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終末のレジスタ  作者: 甘味の僕
三章 魔王争奪人魔戦線
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四話「反抗する子供たち」

「__どういう事ですか、柚葉さん!?」


 学園長室に辿り着き、開口一番声を荒らげるリン。

 その問いは同時に、他のメンバーの疑問でもあった事だ。

 だが、柚葉はそれを意に介する様子もなく、現状にそぐわない、不自然なくらいの微笑を返した。


「あら、今日は休みでも良かったのに、わざわざ出てきたんだ。律儀ね」

「そんな事より、将真くんの話です!」


 リンは憤りを滲ませる表情で詰め寄り、柚葉の机を両手で叩く。

 そんな彼女の様子を、柚葉は冷めたように半眼で見つめ返す。

 将真の事で頭が一杯のリンは気づいていないようだが、傍から見ている莉緒はおかしなことに気がついていた。


(何か、目が……、そもそも雰囲気もなんかいつもと違う?)


 今回の行動と言い、普段の柚葉と比べると違和感が凄まじい。

 上手く言葉に出来ず、違和感の正体は分からないが、今の彼女はとても正気とは思えないのだ。


「聞いた通りよ。あの子を魔王として復活させる訳には行かないの。可哀想だとは思うけど、手遅れになる前に処分しなくちゃいけないわ」

「……これはまだ、莉緒ちゃんにも伝えてないんですけど」


 前出て、そう言いながら口を挟む美緒。

 小さく手を挙げながら、彼女は話を続ける。


「父に聞いた話では、結局将真さんの処分はなしで、当分様子見になったと聞きました。それなのに、処分するんですか?」


 そんな美緒の問いかけに、柚葉は首を傾げてキョトンとする。

 その様子は、虚ろな目のせいで異様ですらあった。


「……そうだったかしら?」

「……柚葉さん、大丈夫ですか? 様子が明らかにおかしいんですけど」

「私はいつも通りよ? それより、あなた達も協力してくれないかしら?」

「……それでハイなんて言うと思いますか? 大切な弟なんでしょう!?」


 今度は杏果が声を大にして叫ぶ。

 その言葉に、一瞬猛が悲哀の表情を浮かべた事に佳奈恵だけは気づいたが、それが気の所為だと思える程、その表情は直ぐに霧散した。


「だからこそよ。せめて、魔王の力で苦しまない、今のうちに……」

「そう言えば、七年前の惨劇と言ったらしいッスね。確かに酷い被害が出たのは自分も覚えてるッスけど、それほどあなたが、魔王を殺すことに執着する理由なんて__」

「あるのよ」


 口を挟む莉緒に対して、強い口調で告げる柚葉は、恐ろしく冷たい視線を送る。

 それだけで一同は身が竦むような思いをしたが、中でも莉緒は半歩だけ引き下がってしまう。


(……これは、我ながら相当重症ッスね)


