開廷2
実はこの章が大好きです
法廷へ入ると、被告人席、被害者席と弁護人席、証人席と傍聴席と分かれていた。
上座には当然国王が座る席が階上中央に作られていて、その下に裁判官と陪審員の席が設けられていた。そして、そのすぐ下に左右側に机と席があり、ルーベンスとランドルフは、右側に座っていた。反対側には誰も座っていない。という事は、そこにはダンヒル子爵親子と弁護士が座るであろうことが予想される。
ケニア達は、同じフロアでも柵の向こう側に決められた席に座ることになっていた。
左端からサボ、アンゲル、ヴィヴィ、ケニアと座った。ケニアの隣には一席空いていた。
ルーベンスは、弁護士席からケニアを見て、微笑んだ。ケニアはルーベンスの優しさを感じ取って、微笑み返しをした。安心したルーベンスは、書類を取り出してランドルフと打ち合わせを始めた。ケニアは俯いて小さく息を吐き出した。俯いた視線の先に靴が移り込んだので、顔を上げると、母親ぐらいの年齢の優しいまなざしをした女性が映り込んだ。
「此方証人席で宜しかったかしら?」
「はい。」
短く応えると女性は安心したように微笑む。そしてゆっくりと腰かけた。品はある女性だが、貴族のそれとはまた違うものを感じた。
「貴女も証人として呼ばれたのかしら?」
女性がケニアに語り掛けた。
「はい。」
「お嬢様の為に、ありがとうございます。」
女性は、ケニアに頭を下げたが、ヴィヴィは、警戒心を剝き出しに女性を見た。ヴィヴィの視線に気が付いたケニアはヴィヴィの手の上に自分の手を乗せて、窘めた。
「他にも証人はいらっしゃるのでしょうか?」
ケニアが問いかけると、女性は周りをキョロキョロと確認をしながら、ケニアに耳打ちをした。
「主が申しますには、モニカ様やラビィ様が毒婦に殺害されてしまった為に皆様尻込みをされて、証人をお断りになったそうですわ。」
「毒婦ですか?」
「ええ、大きな声では申し上げる事は出来ませんが、オルゲーニ小公子様の元奥様がモニカ様とラビィ様を毒で殺害されたそうなのです。家のお嬢様も標的になったそうで。でも、主が機転を利かせて下さったので、事なきを得たのです。本当に恐ろしい女性です。」
ケニアは自分の事を言われているのは解っているが、全く身に覚えがない事なので、馬が星を見る様に女性を見ていた。漏れ聞こえていたヴィヴィは逆に怒っていて、隣に座っているアンゲルに何やら耳打ちをしていた。アンゲルはヴィヴィの話を聞き終えると、メモ書きを始めて、サボに耳打ちをして渡した。サボは頷くと直ぐに席を離れた。
ルーベンスはサボが席を立った時に視線をサボに向けた。サボが気付いて合図を送ると、廊下へと出て行った。その間もずっと女性は話きりだった。主にオルゲーニ小公爵の元妻の話だった。
(私って、こんな風にエメ様に言われていたのね。どんだけ性格の悪い女性なのかしら。)
聞いていて、少ししんどくなってきた。
「主は今回必ずや勝利します。その暁には、何も物事を知らない小公子様の代わりにご主人様が代理公爵をされるそうです。代理の間に小公子を教育される予定らしいですが。少しおバカさんのようですから、どのくらい教育に時間が、かかるか解りませんわね。」
頬に手を当ててホウっと困ったように溜息を吐く。
聞き耳を立てていたアンゲルは、
「既に自分でちゃんとやっている。誰が教育したと思っているんだ。」
と呟いたが、一人劇場に入っている女性には届かなかった。
「そう言えば、貴女様はどちら様でいらっしゃいますか?」
女性にケニアが訪ねると、気が付いた女性は
「そうですわね。失礼いたしました。私、ダンヒル子爵令嬢の乳母で今は侍女をしておりますナナと申します。」
ナナが名乗り終わると、後ろの扉が開いて傍聴席に人が流れて来た。警備兵が数人扉の前に立った。傍聴席の人たちは警備兵を見ながら恐る恐る席に着く。くじ武器の時に何かあったのかも知れないと予測が出来てしまう程の脅えようだった。ケニアも名乗ろうとしたとき、扉が開いて裁判官と陪審員が入って来た。それぞれが自分の席へ着くと、後ろを向いて頭を垂れた。
階上の扉が開き、宰相のガストが入廷して来た。
「国王陛下の御成りです。皆の者頭を垂れよ。」
王錫を携えた国王がゆっくりと歩み自身の席の前に立った。
「皆の者頭を上げよ。」
ガストの声に皆が正面を向いた。
「これより開廷をする。この法廷内では、虚偽をした者は、王家侮辱罪に値することをしっかりと認識せよ。また法廷を侮辱するような行為を行った者は直ちに退席をさせる。判決に不服がある場合には、弁護士を通して異議申し立てをするように。」
「御意。」
全員が誓いを立てたところで裁判官は気が付く。
「ダンヒル子爵とエメ令嬢はどうなさいましたか?」
裁判官の声に全員が、ダンヒル子爵が座るべき位置であるダンヒル側の席を見るが、空席だった。国王入りも後に入廷する事になる。バーンと勢いよく扉が開き、ダンヒル子爵とエメが現れた。
「遅刻ですよ。子爵どうなさいましたか?」
「いや、辻馬車が中々来なくて。」
「お父様が予約をしていなかったからでしょう。」
「違う!ナナが手配しなかったからだ。ナナの奴はどうした。」
国王がいるというのに全く気にも留めずに、証人席を探していた。エメが子爵よりも先に気が付いて、隣に座っているケニアにも気が付いた。エメはケニアを階段から突き落としている。その時の顔はエメの中にしっかりと記憶されていた。
「ナナ!何でアイツの横にいるのよ!」
エメが叫ぶと、裁判官が態と咳払いを二回した。
「ダンヒル子爵エメ令嬢。陛下の御前です。宜しいですかな?」
やっとここで、国王よりも後に入廷していた事に気が付き、腰を折った。
国王は自身の席からダンヒルを睨み付けた。
「開廷“!」
ガストが声高々に叫んだ。
読んで頂きありがとうございます。
ブックマーク、☆、いいね押して頂けたら嬉しいです♪




