放棄したもの。拾うもの
明日10時頃更新予定です。
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「おはよう。今日も良い朝だね。」
今朝も当たり前のようにランドルフが食堂に来ていた。
ルーベンスはあからさまに嫌な表情をする。ケニアは無表情でランドルフを見ている。
「言い難いのですが、私たちは離婚をしております。離婚した相手の家に日参するのは如何なものでしょうか?」
「なんで?だって、夫婦だったんだから良くない?」
ケニアは世間というものはそういうものなのだろうか?と不思議に思い首を傾げる。
「良い訳ないじゃないですか!世間的にケニアが笑いものだ!」
ルーベンスは溜まらずに怒鳴り付ける。
「問題ないよ。また入籍すればいいじゃないか。」
「嫌です。」
「さぁ、朝ご飯をみんなで食べよう。皆これから仕事なんだから、エネルギーは大切だよ。」
「ルーベンス様の仕事場は、公爵家ですよ。」
「朝は皆と一緒が良いよね。」
「・・・・・・」
何を言っても暖簾に腕押しなので、皆が着席した。そしてルーベンスが座る場所は初日に座った当主席。ここはどうしても譲らなかった。
「僕は今日比較的午後は時間があるから、奥さんの仕事を手伝おうか?」
全員の視線がランドルフに向いた。
「領地管理とは異なりますから、大変だと思いますし、私たちは、離婚をしておりますので、近しい関係でもありませんし、ご遠慮いたします。」
「僕の奥さんの名前はなんていうの?」
「「「「「・・・・・・」」」」」
何度となく名前を聞かれても誰も答えることはしない。何故ならその機会をランドルフ自身が潰しているから。知りたかったら、自分で調べろ!と全員が思っている為に教えてはくれない。
「冷たいなぁ。」
「此処で毎朝朝食を食べている時点で、優しいと思いますよ。」
ヴィヴィが視線を食事に向けたまま言い放つ。
「ヴィヴィは、昔はそんな言い方しなかったのに。」
「そこはご自身の胸に手を当ててよくよく考えてみて下さいませ。」
「うん。思い当たることが多すぎてダメだね。どれかなんか解らない。」
「大丈夫です。全部ですから。」
「そっかぁ。じゃぁこれからは信用を取り戻すように努力をするよ。」
「・・・・・」
「今日私はルーベンスお兄様と一緒に商会へ行って来ます。あと、昨年の投資事業で一件、鉱山の掘削事業が、何かトラブルがあったようですから、来週には、現地へ視察に行って来たいと思います。アンゲル後で投資金額を増額するか、削減するところがあるのかを検討したいので、もし資料を作れたらお願いね。」
「商会に行くの?僕も行きたいなぁ。」
「・・・・・」
「あっ。鉱山の現地視察も僕一緒に行こうか?」
「僕と彼女で行きますから大丈夫です。」
「でも僕、夫だから。従兄弟よりも強いと思わない?」
「思いません。二年間傍にもよらなかった元夫として有名ですので。」
「あぁ、それね。君みたいな子だったら、ちゃんと結婚生活送っていたのにね。」
「顔も見なければ、どんな人物か解りもしませんよね。」
ルーベンスの棘のある言葉にランドルフは飄々と答えていく。
「これからの僕を見ていてね。君の為に代わるから。」
「えっ。」
「さぁ、じゃぁ仕事して来るね。またブランチに来るから。今日は何かなぁ。今から楽しみだよ。じゃぁまたね。」
ランドルフは、一人で食堂から出て行った。
☆☆☆
公爵邸に帰宅して、庭をゆっくりと歩いて以前育てていた薔薇園の方へと足を向けた。ガラスの温室へ向かうと、そこには見事な青薔薇が無数に咲き誇っていた。
青薔薇の香りとその素晴らしさを五感で楽しんでいると、一人の老人が傍にやって来た。
「久しぶりですな。坊ちゃん。もう此処には坊ちゃんの物は何もありませんよ。」
ランドルフは振り返り、その人の姿を見定めると、嬉しさの余りに抱き着いた。
「お爺さん、久しぶりだね。元気だった。昔はお世話になったよね。この薔薇あれからずっとお爺さんが育ててくれていたの。」
「違いますよ。元奥様ですよ。一時は私も頑張っていましたが、腰を痛めた時に、苗がほぼダメになりまして。青薔薇は元々繊細ですからね。僅かの命だった青薔薇を元奥様のケニア様が、毎日お世話をして下さって、此処までに増えたんですよ。他の草花にも同じように愛情を掛けて下さって。だから今のこの庭があるんですよ。良い奥様なのに泣かせて!何をやっとるんですか!」
ルーベンスは庭師のお爺さんに怒られて苦笑を浮かべるが、今もこうやって残っていることに心から感謝をしている。
「残ってくれて、ありがとう。」
ランドルフは頭を下げた。庭師は顔を紅くして、
「わ、私はね、出て行けって、言われてないからいるだけですよ。全く女に振り回されて。もう勘弁してくださいよ。」
頭を軽く小突かれて、
「もう絶対にしないよ。皆をこれからは守れるように頑張るから、見ていてよ。」
と強く宣言をした。庭師は、ランドルフの頭を今度は優しく撫でた。
「期待しておりますよ。坊ちゃま。」
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