披露宴
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オルゲーニ公爵邸に戻ると、身内の披露宴準備は出来ていたが、カナガン伯爵家側からの怒りの感情は収まっていない。何故なら、此処にも新郎は存在していない。新郎がヴェールを上げなかったことで、新婦であるケニアは、ヴェールを下ろしたまま招待客に挨拶をしていた。カナガン伯爵側は、ケニアを知っているし、状況も把握しているので、瞳を潤ませながら、ケニアに笑顔を向けてくれる。しかし、公爵家側の招待客は、ケニアを見たことがない。最近噂では才女だと耳にするが、ヴェール越しというのが何とも居た堪れない。しかもこの状況を作っているのは、公爵家の嫡男ランドルフである。挨拶に行くと皆が頭を下げて、皆が同じ言葉を発する。
「ランドルフが申し訳ない。」
何度も耳にしていくと、ケニアも何とも居心地が悪くなっていく。
誰もが内心で思っていた。
「早く終わらないだろうか。」
空気を察したマティスは、ケニアを気遣うように
「新婦も疲れているようですので、本日はこの辺りでお開きにさせて頂きたい。」
本来ならば、もっと和やかに食事をして、扉で新郎新婦がお礼を言うべきところ新郎不在で新婦は少女という事もあり、出来ない。しかし、招待客は安堵の表情で、ケニアに気遣いの言葉を掛けながら、帰って行った。
ただ、そこに残った人々がいる。勿論怒り心頭のカナガン伯爵家の人々である。
「公爵様!確かに我が家は豊かとは言い難いが、借金がある訳でもなく、公爵家に迷惑をかけた覚えもない。それなのに、娘に対してのご子息の対応は我慢がならない!馬鹿にしないで頂きたい!」
普段温厚なカナガン伯爵が、公爵を怒鳴りつけた。しかし、今回ばかりは公爵も低頭で謝罪をするしかない。渋る伯爵家から嫁に無理やり出して貰ったのに、皆の前で馬鹿にしてしまった事になる。誰でも我慢がならないだろう。
「申し訳ない。本当に申し訳ない。」
「公爵様、既に三回になりましたよ。」
ルーベンスが、抑揚のない声で告げる。公爵は何のことか頭が回らず、ルーベンスに目を向けた。
「一つ目、結婚式前夜に女性と泊まり、二つ目は、結婚式には女性たちとの戯れで夜更かしをして遅刻。三つ目は、結婚式では、ヴェールを上げることもなく、誓いのキスも阻む。四つ目は、式の最中に愛人たちの元へ帰宅。五つ目は、披露宴にも出席をせず、ケニア一人に対応をさせる。あぁ、もう五回でした。」
公爵はランドルフのやらかしに頭を悩ませるばかりで、式の当初までは覚えていたルーベンスとの約束をすっかりと忘れていた。
「では、今日からケニアの執事として参りますので、宜しくお願い致します。」
もうマティスには反対は出来る状況ではなかった。この結婚式の日からランドルフが屋敷に戻ることは無かった。
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