表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旦那様私達すでに離婚しております  作者: 志馬
法廷より怒気を込めて
54/77

法廷劇場4

法廷劇場閉幕です。

「お久しぶりね、エメ。あら、いやだ。何てお顔をされていらっしゃるのかしら?まるで、死者でもご覧になったお顔みたい、ね。」


モニカは自分を睨んでくるエメに対して不敵な笑みを浮かべながら、挑発した。


「あ、貴女は、亡くなったって!新聞に書いてあったわよ!ラビィも!」

「何よ。生きていたら悪いの?」


ラビィもエメを睨みつけながら応戦した。


「新聞に死んだって書かれていたら誰だって死んだと思うでしょう!」

「だってしょうがないじゃない。私たちを殺そうとする人達が居るんですもの。生きるためには、身を隠すでしょう。」


エメは、眉間に濃い皺を作って歯ぎしりをした。その表情は社交界で可愛いなどと言われていた女性とは間違っても同じ人物とは思えない程だった。


「誰が貴女方を殺すというのですか?」


頬を引き攣らせながらダンヒル子爵はなるべく平静を装うように努めた。

「先程裁判官にも拝読して頂いた手紙にはモニカ嬢とラビィ嬢の殺害依頼がされていました。これを暗殺ギルドへ持ち込んだのは、先程のエメ嬢の侍女ナナさんで間違いありませんか?」

「違います!私は、お嬢様の護衛をお願いするようにと旦那様からの依頼でギルドへ行きました。人殺しの依頼なんかしませんし、頼まれてもそのような事でしたら受けません。」


ナナははっきりと否定をしたが、ルーベンスからの質疑で揺らぎだした。


「成程。では、伺いますが、手紙の中身をご覧になりましたが?」

「主に託された手紙の内容を見る事など致しません。」

「中身を見ずに何故主が言った事が書かれていると断言できるのですか?」

「それは・・・・主を信用しているからです。生まれたばかりの子を失って生きる気力を亡くしていた私にお嬢様の乳母をさせて下さり、生きる意味を下さったからです。」

「だからと言って手紙の中身が必ずしも言われたことが掛かれている証拠にはなりませんよ。」

「証拠・・・・・。」


証拠と言われてしまうと、自信はない。


「ではこちらの文字に見覚えはありませんか?」


ルーベンスは、暗殺依頼の手紙をナナに見せる。ナナは手紙の内容と文字を見て驚愕する。ダンヒル子爵は悪筆で、文字には特徴がある。その特徴が全て出していて、慌てて書く時の右上がりの癖まで出ている。そしてそこには、モニカとラビィの殺害依頼が書かれていた。


「う、うそ・・・・・うそ、でしょう。」


ナナの声は震え出した。


「ナナさんを拝見する限り、この手紙はダンヒル子爵の手紙で間違いはないようですね。では、何故モニカ嬢とラビィ嬢をダンヒル子爵が殺さなければならなかったか、です。」

「それは、私たちに証言して欲しくはなかったからでしょう。エメは一度もランドルフと床を共にしたことがないって。」


モニカは立って胸のあたりで腕を組み、座るエメを見下ろした。その態度にエメは益々怒りを露わにした。


「私も証言してあげるわよ。ランドルフは自室に入ると鍵をかけて寝てしまうので、入ることが出来なかったわ。彼は夜の間は、独身の時にもカギはかけていたわよ。従者が起こすために鍵を開けるまではね。知っていたはずでしょう。何をしらばっくれて居るのよ。しかもあなたのお腹の子はランドルフの子じゃなくて、多分騎士見習いの可愛い感じの子でしょう。最近のお気に入りで、同伴宿屋に一緒に泊まっていたじゃない。入り口で何度も私と会ったでしょう。」


ラビィは口角を上げて、獲物を追い詰める様に突き付けた。


「ち、ち、違うわ!嘘ばっかり言わないでよ!」

「じゃぁ誰の子よ。ランドの子だというなら貴女こそ証拠を出しなさいな。」

「う、生まれたらわかるわよ。」

「無理じゃない?貴女のお気に入りの騎士見習いは目がシトリンだったわよ。ランドルフの目の色知らないの?ランドルフはアイスブルーの瞳で彼はシトリンの瞳ランドルフはプラチナブロンドの髪色、彼はハニーブロンドの髪色。光を当てたらすぐに解るわよ。」