 生唾を飲み込み、背中を冷や汗が伝う感覚に顔を引き攣らせる。

 そんな莉緒の様子に気づいたがどうかは定かではないが、柚葉は圧を感じる表情を抑えて、フッと笑みを浮かべる。


「まあ、協力したくないなら無理にとは言わないわ。私ももう行くから、あなた達は都市で待ってなさい」

「行く? 行くって何処に?」


 部屋を出ていこうとする柚葉を見上げて、立ち塞がるように扉の前に立ってリンは問う。

 そうして告げられたのは、彼らにとって思いもよらないものだった。


「都市の外。あの子をどうやら外に逃がしたみたいでね。探さなくちゃいけないのよ」

「そ、外にいるんですか!?」

「そ。危険な事するわよね。向こう側に見つかりでもしたら、捕まりかねないって言うのに」

「……誰が将真さんを逃したんスか?」

「楓たちよ。お仕置はしたけど」

「……そうスか」


 なるほど、それでは見当たらないわけだ。

 そして柚葉は危険と言ったが、将真の身の安全を考えれば、結局内も外もそう危険度は変わりない。


 リンの手に肩を置き、部屋を出ていこうとする柚葉の腕を、リンはそのまま掴み返す。


 傍からは、リンの右眼の青い瞳に、赤が滲み始めているような錯覚を覚えた。

 そして、ひりつくような威圧感がリンの体から放たれる。


「……将真くんを見つけたら、どうするつもりですか」

「言わなくても分かるでしょ?」

「……そうですか」

「__ッ!」


 見開いた目で柚葉を見据えていたが、柚葉の答えを聞くと瞼を伏せて、勢いよく再度目を見開く。

 そして何をするのかと思えば、掴んだ腕を振り回して、柚葉を机に向かって投げ飛ばしたのだ。


 一同が驚く中、柚葉も例外なく唐突の事に驚き、受け身も取れずに背中を打ち付けて、机が大破する。

 対するリンは、投げ飛ばした柚葉の元までゆっくりと歩いていく。


「……絶対にさせないよ。将真くんを殺させたりなんてしない。ましてあなたがそんな事をするのだけは__」


 今度は錯覚ではなく、確かに右眼が左眼と同じ赤へと変色を始めていた。


「__絶対に許さない」

「……やってくれるじゃない」


 柚葉に憤りはない。

 だが、明らかにその表情はやる気だ。


「あー、もう、どうにでもなれってやつッスね……!」


 手に余る状況に頭を掻き乱しながら、莉緒も臨戦態勢に入る。

 その様子を確認すると、つられるように次々と、各々が武器を構える。

 柚葉とリンたちの戦いが始まる。




 殆どの生徒たちが準備を始め、都市の外へ将真の捜索及び処分へと向かおうとする中、それに従わない生徒は僅かながら存在した。

 彼女たちも、そんな例外の一つだ。


「……ねぇ、どうするの榛名?」

「あー……、どうするべきだと思う?」

「わかんない……、けど、学園長って明らかに普段の調子じゃなかったですよね」

「だよなぁ」


 燈の言葉に頭を悩ませる榛名は、次いで恵林の言葉に同意を示すように頷く。

 将真が実は魔王復活の為の器だと言うことは、彼女たちも後で知ったのだが、確かに復活させたら大変なことになるのは間違いない。

 弟がそんな状態だと言うのだから、柚葉を不憫に思う気持ちはある。


 だとしても、冷静な判断だとは思えない。

 そもそも、上層部の決定は様子見だと聞いている。

 それを無視してまで処分を強行する理由がわからない。


「んー……、一回、直に話聞いてみるかな」


 上の決定に逆らってでも、本心から処分すべきだと思っているのならば、その覚悟は尊重したいと思う。

 魔王が危険であることは紛れもない事実なのだから、そこまで強い意志で決めたことならば、ただの学生でしかない榛名に拒否権はないし、責任はどうせ柚葉にいくのだから。


 だが、本心でないのならばそれに従う気はない。

 覚悟の無い言葉に振り回されるのはお断りだ。


「そうね。彼、そんなに危ない存在には見えなかったし」

「それに片桐くんのお友達もきっと嫌だと思います」


 賛同する二人の言葉に頷き、方針を定めた榛名たち。

 そんな矢先、突如破壊音が響き、三人は驚きながらも音のした方へと視線を向ける。


 場所は丁度、向かおうとしていた学園長室。

