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ドリーム・ライフ~夢の異世界生活~  作者: 愛山 雄町
第七章「嚮導者時代:諸国編」

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第一話「平和な日々」

章立てを変更しました。

 五月一日。


 神々の敵との対決から一ヶ月、村に戻ってから半月が過ぎた。

 村に戻ってからはのんびり過ごすつもりだったが、蒸留所に行ったり、ベルトラムとニコラスの義手を作ったり、村の整備をしたりと、割と忙しく過ごしている。もちろん、今までの日課である訓練も続けており、元の日常に戻った感じだ。


 こういう生活もやはり悪くない。

 ペリクリトルやリッカデールで森の中で命を削って活動していた時より充実しているし、何よりリディたちに笑顔が増えたことがうれしい。



 ただ戦死したブレットとリッキーの葬儀の時には気が滅入った。

 未だに彼らの死が無駄でなかったのかと割り切れない思いがあるためだ。


 二人の葬儀は村に戻った翌日に行われた。父が葬儀を取り仕切り、村人総出で二人を悼んだ。

 ブレットとリッキーの妻はこうなることを予想していたのか、気丈にも涙を流すことはなかった。


 悲しみを堪え気丈に振る舞う彼女たち以上に、何も分かっていない幼い子の姿が俺の心を抉った。

 三歳くらいでは父が戦死したことが理解できないのだろう。


「父様はいつ帰ってくるの」と母親に甘えながら聞いている声が耳から離れない。


 その日はベルトラムたちが俺を誘ってくれた。ドワーフ流の死者の悼み方、つまり死者のことを想いながら飲み明かすという方法で二人の死を悼んだのだ。

 そのお陰もあって少しだけ気は楽になっている。但し、その次の日は解毒の魔法が追いつかず、頭と胃は非常に重かったが。



 左腕を失ったニコラスだが、新たに作った義手を使い始めている。

 応急的に作ったフック型の義手は丈夫なものの使い勝手が悪い。特に文官でもある彼は書類を扱うことが多く、紙を押さえるのに苦労していた。


 そのため、ベルトラムと一緒に五本の指がついた本格的な義手を作った。本格的といっても形だけでほとんど動かすことができない。

 一応、指部分にワイヤーを通し、簡単な開閉ができるようになっているが、それも右手を使ってワイヤーを動かさないといけないという不便なものだ。


 そこで魔道具の技術を使って自在に動かせないか試している。

 この方法だが、元々義手ではなく、別のことで考えていた技術を応用するつもりだ。

 それはゴーレムの技術だ。


 ゴーレムは古い遺跡で時折見られる珍しい魔物で、土や石、金属などの単一の素材でありながらもロボットと同じような動きを見せる。有名なところではガーゴイルもゴーレムの一種であり、比較的ポピュラーな存在だ。

 高度な物はサエウム山脈の麓で見つけた古代の研究者が使っていた“ウォーカー”と呼ばれるものがあるが、あれは魔道工学を用いた“ロボット”であり、参考にしたくてもできない。


 ゴーレムは恩師ラスペード教授の専門分野でもあり、学院生時代から乗用のゴーレムが作れないかと文献を漁っていたので知識はある。

 乗用のゴーレムといっても人型のものではなく、馬型の物ができないかと考えていたのだ。

 馬型ができれば、馬の体力を考えることなく馬車による輸送が可能だ。それにより、長距離輸送の高速化が可能になる。


 しかし、ゴーレムの魔法陣は存在するものの、ラスペード先生ですら完全なものは持っていなかった。これは機能が停止したゴーレム、すなわち“死んだ”ゴーレムの場合、魔法陣が自壊してしまうためだ。そのため、部分的なものしか存在しない。


 今回作ろうとしているものは指の開閉と手首の上下程度の簡単な動きのもので、今の知識でもできるのではないかと考え挑戦した。

 しかし、結果は惨敗だった。

 動かすところまではいけたものの、力の加減ができなかったり、意に反して動いたりと、動かないものより役に立たなかったのだ。


 ベルトラムの作った義手は精巧なもので、ニコラス自身は満足している。


「この義手でも充分ですよ。ミスリルとアルス鋼を使った世界一贅沢な義手なんですから」


 そう言って笑うが、実際その通りであまり笑えない。


 これは気合の入ったベルトラムが、強度が求められる腕部分に高品位鋼であるアルス鋼を使い、繊細な指部分に軽さと強度のバランスがいいミスリルを使ったためだ。

 最初、アダマンタイトで腕を作ろうとしたが、ニコラスが贅沢すぎると慌てて止めている。


 ベルトラムが三日三晩掛かって作った物は籠手(ガントレット)を繊細にしたような精巧なもので、革の手袋を着けると一見するだけでは義手に見えないほどだ。

 腕への装着部分も衝撃吸収処理をした柔らかいが耐久力のある竜の革を使い、肘のところでしっかりと固定しているため、自警団員の斬撃程度なら弾けるほどの強度を持っている。更に手首から先が簡単に取り替えられるため、鋭利な刃物に替えれば武器にもできる。


