病は…
ケニアがルーベンスを意識するようになってから一週間たった。
少し手が触れただけでも、最近は顔を真っ赤にするケニアが可愛くて態と指に触れてみたり、顔を覗き込んだりと、ケニアにもっと意識して貰う為に頑張っているルーベンスもまた、周りは可愛いと思い温かい目で見守っていた。
そして、オルゲーニ邸へ出向している従僕が、早朝やってくるまでは平和だった。
「ランドルフ様が高熱で寝込んでいる?医者は?」
「お医者様も原因が判らないと。薬は置いて行かれましたので、そちらを服用しておりますが、一向に下がりません。」
「持病はお持ちではないのに。どうしたことだ?流行り病などは、最近はどうだ?」
「王都での流行り病は今のところ確認は取れていないそうです。」
従僕の言葉にサボは頭を抱えた。最近はランドルフが領地経営を始めたので、ここで指示が止まってしまえば、領地の収入が途絶えてしまうし、まず、ランドルフが回復しないと公爵家の跡取りが居なくなってしまう。こういう時に限って遠縁のハイエナ達が嗅ぎつけてやって来たりするものだ。
「サボ、どうした?」
起きて来たルーベンスが声をかけると、サボは安堵の表情をする。そして、従僕の話をルーベンスに説明をすると、ルーベンスの判断は早かった。
「領地経営に関しては、僕よりもアンゲルの方が長年公爵と一緒にやって来たのだから、アンゲルを差し向けよう。ランドルフ殿はまず、何かを召し上がって頂かなくては、治るものも治らないから、商会から高栄養の果実などを送らせよう。医者もセカンドオピニオンは必要だろう。一人に押しの判断が必ずしも正しいとは限らない。ギルド経由で調べて腕のいい医師をオルゲーニ邸へ派遣しよう。僕も後で様子を見に行くよ。」
「ルーベンス様、ありがとうございます。」
「私も行くわ。」
サボがルーベンスに礼を言い終わると直ぐに少し高い声が玄関先に届いてきた。
「直ぐに支度をするわ。」
「ケニアはダメだよ。」
「どうして?」
「何の病気か判らないのに、行って移ってしまったらどうするの?」
「お兄様だって。行くのでしょう。移る可能性はお兄様だってあるじゃない?」
「男と女では、体力の差があるだろう。」
「私だって、体力はあるわ。男尊女卑何てサイテー。」
「そうじゃないだろう。」
「そうじゃないなら私が行っても問題はないでしょう。オルゲーニ邸のお仕事なら少しは解るもの。」
ケニアは、頬を膨らませた。ルーベンスは暫くケニアと睨めっこをしたが、額に手を当てて、溜息をついてから、
「無茶はしないで欲しい。」
と呟いた。ケニアは表情を明るくして、
「大丈夫よ。あなた、すぐに行くから馬車を玄関に着けておいてね。」
と言い残して走り去った。
「ケニア様にはルーベンス様も勝てませんね。」
サボが気の毒そうにルーベンスを見ると、
「ケニアには一生勝てないよ。」
と俯いたまま呟いた。
あの後すぐに外套を羽織り、馬車に乗り込みオルゲーニ邸へと入ると、ヒンヤリとした空気が、ケニアの体を突き刺した。
「この屋敷こんなに寒かったかしら?」
「薪が手に入らなくて。今年は薪の価格が高騰していて、中々手に入らないのです。」
従僕の言葉にケニアは渋顔になった。従僕に案内をされてランドルフの部屋に入ると、ほかの部屋に比べて少し暖かいが、気温的にはもう少し部屋の温度は欲しいところだった。
「貴方、少しお使いを頼まれてくれないかしら。これから手紙を書くから商会のサントスに渡してくれる?」
従僕が返事をすると、ケニアは勝手知ったるオルゲーニ邸の執務室で手紙を書いて渡した。
時間もしない間に沢山の薪が運ばれて来た。使用人たちは各部屋の暖炉を焚いていった。お陰で屋敷の中は暖かくなった。
商会のサントスからの手紙の返信には、
『オルゲーニ邸への経済制裁完了の旨承りました。』
と書かれていた。
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