。その通りだけど。」
ランドルフは、苦笑しながら二人が用意した書類を、一枚一枚確認して頷いた。
「ケニアは怒っているよね?」
「昨日のうちに手紙は送っておいたよ。もう読んでいるころだと思うよ。ケニアだからお昼ごろには来てくれると思うけど。」
「婚姻中に次の婚姻の約束なんてしないよ。僕は、婚約の時からずっとケニアを傷付けてばかりだな。」
ランドルフは、手に持っている書類に目を落とした。
「昨日ケニアはランドルフ殿が寝込んでいる間にオルゲーニ邸の急ぎの仕事は熟していたよ。決済だけにしてくれていたから僕もアンゲルもかなり楽だった。マティス様と一緒に領地の事もいろいろと一緒にやっていたから出来たことだろうけど。」
「それなのに・・・・追い出されることになるなんて。僕が悪いんだけどね。」
「ミラ嬢を君がはっきりと拒絶をすれば良かったと思うけど、後からあの魔物が来るのだったら、結果は同じじゃないかな。そう落ち込まないで一度に魔物退治をしようじゃないか。」
「本当に申し訳ない。君には借りばかりを作っている。君の想い人をまた奪おうとしているのに。」
「このままにしておけば、僕は絶対にケニアを手に入れることが出来るけど、もし後でケニアが事の真相を知った時に『お兄様、助けてあげたらよかったのに。冷たいですわ。』なんて言われたら僕が不利になってしまうからね。フェアでいきたいじゃないですか。」
「ありがとう。それじゃ僕も頑張るよ。」
「あっ、そこはあまり頑張らなくていいですよ。」
ランドルフとルーベンスのやり取りの後、扉をノックする音がした。
「お客様がお見えです。」
三人は扉の方へ視線を向けた後、視線を合わせて、頷いた。
「さぁ魔物退治の時間がやって来たようだよ。」
☆☆☆
昼を過ぎてほぼティータイムの時間という頃に、ミラが沢山の買い物を従者に持たせて帰って来た。それに合わせたようにレナーリアが起きて来た。
食堂へ二人がやって来ると、当主席にはランドルフが座っていて、後ろにはアンゲルとルーベンスが立っていた。脇の席には老齢の女性と若い女性が座っていた。
「ランドルフ!あなたは伯母に挨拶も出来ないのですか?」
レナーリアは開口一番にランドルフを叱責した。
「こちらに来るなんて聞いていない人、ましてや出禁になっている方をどうして僕が歓迎しなければならないのですか?」
レナーリアは顔を赤くして、怒鳴った。
「わたくしは、貴方の叔母ですよ。敬意を表しなさい。」
「わたくしは、貴女の伯母ですよ。敬意を表しなさい。先ずは貴女が私に挨拶をする方が先ではなくって?」
レナーリアは老女を怪訝な表情で見た。
「お前は誰なの?」
「伯母だと言っているのに。本当に馬鹿に付ける薬はないようね。」
老女は、大きな溜息を態とらしく吐くと立ち上がり
「わたくしの名前は、エルロイド・ルチェインですよ。」
「お、お、伯母さま!」
「だからそう言ったでしょう。相変わらず、おバカなんだから。」
「な、な、何で伯母さまが!」
「それはね、助けを求められたからよ。わたくしの可愛い甥の息子からね。」
ルチェイン侯爵夫人はランドルフの方へ顔を向けるとウィンクをした。
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