法廷劇場1
「それでは、被告人前へ」
裁判官が、被告人を呼び出すが、誰も動かない。
「被告人は前に出なさい。」
再度呼び出すが、やはり動かない。裁判官は、ダンヒル子爵の方を向いて声を掛けた。
「被告人、ダンヒル子爵前に出なさい。」
名前を呼ばれて、驚いたようにダンヒル子爵は裁判官を見た。
「私は被告ではありません。被告はランドルフ・オルゲーニ公子でしょう。」
間違いを正すように裁判官に語り掛けるが、裁判からは、冷たい返答が帰って来た。
「ダンヒル子爵。貴方が起こした裁判ではありませんよ。オルゲーニ公爵家から、公爵家乗っ取りの裁判を起こされてあなたは今日召還をされたのです。勘違いをされては困ります。前に出なさい。出来ないのであれば、本法廷は終了となりますよ。勿論あなたの敗訴で。」
敗訴と言われて、慌ててダンヒル子爵は前に出た。
「貴方は、オルゲーニ公爵邸へ不当に居座り占拠をしてランドルフ・オルゲーニ公爵を追い出したことを認めますか?」
「異議あり。私たちは、不当に占拠はしておりません。そもそも、我が娘エメはオルゲーニ公子の子供を身ごもっております。だとするならば、父親として子供の養育の為に婚姻をして夫婦となり娘と子供を養う義務が生じます。その為に私たちは、公爵邸へと移り住んだのです。」
背を逸らして胸を張って見せるが、ダンヒル子爵の大きなお腹を誇示しているようにしか見えなかった。
「ランドルフ・オルゲーニ公爵異議はありますか?」
ルーベンスは、手を上げて、異議を唱えた。
「ランドルフ・オルゲーニ公爵代理人ルーベンス・カナガンです。先ずお腹の子供については、公爵自身、身に覚えのない子供となります。その為に公爵自身否定をされて、屋敷から出て行くように話をされている。私も代理人指名を受けてから、退去を求める書状を法務省経由でお送りしております。証拠となる書状は公爵、法務省にも写しがあり、そちらを第二条に基づき提出いたします。」
ルーベンスは、裁判官に書状の写しを提出した。
「解りました。・・・・・オルゲーニ公爵はこの時期ご結婚をされていらっしゃいましたね。白い結婚として、神殿から許可を得て無効となっておりますが。此方に間違いはありませんか?」
「はい。間違いはありません。」
「では、その時期は、公爵自身屋敷には寄り付かず、ラビィ・ハント令嬢とエメ・ダンヒル令嬢とマナーハウスにて生活をされていたことは王都の誰しもが、知るところではありますが、こちらも間違いはありませんか?」
ルーベンスはランドルフには一切目もくれず裁判官の顔だけを見ていた。
「間違いはありません。その為に白い結婚を認められました。」
「そうすると、世間一般的には、男女が同じ屋根の下に住んでいるとなると、普通は男女の関係になっていると思うのが当たり前ですよね。でしたら、エメ令嬢のお腹の子供がオルゲー二公爵の子供であると思われるのは当たり前の事ではないでしょうか?」
これは裁判官ではなく、陪審員から飛んで来た。
「そうですね。しかし、それは双方ともにお互いだけであったのならば、そのように思われるでしょう。」
ルーベンスが、その後を続けようとすると、ダンヒル子爵が遮った。
「我が娘はそんなふしだらな娘ではありません!あの、ランドルフ・オルゲー二公子に騙されて、純潔を散らした挙句に捨てられたのです。それを証明するために、証人を用意しました。」
「お待ちください。ダンヒル子爵。今は弁護人の証拠提出の時です。貴方の番までお待ちください。」
ルーベンスは、ダンヒル子爵を睨めながら、証拠の書類を手に持っていた。
「此方の書類は、私が前オルゲーニ公爵で在られるマティス・オルゲーニ公爵から依頼をされて、ギルドに調査をして貰っていた報告書になります。マティス・オルゲーニ公爵は、生前ランドルフ公爵に『外で子供を作ることはならん。』と仰っていらっしゃいました。しかし、離れていては、それを確認する事も出来ない為にこうして依頼をされたしだいです。中をご覧ください。」
ルーベンスは裁判官に書類の束を渡す。裁判官は、陪審員にも書類を分けて、全員で中を精査した。
「これは・・・・。」
全員が絶句していた。ダンヒル子爵も書類の中身を理解した。娘が奔放であったことは母親を見れば理解できることで、幾らふしだらでは無いと言ったところで、未婚の女性が妻帯者と同棲していること自体が、世間一般的にはふしだらと言われてしまう行為である事は誰の目にも明らかであった。今までは、女性に目が行くというよりもランドルフの奔放さが目につき、女性は被害者とみられる方が強かった。結婚式の無礼も誰もが知る話となっていたから。
「エメ令嬢。お腹の子供は、ランドルフ公爵のお子様で間違いありませんか?」
「間違いありませんわ。そんなに責めないで下さい。」
エメはハンカチを取り出して、眼から出てくる雫を拭い始めた。
「だからこそ、元奥様には嫌がらせを沢山受けましたし、命まで狙われたというのに。疑うなんてあんまりですわ。」
か弱そうな演出は傍聴席には、しっかりと届いていた。しかし、裁判官と陪審員の席には、冷たい空気が流れていた。裁判官は後ろを向いてガスト宰相にルーベンスが提出をした書類を渡す。ガストは、国王にその書類を渡すと、国王は、順に捲りながら確認をしていく。
「では、エメ令嬢ダンヒル子爵と変わり前に出て下さい。」
裁判官の言葉にダンヒル子爵は元の席に戻りエメが前に出た。
エメはまだハンカチを握りしめて、俯いていた。
「エメ令嬢。オルゲーニ公爵元細君から受けた嫌がらせとはどのような事でしょうか?」
エメは裁判官からは見え難い角度で口角を上げた。
「はい。先ず、欲しいドレスを作るにもランドルフ様が一緒でなければ作ることが出来ませんでした。ランドルフ様のお金は元奥様が握っていて、ランドルフ様は一切自由に使うことが出来ませんでした。ブティックも出禁にされましたし、一番酷かったのは、オルゲーニ公爵邸で私奥様に階段から突き落とされそうになり大けがをしそうになったこともあるのです。」
傍聴席がざわついた。
「そちらに関しては、衛兵からの事情聴取の書き取りを証拠として提出させて頂きます。」
ルーベンスは、すかさず放った。
「此処は私の方から、証拠書類と共にご説明をさせて頂きたいのですが、宜しいでしょうか、裁判官長そしてこれに関しては、傍聴席の皆様にも複製をご覧頂きたい。」
そういうと、警備兵に種類の束を渡して傍聴席にも配った。
「では、皆様よろしいでしょうか?」
ルーベンスの言葉に全員が頷いた。
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