開廷1
モニカ達を匿ってから、一か月の間に十分な証拠や証人も集めることが出来て、やっと今日は、裁判の日となった。
朝食の用意がされている食堂は、なんだか今日に限って、いつもとは明らかに違うテンションだった。これは、いつもと違う事が行われることに対しての脳内ドーパミンが明らかに過剰に出ていることを示していた。
「出発時間は何時だったかしら?」
「開廷が十時だからその前には行かないといけないから九時には出立をしたいよね。何が起こるか解らないからね。」
ケニアの問いにルーベンスが答える。
「私たちは、練習した通りの発言を心掛けなくてはなりませんわね。」
「お嬢様に対していかに失礼であったかなんて、いくらでも応えられる。」
ヴィヴィの発言にサボは、胸を張って答える。
「僕の事は余り虐めないでくれると嬉しいかな。」
ランドルフが、苦笑を浮かべながら話すと、
「出来る限り胸には留めておきますが、法廷の空気によっては、約束は出来ませんね。」
アンゲルが冷たく応える。
「今日一日で、片を付けたいと思います。公爵家を乗っ取るなんて、言語道断です。早く公爵にはご自宅へ帰って頂かなくてはいけませんしね。」
ルーベンスが、ランドルフに笑顔を向ける。
「僕は、もう少しこの環境でいても良いと思っているよ。最愛の人と一緒に暮らせるなんて、素晴らしいじゃないか。」
「ずっと放置していた人でしたよね。」
ランドルフの頬が引き攣る。
皆和やかに見えて、可笑しなテンションで、何となく会話も落ち着かない。
会話をしながら食事をしていたせいか、いつもよりも早くに食べ終わった。
全員が一度自室に戻って、約束の九時には玄関先に集まっていた。
馬車は二台用意されていて、アンゲル、サボ、ヴィヴィが一台に乗り込み、ケニアとルーベンスとランドルフで同じ馬車に乗り込んだ。
この移動時間も何かを仕掛けてくるかも知れないと言う警戒心は捨てなかったが、予想していた事態は全く起きなかった。
王宮に着き、法務省の棟へと馬車を進めたが、喧騒が聞こえて来て、ケニアは少し窓のカーテンを開けて片目を外へと向けた。
法務省の入り口には、貴族や平民たちが押し寄せていた。
今日の法廷は、オルゲーニ公爵家乗っ取りの裁判だけである。という事は、この人たちは、傍聴人という事になる。
「凄い人ですよ。」
ケニアが小声で言うと、ルーベンスも覗いた。
「法務省の中から人が出て来たから、これから傍聴席のくじ引きが始まるよ。」
先頭の人が箱の中に手を入れて、引き始めた。外れの人は、貴族であろうと平民であろうと、護衛兵が、腕を持って外へと連れ出して行った。
「あれ位しないと貴族は平民から座席を奪いかねないからね。」
「公平なのね。」
「法の元には貴族も平民も平等だからね。そうでなければ、法の意味を持たない。」
ルーベンスの言葉にケニアはコクコクと頷いた。
馬車は、正面ではなく、裏口へと向かった。正面には傍聴人が押し寄せていて、その中にまぎれて、ケニアやランドルフに危害を加えられては困るから、裏口をルーベンスが法務省へ依頼していた。
先に着いていたヴィヴィ達が待っているとダンヒル子爵たちと顔を合わせる危険性があるために、先に通された部屋へ向かう様にルーベンスから指示が出されていたので、顔を伏せて足早に移動していた。ケニアとルーベンスとランドルフもフードを被り人相が解らないように俯きながら移動をした。
開廷15分前には入廷することが出来るので、それまでは控えの部屋でゆっくりとお茶を頂くことにした。ヴィヴィが持参したティーセットを出して、全員のお茶の用意をした。
控えの部屋の茶器に毒が仕込まれては困るので、此処でも細心の注意を払った。
ヴィヴィのお茶を飲み気持ちを落ち着けてから、ルーベンスが、ゆっくりと皆の顔を確認しながら、
「それでは参りましょう。」
と皆を法廷へと促した。
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