 どうやら壁が破壊されたらしく、煙が舞い上がっている様子が見て取れた。


「な、何だぁ?」

「……何が起きてるみたいね」

「うん。それに凄いひりつくような空気を感じます」


 耳を澄ますと、何かがぶつかり合うような音が聞こえてくる。

 目的地となる場所でそんな事態を目の当たりにしたものだから、改めて三人は急ぎ、学園長室へと向かおうとするのだが。


「__時雨さん!」

「んぁ?」


 そんな彼女たちを呼び止めたのは、同じ学年の女子生徒だ。

 榛名たちに比べると見劣りするが、彼女も二年の中では十分秀才と言える域の学生魔術師だ。

 そしてその後ろには、結構な数になる、他の二年の生徒たちもいる。


「なんか用? 急いでるから早めに頼むな」

「私たち、大隊を組もうと人数を集めてるの。それで、あなた達にも参加してもらいたいと思って」

「……大隊? 何のためだ?」

「惚けないでちょうだい。魔王討伐のために決まってるでしょう?」


 そう言われると、三人は不思議そうな顔で目を合わせ、次いで大きくため息をついた。


「はー……、悪いけどパス」

「何でよ。相手はまだ覚醒してないと言っても魔王なのよ? いくらあなた達が優秀だからって、何事もなく済むとは……」

「片桐と戦う前提で話してるところ悪いけど、あたしらは戦う気はないぞ」

「……はぁ!?」


 榛名の言葉に彼女は一瞬、理解が及ばなかったようだが、及ぶや否や素っ頓狂な声を上げる。

 後ろで待機している他の生徒たちも、一様に驚いた様子だ。


「ど、どういうつもり!?」

「どうもこうも、強制じゃないだろ別に。それにあたしはまず学園長の真意を確認したいんだ」

「真意も何も、魔王は倒すべき相手でしょ!?」

「厳密には魔王じゃないだろ」

「そんなの屁理屈じゃない!」


 全く引き下がる様子を見せない彼女に、さすがに榛名も鬱陶しさを覚えていた。

 このまま話していても埒が明かないだろう。

 いっそ無視して、さっさとこの場を立ち去ってもいいのだが。


「それに報酬もいいのよ、やらない理由なんてないでしょ!」

「__へぇ? 報酬?」

「ヒィッ!」


 女生徒が口にしたその単語に、榛名は反応した。

 だがそれは、報酬の内容に興味があった訳では無い。

 反応した榛名の口から漏れたのは、恐ろしく冷たい声だ。


「自分の意思じゃなくて、人に言われて人を害そうってだけでもアホらしいのに、報酬の為に同胞を切るってか。おめでたい頭だな」

「な、何が悪いのよ!」

「学園長が言ってるんだぞ、片桐が危険なのは間違いないだろ!」


 柚葉の侮蔑混じりの言葉に、他の生徒たちまでもが堰を切ったように抗議の声を上げる。


 勿論、将真が危険を孕んだ存在である事は否定しない。

 同胞とは言うが、あくまで同じ学年の生徒で、後輩だというだけの関係性だ。

 本来なら、庇うほどの理由はないのだが。


「もう一度言うぞ。片桐を処分する気は無い。だが、見つけ次第保護する方向で動けるなら手伝ってやるよ」

「……学園長の方針に逆らうの? 彼の処分は、都市の上層部で決定した事なんでしょ!?」

「上層部の決定は様子見だ。学園長がそれを無視してでも処分に乗り切っただけだぞ」

『……え?』


 榛名の言葉に、生徒たちが惚けたような声を漏らす。

 榛名は〈時雨家〉の次期当主だ。上層部の話に関しては、彼女の言葉には一定の信憑性があった。

 今回は柚葉も呼ばれていたが、学園長という立場ですら、上層部の会議に呼び出されることは滅多にない。

 その点、榛名は参加権こそまだないが、現当主から話を聞いているのだから。


「……お前らと話してたんじゃ埒が明かん。あたしは学園長に話を聞きに行くから、お前らは好きにすればいいさ。まあ邪魔するなら蹴散らしてくけどな?」

「うっ……」


 先頭の女生徒は呻くように半歩下がり、背後の生徒たちも引き攣った表情でその場から動けない。

 燈や恵林ならまだしも、榛名相手に半端な実力で数だけ揃えても無意味だと言う事は、この場にいる全員が理解している。

 榛名が最も得意とするのは、対多数の戦いだからだ。


 彼らが動かないことを確認すると、榛名たちは反転し学園長室へと向かおうとして、そして再び足を止められる。

