結婚式です
次の更新は明日10時頃になります。
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結婚式当日、空は快晴だった。公爵邸メイド達総出で、ウェディングドレスを着つけて貰ったケニアはカナガン伯爵とマイナと一緒に馬車に乗り込んだ。
因みにもう一人の主役は、前日は公爵邸に来るように言われていたのにも関わらず、手紙をよく見もしないうちに、エメに持っていかれた為に、内容を知らずに帰宅をしなかった。
そして前日もエメとラビィを伴って夜会に出席していた。
「ランドルフはどうした!」
執事長のサボが、震えながら
「昨日はどうやら夜会に令嬢たちと出席をされていたようでして、セカンドハウスにはいらっしゃらなくて、マナーハウスの方に、令嬢たちといらっしゃるようです。」
「今日が結婚式だということを知らないのか!」
マティスは、顔色を蒼くした。ルーベンスとの約束でケニアの名誉を三回傷つけたら、彼が公爵邸へやって来る事になっている。
もし、昨晩の結婚式の前日に女性と一緒に泊まったことがバレたら、カウントは一付いてしまう。ルーベンスが一回でも許せないのに三回まで許すと言っていた意味を今になって知ることになる。
(不味い!非常に不味い!どうかバレないで欲しい。)
マティスは強く願った。が、その数時間後にはもっと酷い状況が待って居た。
王都の大聖堂で行われる挙式会場には、親族のみのはずが、何故か人集が出来ていた。
「何故こんなに貴族たちが大勢いるんだ?」
マティスは訝しんだ。大聖堂の奥にある祈祷の控え所に向かうとオルゲーニ公爵家の間にはアンゲルと侍女長のヴィヴィが立って並んでいた。そして、主役が居ない。
「ランドルフはどうした?」
「今、下男を呼びに行かせております。」
ヴィヴィが平担な声で伝える。それは感情がないのでは無くて寧ろ怒りがMAXの状態だった。ヴィヴィにしてみたら、一か月前に公爵邸にやって来てから、態々お金を掛けて部屋を作る必要はないと、未だにメイド達と大部屋で過ごして、毎日早朝から働いて、今では領地経営まで手伝うようになっているケニアに情を持たない方が可笑しい。あんなに働き者で、愚痴も言わず、皆と仲良く生活をしているケニアが可愛くて仕方がない。そのケニアを蔑ろにするような行為に怒りが沸かない訳がなかった。
「こんなに馬鹿になっていたのか!」
マティスも今では息子よりもケニアが可愛くて仕方がない。やはりこちらも怒りがMAXだった。イライラが最高潮に来た挙式五分前に扉が勢い良く開いた。
「ごめん。父上、寝坊しちゃったよ。」
悪びれるそぶりも見せず、お道化る様に言い放つランドルフの頬を殴りたかったが、挙式前に顔を腫らす訳にはいかず、下ろした手に拳を握る。
「前日は夜会へ行くな、家に帰って来い!と手紙を出しただろう!何故約束を破った!」
「しょうがないよ。未だ良く読んでいない手紙が消えちゃったんだもん。中身が解らなかったら約束を守るも何もないよ。」
手紙はどうせ女たちが盗んだのだろうと予想を立てた。でなければ、挙式の前日に一緒に泊まるなんてしない筈だから。
「早く聖堂に行け!」
不甲斐ない息子にマティスは怒鳴りつけた。
はいはい。と軽く応えてランドルフは聖堂に向かった。
聖堂内にはパイプオルガンの重厚な音が讃美歌を謳う。ランドルフは司祭から指示された場所に立つ。席には親類たちが座しているが、カナガン伯爵側の席からは、全員の殺気が席を覆っていた。
それは既にルーベンスが、今まで姿を見せなかったランドルフが何処で何をしていたのかを詳細に説明していた為だった。
「本当に軽薄そうな馬鹿を体現した男だな。あれが身内になるなんて、絶対に私は認めない!」
「僕はあんな奴を義兄だなんて呼ばないよ!」
「ケニアの何が気に入らないのかしらね。家のルーベンスから奪っておいて。」
エドガー、ハンス、ベルは一番の殺気を放っている。
しかし当の本人のランドルフには通じない。
「後二回だけど、その二回もいつまで持つのか見ものだよね。」
ルーベンスがほくそ笑む。
大聖堂の扉が開き、デルタ・カナガン伯爵とケニアがデルタのエスコートで入場して来た。
バージンロードを二人でゆっくりと歩みを進めて、ランドルフの横に立ちランドルフの手にケニアの手を預ける。
(この方がランドルフ様ですか。締まりのないお顔ですね。仲良くやっていくことが出来るでしょうか。)
ランドルフは、ヴェール越しのケニアに微笑んだ。大司祭の祈りと祝詞が続き、誓いの宣誓と順に行われていった。指輪の交換まで恙なく進み、いよいよ誓いのキスとなった時に、ランドルフは、ケニアと向かい合わせになると、
「君、幾つなの?」
と徐に質問した。
「十二歳です。」
ランドルフは、一瞬時が止まった。
(僕はデビュタント前の子と結婚をしたってことなの。やっぱりこの子の事を考えたら、
誓いであってもキスは出来ないなぁ。)
ケニアから父であるマティスの方へ向き直ると、
「これで挙式は終了ですよね。僕はこの後予定がありますので失礼します。」
とケニアをその場に残したまま、大聖堂の扉を開けて外へと歩き出した。
これには、カナガン伯爵側からの非難は大きかった。流石のデルタも怒りが込み上げて来た。
「公爵様!いくら何でもこれは酷くありませんか!」
しかし、ルーベンスはそれよりも注目すべきことがあった。
「待ってください。伯父上、外の声が聞こえて来ませんか?」
ランドルフによって開け放たれた外野から聞こえて来る声は、
「やったぁ!賭けに勝ったぞぉー。」
「賭けにもならないよ。既に公言していた事を実行しただけじゃないか。」
「約束を守りやがった。女たちはさぞかし喜んでいるだろうな。」
聞こえて来た声にカナガン伯爵側の席からは、恐ろしいほどの怒気が感じられる。
オルゲーニ公爵側からは焦りの感情が溢れ出す。
慌てて、傍に駆け寄った侍女のシンシアはケニアの背に手を当てる。
その中でケニアは、ぼそりと呟いた。
「なるほど。そう来ましたか。」
その声は、ケニアの侍女のシンシアのみが拾っていた。
参列者席からは、ルーベンスが
「覚えていろよ。この事は何倍にもして貴様に返してやるからな。ケニアにやったことは絶対に許さない。」
と呟いたことは、カナガン伯爵家の人々には届いたが、公爵家の誰の耳にも届かなかった。
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