謀略2
明日10時頃更新予定です
ダンヒル子爵が屋敷に戻ると、待ち構えていたようにナナが走り寄る。
「旦那様」。お嬢様の事でお話をしなければならないことが御座います。」
ダンヒル子爵は眉間に濃い皺を作った。今大変な思いをしているのは、その娘のせいであり、早く金策をしなければいけないのに、まだアイツは悩みを作るのか。と心の中で大きな溜息を吐いた。
ナナに向かって顎をクイッと動かして、先を促した。ナナはダンヒル子爵の後をスタスタと着いて行った。扉を開けて通された場所は、今は名ばかりの執務室だった。既に子爵ご自慢だった重厚なマホガニーの最高板を使用した執務机は消えていて、簡素なテーブルと椅子が置かれていた。
「なんだ。話とは。」
葉巻の箱から吸いかけて消された2/3位残っている葉巻を出して、マッチで火をつける。大きく吸って、葉巻の味を堪能していた。肺に煙を入れて、すうぅっと緩やかに吐き出して、灰皿で火を消した。
今や葉巻を買うお金もないので、子爵は葉巻を吸いたくなると、こうやって堪能していた。
「お嬢様がご懐妊をされた様子で御座います。」
ナナは一気に言葉にした。少し早口になってしまった感はあるが、それは、内容が内容なだけに仕方がない。と一人納得をしていた。
「ご、かいにん?」
子爵は言葉の意味をすぐに理解出来なくて、反芻していた。そしてしばらくすると、言葉簿意味が理解できて、驚愕の表情はするものの、あんぐりと開けた口がそのままの状態となっていた。
「誰の、子、だ?」
ダンヒル子爵は相手を確認せざるを得なかった。
「それは勿論、オルゲーニ公爵ご子息様でいらっしゃいますでしょう。ご一緒に生活をされていたのですよ。」
ナナは当たり前のように言うが、当たり前の事ではなかった。エメの母親も奔放な性格で今もダンヒル子爵の顔が見たくはないと、男のところへ行ったきりだった。
しかも、今回の件でエメが他にも付き合いのある男がいることをも知っていた。
だが、対外的には、エメはランドルフの家で生活をしていた事が公然の事実であった。そこで、エメに子供が出来たとなれば、相手は誰がどう見てもランドルフしかいなくなってしまう。血縁関係がないことは知られることは無い。ダンヒルは、片方の口角を器用に上げた。
「エメを呼んで来てくれ。」
親子揃って同じことを思いついたようで、ダンヒル子爵は目に見えて喜んだ。
エメの事を理解していなかったナナは、子供の責任をきちんと取って貰えるように旦那様が動いてくれる。と意気揚々と迎えに行った。
元執務室に通されたエメは、子爵と向かい合って腰かけた。
「子供が出来たのだな。」
「医師の診断は受けておりませんが、月ものは二か月ありません。」
「では、早急に医師の診断を受けろ。」
「解りました。」
「この家は、あと二か月で出て行かなければならない。その時に行く場所に困っていたが、
ランドルフ・オルゲーニ殿が父親であるのだから我らも、子供と一緒に受け入れて貰おう。なに、この二年間のランドルフを見ている限りでは、問題は無いだろう。」
「お父様がそう云うのであれば、私もいける気がして来ましたわ。では近いうちにナナと一緒に行って来ます。」
「良くやったな。エメ。」
ダンヒル子爵は、エメの頭を撫でた。しかし、双方の顔は、無邪気な愛らしさはなく、悪者の笑みを浮かべていた。
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