恋ってなに?
執務室で机に向かいボウッとしているケニアの手に持つペン先を、ルーベンスが指を指した場所を見ると、ケニアははっとして数字を見て慌てるが、その慌てぶりにインク壺を倒して紙にしみこんでしまい数字どころか数枚報告書が、やり直しになる事態へとなった。
ルーベンスはケニアの顔を除きも見ながら、机の上に置かれたケニアの手の甲に自分の手を置いてゆっくりと撫でた。
「何かあった?」
「・・・・・。」
「僕には言えない事?」
悲しげな顔を向けてくるルーベンスに、ケニアは途方に暮れる。
なぜなら今ケニアが考えていたのは、いつからルーベンスは自分の事を好きだったのかということを考えていたからだった。そんなことを本人に聞けるのかと問われれば、とてもじゃないが聞くことは出来ない。
「・・・・明日の天気は晴れるのかと・・・。」
「明日は雨だよ。今朝アンゲルが言っていたじゃないか。港に船が到着するのに雨が心配だって。」
「そうでしたっけ?」
「船が到着することも忘れていたの?東方の極上シルクをかなり仕入れたのに?極上シルクにこだわったのはケニアだよ?」
「仰る通りです。」
「僕がケニアを好きになったのは、ケニアの母親が亡くなった時だよ。頑張って涙を堪えていたケニアをこれからは僕が守っていこうと決めたんだ。」
「そうだったの。・・・・って!えっ。なんでどうして?」
「知りたかったのって、これじゃなかった?」
「・・・・・そう、です。」
「人を好きになる瞬間何て人それぞれだよ。決まった答えがある訳じゃない。心にストンと降りてくる感じだった。僕はね。」
ルーベンスの答えがケニアの欲しい答えであったと同時に余計に判らなくなった。
「恋愛は頭でするものじゃないよ。ここでするモノだよ。」
ルーベンスは自分の心臓部分を親指で指示した。
「判らないわ。」
ケニアがぼそりと呟くと、その言葉を拾ったルーベンスは、
「考えったって仕方がいよ。だって理屈じゃないし答えなんかないんだから。それこそ、ある日突然ケニアの心の中に僕かも知れないし、僕じゃない誰かがストンと落ちてくるかもしれないよ。」
そういったルーベンスの顔を見たケニアの心臓が跳ねた。
(何これ、ドキドキが止まらないんだけど。あんまりこっち見ないで欲しい。)
ケニアは、ルーベンスから赤く染まった顔を背けた。
「悲しくなるから、そういうことはしないでね。ケニア。」
ルーベンスは、人差し指をケニアの顎に添えて自分の方へ顔を向けさせて笑顔でケニアに話すと、先程よりもケニアの顔は赤くなった。
「熱が出たのかな?」
額に触れようとするルーベンスの手を払い除けて
「レディの顔にたやすく触れてはいけませんわ。」
と真っ赤な顔で叫びながら執務室を呼び出していった。
「へぇ。そんな顔するんだ。」
ルーベンスは楽し気に呟いたが誰もいない部屋でその言葉を拾うものはいなかった。
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