 ニコラスは長剣とカイトシールドを使う攻防一体のスタイルであり、左腕に盾を装着できないか試している。

 さすがに重量物である盾まで義手に装着できなかったが、小型の四角い盾を健全な二の腕に装着し、それを使って剣を捌くことまでできるようになっている。

 見た目は何となくだが、宇宙世紀の初期型の機動スーツに似ている気がしないでもない。


 ニコラス自身、これで充分と言うが、俺自身が納得できないため、先日ラスペード先生にアドバイスがほしいと手紙を送っている。



 魔将(アークデーモン)アシュタルとの戦いで重傷を負ったダンだが、今は村を離れている。

 約束通り、エレナことエレアノール・メイスフィールドとの結婚のために、ウェルバーンに向かったからだ。


 メルのために命を賭けたことから、まだ想いが残っているのかと思ったが、そのことは一切口にせず、エレナと楽しそうに旅に出発した。


 そのダンだが、当初二人だけで旅に出るつもりで、そのことを俺や父に伝えてきた。


 彼自身レベル五十を超える剣術士で、エレナもレベル三十を超えている。

 更にダンの斥候としての能力とエレナの馬術の腕があれば、危険は少ないように思える。しかし、立派な装備を付けており、外見だけなら二十代前半の騎士の御曹司のカップルにしか見えず、トラブルを招きかねない。


 エレナも自分たちだけで充分だと言っていたが、俺が強引に若手の従士を護衛に付けさせた。


「この二人なら魔物も盗賊も何とかできるのではないか。第一、シムの時は二人で行かせているぞ」といって父も反対した。


 父がそう言うことは予想できていた。しかし、シムの時とは状況が違う。ロックハート家の名声がダンたちを危険に曝す可能性があるのだ。


 ロックハート家の騎士の嫡男に勝負を挑むような輩が出てくる可能性がある。正々堂々の戦いでなくても、数で押し切って勝ってしまえば何とでも言えるという者がいないとも限らないのだ。


 父にそのことを言っても納得しない可能性があった。そこで直球ではなく少し変化を付けた説明で対応することにした。


「身の安全というだけならダンの斥候としての能力があれば充分でしょう。ですが、別の理由で部下を付ける必要があるのです」


「別の理由ですか?」とダンが聞いてきた。


「ああ、シムは知っての通り、北部総督府軍で名を上げた騎士だ。しかし、お前は能力という点では騎士として申し分ないが、立ち居振る舞いは騎士というより冒険者だ。メイスフィールド卿に会うのだから、騎士爵家の嫡男として少しでも箔が付くようにした方がいい。ロックハート家の正式装備を着けた従士が三人ほど後ろにいればそれらしく見えるだろう」


 俺の言葉に父が頷く。


「そこまでは考えなかった。馬もカエルム馬を使えば印象はもっとよくなるな」


「しかし……」とダンが遠慮しようとしたが、


「エレナのためだ。ここまで待ってくれた彼女のことを考えてやれ」と父に言われて納得するしかなかった。


 その後、ダンは森に入らず、キルナレックにいる兄とシムから騎士としての振る舞いを叩き込まれた。その成果もあり、三人の若手従士と共に見事な戦馬に乗った姿は見事なものだった。


 ジェークス家の紋章である剣と弓を持つ獅子が描かれた漆黒のマントを羽織り、ベルトラムの手で磨き上げられた名工ウード・レーヴェンガルトの飛竜のハーフアーマーを着用した姿は若き英雄と言われても違和感がない。

 エレナはその姿にうっとりとした表情で見入っていた。



 そんな日々を過ごしていたが、時々ぽっかりと時間が空くことがある。そんな時、どうしてもルナのことを考えてしまう。

 今どうしているのか。冒険者としてしっかりやっているのか。神々の敵が何かしてきていないのか。もう一人の神々に遣わされた者と合流できたのか……。


 他にもあの神々の敵、漆黒の魔族の行方が分からないことも気になっている。

 あれだけの力を持つ存在がこの世界のどこかで暗躍している。そう考えると不安が首をもたげてくる。

 それでも俺にできることはない。

 考えても答えが出ないことをグルグルと考えてしまう。


 そんな俺の姿を見て、リディたちが気を使ってくれる。

 リディとベアトリスはやたらと村の酒場に連れて行こうとするし、メルとシャロンはつまみになりそうな料理を作り、どんな酒に合うかと聞いてくる。いずれにしても、俺には酒さえ与えておけば大丈夫と思っている気がして仕方がない。