 目の前で何かが、校舎の壁を突き破って飛んできたからだ。


「おぉっ!?」

「__いっ……てぇ〜」


 煙が晴れ、瓦礫に埋もれていたのは、一週間ほど前に助けた後輩の一人、響弥だった。


「お、おい大丈夫か……?」

「……あ、えーっと……、時雨先輩? 先日はどうも……」

「いや、それはいいんだが……」

「いやぁ、ちょっと今立て込んでるんで、後にしてもらっていいすかねぇ……」


 のそりと瓦礫を払って立ち上がる響弥。

 その様子を見て気がついたが、今吹っ飛んで来た事とは関係なく、既に疲弊しているようだった。

 重い足取りで、飛んできた方へと再び向かおうとする響弥の肩を掴み、榛名は彼を呼び止める。


「……何があった?」

「学園長が将真を追って処分しに探しに出るって言い出して、リンがちょっとキレたみたいなんすよ」

「……マジかあの人」

「で、絶賛戦闘中ってとこです」


 やれやれと言いたげにため息をつく響弥だが、彼の発言によって、柚葉に将真を処分する意思が明確にあることがわかってしまった。

 その事実に、少なからずショックを受けた榛名だったが、外から再び響く破壊音でそちらに意識を向ける。


「……おい、荒井」

「お、なんすか?」

「お前、隙を見て、仲間連れて離脱できるか?」

「……いや、そもそも隙なんて」


 ない、と言おうとした響弥の言葉を、榛名は掌を突き出すことで遮り。


「隙はあたしらが作る」

「……いいんすか?」

「あなた達は、片桐くんを処分するつもりはないんでしょ?」

「そりゃ勿論」


 燈の問いかけに、響弥は当然のように強く頷く。

 彼らは将真と仲間であり、友人である。

 将真を探し、助けに行こうというならば、彼らを行かせることには何も問題ない。

 柚葉がその障害となるならば、彼女を抑える役目を変わる事くらいはしてやれる。


「……じゃあ、任せてもいいすかね。とてもじゃないけど、俺らじゃ束になっても敵いそうに無くて」

「あぁ、任せろ!」

「あなた達は早く行って下さい!」


 改めて要請する響弥の言葉に頷くと、榛名たちはすぐ側で続く戦いへと参加するため、その場を飛び出した。




 リンの槍と柚葉の篭手。

 金属が激しくぶつかり合う音が聞こえる。

 二人の戦闘について行くだけで精一杯の杏果は、目の前の光景に戦慄を抱いていた。


 リンのこの状態を、死んでいた為に見ていなかった杏果は知らないのだから尚更だが、それ以上に今のリンと互角以上に渡り合う柚葉の方が脅威的だった。


(いや、逆か……)


 本当に凄いのは、都市でも最強格の実力を持つ柚葉と渡り合うリンの方だ。

 尤も、リンはほぼ全力であるのに対して、柚葉は涼しい顔をしているが。


 柚葉を抑えるだけならばまだ幾らでもやりようはある。

 その中で最も容易い手段が、莉緒の速度で翻弄する事だ。

 今の状態のリンでも、速さでは莉緒に及ばない。

 それでもこの場で、恐らく柚葉に対抗できる速さを持っているのはその二人だけなのだ。


 だが、事はそう上手く運ばなかった。

 杏果にとっては完全に想定外だったが。


(莉緒の調子が悪すぎる……!)


 これも杏果が知る由もない事だったが、先日の任務で莉緒は、トラウマレベルの悲惨な目に遭わされている。

 そしてその影響は、莉緒自身の想定を上回り、柚葉に気圧された今、足が竦んで上手く動けないでいた。


「……莉緒ちゃん、大丈夫?」

「……大丈夫とは、言い難いッスね。この体たらくじゃ」


 それでも尚、立ち上がる事が出来るだけ、莉緒の心は強かった。

 だが、莉緒の強さはその圧倒的なスピードが軸になっている。

 今のままでは足手纏いだという事も、自覚しているところだ。


 問題はそれだけではなく、柚葉と暴走するリンとの間に入って、戦いについていける者がいないのだ。

 杏果や美緒でも足りないのだから当然だろう。


 タダでさえ、柚葉に実力で劣っているのは当然だと言うのに、加えて彼らはまだ退院したばかりなのだ。

 全員、体力も少し落ちている。

 未だ全力でないにも拘らず、明確な実力差がある彼女を相手取るには役不足が過ぎた。


(戦力が圧倒的に足りない……!)


