お茶会
ヴィヴィはナナを連れて、メイド達も奥へと連れて行った。ケニアは一人で自室へ向かうと、ベルが呼び止めた。
「ケニア。着替えたら、一緒にお茶でもしながらゆっくりとしない?」
ケニアに微笑みかける天使の顔にケニアは、
「はい。直ぐに着替えてまいります。」
と、こちらも天使の笑顔で返した。
「家の娘、天使だわ。」
感激で涙ぐむベルにそっとハンカチを渡すルーベンスには、ハンスが、
「やっぱりお兄様は、完璧な人ですね。」
と絶賛をする。
「完璧だったら、今日の日なんてなかったよ。」
ルーベンスは、ぐったりと肩の力を落とした。ルーベンスの肩に手を置いて、
「本当にありがとう。助かったよ。」
と明るく語り掛けるランドルフには、ベルとハンスがキツイ視線を送る。
「いつお帰りになるのかしら?」
「公爵家を放置しても良いんですか?」
「まだ帰れないんですよ。今法務省が、立ち入りを行っているので、早くても二日後だっけ?」
ルーベンスに日にちを問うと
「早くて二日ですね。」
とルーベンスが返した。
「二日もいるの?」
「お姉さま大丈夫かな。」
「あっ。それは大丈夫だよ。離婚をしても、毎日一緒に朝食は摂っていたからね。」
ランドルフが笑顔で、返すと
「離婚をした人が何で元嫁の家に押しかけているんですか!」
ベルが激怒した。
「母上。落ち着いてください。ほら、ケニアは支度が早いから、早くしないとケニアを待たせてしまいますよ。」
「あっ。それはダメよ。娘を待たせるなんて。ねぇどこへ行けばいいの?」
体を左右に動かしながら、行き場所が解らなくて、行動が可笑しいが、ルーベンスは冷静に
「僕がお連れしますよ。さぁ行きましょう。」
とスムーズにエスコートを始めた。ベルが手を取り、行先の方へ体を向けてから、ランドルフに顔を向けて、そこから移動するように促した。察したランドルフは、借りている客室へと踵を返した。
「義叔母様。お待たせしました。ケニアは嬉しそうに微笑むとベルも優しい聖母のような微笑みを返す。
「ケニアを待つ時間なんか一秒もなかったわよ。」
「そうですよ。お姉さま。」
「ハンスも良く来てくれたわね。叔父様とお父様はお元気かしら?」
「エドガーもお兄様も一緒に来るつもりだったみたいだけど、急ぎの仕事が入ってしまって。少し遅れて来る事になると思うわ。」
ベルは、お茶が用意された温室の応接セットの長ソファに腰かけてケニアを自分の横へと促す。ケニアはベルの横に座り、ハンスとルーベンスは向かいの長ソファに腰かけた。ベルが、ケニアに微笑みかけると、ケニアは苦笑いの顔を抑えたつもりで、平静を装っていた。
「叔父様もお父様も、私のせいで忙しい思いをさせてしまいますね。」
「そんなことは無いわよ。ケニアが色々考えてくれるから、今まで以上に領地は潤っているのよ。もし災害が起きたとしても、今なら5年は持ちこたえることが出来るわよ。本当に素晴らしい娘だわ。」
ベルはケニアを頭から抱え込んで髪を撫でる。
「義叔母さまは私に甘すぎますよ。」
「娘に甘くはない母親なんかいませんよ。」
元々ケニアに甘かったベルは、ある時から、偶に娘と呼び今まで以上に甘々になっていた。
「それで、どうだったの?ケニアにけがをさせたというバカ娘は懲らしめてやったのかしら?」
ルーベンスに睨むような視線を送ったベルに
「抜かりなく。後で詳細にご報告を致しますよ。伯父上と父上がいらっしゃったら。」
「なら、良いわ。出来れば今知りたいけれど、お義兄様より先に聞く訳にはいかないものね。」
ベルはすました顔でお茶を口にした。
「お姉さまは帰って来ないの?」
「此方で商会を立ち上げてしまったから、中々難しいわね。」
「商会なんか、下に任せて良いじゃない。私はもっとケニアと一緒に居たいのに。」
「僕もお姉さまと一緒に居たいです。出来れば、僕は王都の学園に通いたいから此処から通っちゃダメですか?」
ハンスが、上目遣いに瞳を潤ませながらケニアを見ると、ケニアは顔を紅くしながら、
「王都の方がこの先領地経営とかを考えると、ハンスにはその方が良いかも知れないわね。」
ハンスにとって良い返事が返って来た。それを逃すかとベルも追随する。
「ハンスがこちらに来るなら、私も、私も一緒にお世話に来るわよ。」
「でも、義叔母様、叔父様を放置してしまっていいの?」
「え?エドガーの事を言って居るの?私はエドガーに放置されているから問題ないわよ。だからいつもハンスと一緒なのよ。ねぇ。」
ハンスに振ると、ハンスも頷いた。
「父上も叔父上も多忙ですから。義叔母上がいつも母代わりになってくれています。本当にありがとうおございます。義叔母上。」
「まぁ。ハンスったら。」
クスクスと笑い合う二人に背筋にゾワリと嫌な寒気をルーベンスは覚えた。つい先程まで三文芝居を見せられていたのに、此処でも三文芝居を見ることになるとは思わなかった。
「二人とも本当にそのつもりで来るんだよね?」
低い声でルーベンスが問うと
「当り前ですよ。お兄様。僕を疑うんですか!心外です。お兄様は僕の味方だと思っていたのに!」
「そうよ!ルーベンス。酷いわ。ハンスも私も真面目に話をしているのに。」
ルーベンスは面倒くさくなって両手を上げて降参のポーズを取った。
「じゃぁ叔父様とお父様がいらっしゃったら、王都の学園へ通うお話を私からしますね。義叔母様は、母親代わりという事ですよね。」
「ええ。そうよ。」
「解りました。ハンスと義叔母様が一緒に暮らすなんて楽しみだわ。」
ケニアは、直に喜んだ。ハンスとベルに交互に胡乱な視線を向けるルーベンスを二人は全く気にしなかった。
「これも、お兄様の為です。」
ハンスが呟いた声をルーベンスは拾って、ハンスの横顔に視線を送ったが、ハンスは全く気にしていなかった。
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