モニカとラビィは追撃を止めない。エメは黙るしかなくなってしまった。


「それで、今回オルゲーニ公爵家に乗り込んだ理由ですが。今のお話ですと、乗っ取りとなりますが。」


裁判官が、裁判の趣旨に話を戻した。


「違います!裁判官。私のお腹の子供の父親はランドルフです。証拠がありませんわ。彼女たちは、ランドルフの妻になる私に嫉妬をしているんですから。」

「するわけないでしょう。私には愛しの旦那様がいるというのに。なんで元恋人の愛人の貴女に嫉妬をするのよ。しかも妻の座って。後妻じゃない。馬鹿じゃないの?今の私の名前はね、モニカ・フィンデルというのよ。」

「う、嘘よ!フィンデル伯爵が何で!」

「そういえば、貴女私の旦那様にも、ちょっかいを出していたらしいわね。身の程知らずが。」


モニカは、害虫を見る目でエメを見た。エメは一瞬怯んだ。が、直ぐに反論した。


「フィンデル伯爵がどの位の方かは知らないけれど、ランドルフの方が地位は上なんだから!」

「だから、今ランドに関係はないって裁判を起こされているのが解らないの?その頭の中には何が入っているの?」


モニカは、残念な子を見る視線でエメを見た。エメは怒りのボルテージが上がり過ぎて、怒鳴り始めた。


「煩い!煩い!煩い!何なのよ!私はランドルフと結婚をして、オルゲーニ公爵夫人になるのよ!」

「静粛に。静粛に。」


裁判官が二回繰り返した。


「裁判官。先程の階段から元妻に突き落とされた事ですが。」

「あぁ、もうそちらも調書で理解をしたから大丈夫だ。もし、エメ嬢の言う通りにケニア令嬢に突き落とされそうになったのであれば、ケニア令嬢の怪我は顔や胸にあったはずだ。しかし、調書を見る限りケニア令嬢が、突き落とされたのでなければ辻褄が合わない。後頭部の怪我、背中や脹脛の怪我。これらは、逆にエメ嬢が突き落とした可能性しか見当たらない。」

「ありがとうございます。では、エメ嬢のお腹の赤ちゃんの父親をお呼びしても宜しいですか?」


裁判官はゆっくりと深く頷いた。ルーベンスは護衛兵に頷いて見せると、扉を開けて、入る様に促す。入って来たのは、細身ではあるが、しっかりと鍛錬をされた男性だった。


「失礼いたします。私は、第三騎士団に先日配属をされた、ドイルと申します。平民です。」


騎士であるのに態々平民と自分の立場を口にしたことが傍聴席の平民たちには理解が出来なかった。


「ドイル殿、貴方はエメ令嬢とはどのような関係ですか?」

「僕と彼女は恋愛関係にありました。彼女と逢瀬を繰り返しておりました。彼女に釣り合う男性になりたくて、鍛錬をしてこの度配属になり、彼女を迎えに行く所存でした。」

「う、う、嘘よ!嘘を言わないで!」


怒鳴るエメに裁判官は睨みながら、


「この次、同じ事をしたら退廷して貰いますよ。」


と冷たく言い放った。顔を真っ赤にしたエメは俯きながらドレスを両手で握りしめた。


「貴方は、あそこにいる女性をご存じですか?」

「はい。お恥ずかしいお話ですが、同伴宿の入り口で何度かエメと視線で会話をしていたり、黙っていてよ。という会話をしていたのを覚えております。」

「黙っていてとは、何に対してでしょうか?何方が言ったのですか?」

「エメが彼女に耳打ちしていました。何を黙っているのか知りませんでした。」

「では貴方は、エメ嬢がランドルフ・オルゲーニ公爵とお付き合いがある事をご存じでしたか?」

「いいえ。彼女は純真で、ほかの男性とは一切関係はなく、僕が平民だから、体を重ねて子供が出来れば、御父上を説得しに行こうと言ってくれていました。ですからほかに男性がいる訳がありません。」