 柚葉を退けた後、リンは将真を探しに行こうと都市を飛び出していくだろう。

 多かれ少なかれ、将真を心配する仲間たちは、彼女に賛同してついて行くことになるはずだ。

 将真はいないが、いつもの中隊編成で彼を助けに行くことになるだろう。


 だがそれは、この場を切り抜けることが出来たら、の話だ。

 このままでは、全員この場で潰されてしまう。


 柚葉を抑えられるほどの実力をもっていて、協力してくれるような誰かがいてくれれば。

 そんな都合のいい妄想を浮かべる杏果の目の前で、リンと柚葉が距離を取り合った瞬間。


 杏果の願いを叶えるかのように、柚葉を強烈な熱線が押し流していった。


「……え?」

「大丈夫か一年ども!」


 その光景に目を奪われていると、リンたちに呼びかける叫び声が聞こえてきて、そちらの方を振り向く。

 そこに居たのは、炎の羽衣を身に纏い宙に浮く少女の姿。

 既視感のある光景だが、一週間ほど前にも同じような光景を見たのだから当然だ。


「時雨、先輩……!?」

「……榛名さん?」


 リンですら、暴走状態が一瞬揺らいで戦いの手を止める。


「お前ら、片桐を助けに行くんだろ?」

「え、ええ……」

「勿論、助けに行くよ」


 榛名の確認に戸惑いながらも頷く杏果と、力強く頷くリン。

 ちらりと杏果は視線を莉緒たちにも向けるが、意見に相違はないようだった。


「じゃあ早く行きな。あたしらもちょっと釈然としなくてな。学園長と直接話したい」

「そのついでに、足止めを任されてあげるわ」

「だから早く、片桐くんを助けに行ってあげるといいですよ」

「……いいんですか?」


 その申し出に、有難いと思いながらも、申し訳ないとも思う。

 榛名たちの実力は分からないが、やはり柚葉を抑え込めるビジョンが浮かんでこないのだ。


 それでも、ここでリンや杏果たちが手をこまねいているよりは遥かにマシだろう。

 榛名たちが頼りになることは間違いない。


「……じゃあすいません、お願いします!」

「おう、行ってこい!」

「リンも、行くわよ!」

「……うん」


 リンにも呼びかけ、何とかその場を離脱する事に成功する杏果たち。

 離脱する直前、熱線に飲まれたはずの柚葉が、まるでダメージを負っていないと言うとんでもない光景を横目で見ながら、都市の外を目指す。


 そうして彼らが立ち去った場で、榛名は引き攣った笑みを浮かべながら、嫌な汗が額を伝っていくのを感じていた。


「……加減したとはいえ、そんな事あるか」


 柚葉の目が、彼女たちを見据える。

 リンたちを相手にしていた時とは違い、殺気すら滲ませる視線。

 それだけ警戒しているという事。

 リンたちと比べて、榛名たちの方が明確に強い事の証明だ。


「……私を止められる気でいるのかしら?」

「あぁそうだよ。あんたと話がしたいからな__!」


 今度は複数の熱線を放つ。

 警戒されている今、躱される可能性も十分にあるからだ。

 だが、榛名がしたいのは足止めと会話だ。

 断じて殺し合いではない。


「燈と恵林との三人で、あんたを止める!」


 気合十分に息巻く榛名。

 だが、それとは対照的に、柚葉の表情を見た恵林は息を飲んで絶句する。


「アレは……!」


 正確には、瞳に宿す怪しい光を見て。

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