恐怖の晩餐会1
夜になって、晩餐の準備が出来たと、ヴィヴィが呼びに来たので、晩餐用のドレスに着替えたケニアは食堂へ急いだ。
何時もは、テーブルにアンゲル、ヴィヴィ、サボも、着くが今日は小規模とは言え晩餐会なので、部屋の壁に控えている。
そして、主席にはいつものようにランドルフ右側にケニアケニアの正面になる左側には、ルーベンス。ルーベンスの隣には、ベル。ケニアの隣には、ハンスが座った。
「ちょっと!この席次可笑しくない?この家の主はケニアなんだから、ケニアが主の席でしょう。居候がどうして主席に座っているのよ。」
先に不満を顕わにしたのは、ベルだった。
「あー、それは。何と言いますか。面倒なので。」
「どういうこと?」
ハンスの声が低く響いた。
「オルゲーニ元公爵が他界された後、デビュタント会場で、拘束をされたランドルフ殿が、何も知らずに釈放になったので、公爵邸に戻ると誰も居らず、食事に困って此処にケニアがいると聞いて来たランドルフ殿は、まだ婚姻関係が成されていると勘違いをして、主席に着
かれてから、訂正が面倒くさくて、今日までこのままだったという事です。」
ベルは、行儀が悪いと思いながらも、テーブルに両肘をついて頭を抱えた。
「公爵様で宜しいのかしら?」
「はい。爵位継承は済んでおります。」
「そう。では。」
「えっ!爵位を継承されていらっしゃるのですか!」
声を上げたのはナナだった。ナナは、助けて貰ったケニアの恩に報いるべくヴィヴィに今日から仕事をしたいと申し出をしていて、取り敢えず壁際に控えていた。
「あぁ。釈放後に直ぐにアンゲルに手伝って貰って、爵位を継承しているよ。何あった?」
ナナはキョロキョロしながら、視線を泳がせた。解らなかった。言って良いのか。下手をしたら不敬罪になる可能性もある。
「良いんだよ。君が話したとしても罪に問われることは無いから。」
ランドルフが優しく諭したお陰でナナは楽になり、話す気になった。
「そうですか。でしたら。実は、ダンヒル子爵が、ランドルフ様は、道理を弁えていないからまだ爵位は継承されていないから裁判が終わったら、子爵がランドルフ様が勉強を終えるまで領地経営をされると仰っていらしたので。継承をされていらっしゃらないと思っておりました。」
「そういう輩がいるから、公爵位は早めに継承をされてしまうんだよ。身分は王族の次になるからね。」
ルーベンスは呆れたように返答した。ベルは、小さく息を吐いて、
「理解されたのなら良いわ。お話を戻しますね。公爵様。それで、公爵様は、どのようにされるおつもりなのでしょうか?」
「申し訳ないが、何についてなのか解らないのですが。」
「ケニアとは、離縁をされていらっしゃるのにも関わらず、いつまでも毎日食事を摂りに来るのは可笑しいではありませんか。」
「僕今、ケニアを落としに来ているんですよ。」
ベルとハンスは時が止まったように微動だにしなかった。暫くそのままでいたが、何かにはっと気が付いたように肩を揺らしてから口を開いた。
「離縁をされましたよね。結婚式では、あれ程の皆様の前でケニアを侮辱されましたよね?」
「だって。僕の奥さん凄く素敵じゃない?」
「ええ、ええ。生まれた時から愛らしい子でしたわ。」
「貴女が言うならそうなのでしょうね。」
ランドルフが頷きながら応えたが、ランドルフ以外は不思議に思っただけだった。
「だから、やり直そうと思って。」
「えっ。冗談では?」
ケニアが、問うと
「僕はいつでも本気だよ。」
笑顔で返してきた。
「と、取り敢えず義叔母さまとハンスの歓迎会とルーベンスお兄様の慰労を兼ねた晩餐会ですから。早く始めましょう。」
「義叔母様?」
ランドルフが首を傾げた。
「あぁ。義叔母さまは偶に私を娘と言いますが、正式には叔父の奥様ですので義叔母です。ハンスにも私にもご自身の子供の様に接して下さいますが、ルーベンスお兄様の母です。」
「そうだったんだ。理解したよ。」
「良かったです。」
「娘ってそういう意味だったんだ。」
ランドルフが珍しく、含みのある言い方をしたので、ヴィヴィとアンゲルとサボは目を見開いた。ランドルフとの接点において日が浅いルーベンスとケニアには解らないが、ランドルフは、元々が純粋培養なので、人に対して嫌な物言いはしない。含みを持たせるなんてことはもっともやらない行為だった。ここ数年で此処まで変わったのか。と、この成長を喜ぶべきか。はたまた嘆くべき事なのかを三人は考えていた。
「さ、さぁ、お食事をお願いします。」
この雰囲気を打破するべく、ケニアはメイド達に給仕をお願いした。察したメイド達は、いつもよりも早くテキパキと動き始めた。
察するに全員がこの雰囲気が居た堪れなかったらしい。
(これ、食事が喉を通るのかしら。味解るのかなぁ。)
ケニアは、とても不安になった。
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