裁判官はゆっくりと頷いてから立ち上がり後方にいる国王を振り返って頭を垂れた。


「もう良い。終わりだ。ダンヒル子爵は爵位没収だ。それから娘のエメと父親のダンヒルは皇室侮辱罪で牢屋へ連れて行け。」

「御意」


裁判官が、短く応えると、ダンヒル子爵は手を伸ばして待って!と言い出した。


「初めに言いましたよね。虚言は侮辱罪に任と。」

「上告します!」


得意げにダンヒル子爵が応えると裁判官はキョロキョロと辺りを見回した。


「貴方の弁護士はいつ来るのですか?」

「そんなものは、必要ない!」

「あぁ。でしたら上告は無理ですよ。弁護士にのみ上告が出来ると初めに申し上げましたよね。」

「そんな話は聞いていないぞ!」

「裁判官。ダンヒル子爵親子は、遅刻をして来たのですよ。」


あぁ。と裁判官は小さく呟いたが、ダンヒル子爵の怒りは収まらなかった。


「すべてお前のせいだ!ナナ馬車の手配もせずに、自分だけ先に来おって!」


ナナは俯いて体を細かく震わせていた。


「このクズが!」


ダンヒル子爵が、そう怒鳴り付けると、ナナは顔を上げた。瞳からは雫が次から次へと流れていた。


「わ、私はずっと仕えてまいりました。今は無給です。それなのに。食費やその他もろもろ私が今は養っていたのに。なんでそこまで言われなければならないのですか!」

「顔を見れば、金、金と煩い奴め!じゃぁ退職金代わりにくれてやるわ!」


ダンヒル子爵は、カバンから巾着袋を取り出すと、巾着袋から金貨1枚をナナに投げつけた。その巾着袋の紋章を見てルーベンスが、警備兵にすぐさま指示を出してダンヒル子爵の手首は警備兵に掴まれた。


「それはオルゲーニ公爵家の紋章ですが、何故あなたが勝手にそのお金を使っているのですか?」

「知らん!これは私のだ!」

「いいえ。それはオルゲーニ公爵家の執務室の机のカギがある引き出しに緊急時様にと保管されているものです。勝手に開けて使ったのですか?」

「ひ、引き出しに鍵は掛かっていなかった!だから違う!」

「引き出しの鍵の存在を知っている時点でアウトでしょう。」


ルーベンスが冷たい視線をダンヒル子爵に投げた。


「罪状がまた増えましたな。」


裁判官が、はっきりとダンヒルにも解るように告げた。ダンヒル子爵とエメは警備兵に連れていかれた。エメもダンヒルも喚き散らしていたが、傍聴席からは呆れる声がちらほらと上がっていた。


「エメ令嬢の子供は、オルゲーニ公爵家とは何ら関わりがなく、不当に占拠をしていたダンヒル子爵はオルゲーニ公爵家を乗っ取る意思が明確にあったとして取り潰しという判決になりました。異議のある方は申し出て下さい。なければこれにて閉廷いたします。」


無言だったために国王が立ち上がり席を立つと、宰相も後に続き、王たちの退出が確認されると、裁判官と陪審員も退出していった。


「終わった。帰ろうか?」


苦笑を浮かべるルーベンスにケニアは笑顔で応えた。

床に座り込んでいるナナを見てケニアは歩み寄り、手を差し伸べた。


「家で働いてください。働く中でやりたいことが出来たら、そこへ行けば良いと思います。」


ナナは止まらない涙を隠しもしないでケニアをただ、ただ、見つめて手を取っていた。

ヴィヴィ達の馬車にナナも同席させて、来た時と同じ馬車に乗り込み帰路についた。

ケニアの屋敷玄関扉が勢い良く開くと、中からは、ルーベンスの母親ベルとケニアの弟ハンスが駆け寄って来た。


「お帰りなさい。待っていたよ。どうだった。」

二人はケニアとルーベンスに微笑むとその後ろにいる人物を睨み始めた。


「何故にあなたが此処に?」


ベルの声は地を這うように低かった。


「今お世話になっております。」

「離婚してもなお、付き纏うの?信じられない。」


ベルとハンスは、ランドルフを受け入れなかった。当たり前だが。ランドルフは、苦笑するだけだった。

読んで頂きありがとうございます。


ブックマーク、☆、いいね押して頂けたら嬉しいです♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