 俺自身、考えても仕方がないと思っているので、彼女たちの考えに乗っているが、そんな生活も楽しいものだ。


 メルとシャロンの二人だが、村に戻ってから急に積極的になった。今まではリディやベアトリスに遠慮している感じがあったが、今は押し退けるようなことはないものの、積極的にアプローチしてくる。

 理由を聞くと、メルが真っ赤な顔で教えてくれた。


「これから村にいるなら、赤ちゃんがほしいなって……」


 ルナと共に村を出てからは子供ができないように努力していた。子供ができれば村に戻さざるを得ず、戦力の低下が懸念されたためだ。

 しかし、神々との敵と戦う必要もなくなり、村にいるだけなら子供ができても問題ない。

 俺自身、まだ若いからこのままでもいいと思っているが、メルとシャロンは早くほしいらしい。


 リディとベアトリスは異種族ということで諦めているが、二人に子供ができるならと応援しているほどだ。


「あんたの子供なら、あたしの子と一緒だよ。それにあたしにはもう無理だからね」


 ベアトリスは四十三になる。この世界では人間や獣人が四十代で出産することはほとんどない。


 リディも「私もベアトリスと同じよ」と笑っているが、彼女自身は自分の子がほしいと思い続けている。ただ、元々出生率の低いエルフであるだけでなく、エルフと人間の間に子供が生まれるのは百年に一度くらいといわれるほど少ないため、できることはないだろうと思っている。



 五月の半ばに、七月一日のドワーフ・フェスティバル開催が正式に決定したという連絡が入った。

 ベルトラムから聞いた話では、アルスのギルド総本部で緊急総会が開かれ、全会一致で承認されたそうだ。

 もっとも反対されるはずはなく、ベルトラムが提案したところで実質的には決まっていたようなものだが。


 匠合長のウルリッヒ・ドレクスラーは全世界のドワーフに向け、声明を出した。


『来る七月一日に第七回技能評定会及び酒類品評会を実施する! 各支部は代表者を決め、これぞと思う武器または防具を披露せよ! その評価により鍛冶師ギルドに分配されるザックコレクションの配分を決める。総本部は儂が新たな剣を打つ! 儂以上の物を作って見せてみよ!』


 ウルリッヒの挑発的な声明にラスモア村近隣の支部が反応した。

 六月に入ると、ペリクリトルからギーゼルヘールが代表として乗り込み、ドクトゥスからもゼルギウスがやってきた。

 それだけではなく、ウルリッヒ本人も総本部のメンバーに先行して村に入っている。


「ここで作らねば意味がないからな。さて、お前にもとことん付き合ってもらうぞ」


 その言葉の意味が判らず、「どういうことだ?」と聞くと、


「魔族との戦いで剣を傷めたのではないか? ならば再び儂が作るのがスジじゃろう」


「剣は無事だぞ」と言って見せるが、「いや、儂が納得できん」と言って首を横に振る。


 実際、ベルトラムに修理と手入れをしてもらっており、実用上全く問題がない。

 更にそのことを指摘すると、顔中に汗を掻き始める。


「今更アルスには帰れん。儂に剣を打たせてくれ」といって頭を下げ始めた。


「どういうことだ?」と聞くが、明確な答えが返ってこない。


 恐らくだが、俺の剣が爆発に巻き込まれたと聞き、誰よりも早くここに来たいため強引に立候補したのだろう。


「大見得を切って来たんじゃ。今更これで充分といわれたら儂の立場がない。いや、命すら危ういかもしれん。頼む。儂を助けると思って剣を打たせてくれ」


 そう言って最後には土下座せんばかりに頭を大きく下げた。


 俺としては今の剣でも充分過ぎるのだが、確かに他の親方連中を差し置いて村に入ったことは問題だ。この村の酒をいち早く飲める権利を得るのに不正をしたと思われたら、ウルリッヒといえども冗談ではなく命に関わる。


「今の剣に不満はないが、もう少し工夫をしてもいいと思っていたんだ。今回は四属性に挑戦してもいいと思っている」


「四属性じゃと……遂にか!」


 稀代の名工ウルリッヒの表情が真剣なものに変わる。今まで仲間たちに報復されないかとおどおどしていた様子など微塵も見られない。


「そうだ。光、金、木、そして闇の反属性同士の四属性だ」


「闇だと……どうやって使うんじゃ?」


「闇は麻痺系の魔法を付与する。光が攻撃、闇が無力化という感じで使い分ける」


「麻痺の魔法を付与……そんなことができるのか?」


 ウルリッヒの疑問はこの世界の鍛冶師にとっては当たり前のことだ。

 今まで光や炎などを纏わせてきたが、これは鍛冶師たちが長年に渡って研究し、独自に編み出した魔法陣を使っている。しかし、闇属性は適性者が少なく研究が進んでいなかった。

 また、魔族との関係があり闇属性自体のイメージが悪く、鍛冶師たちも積極的に闇属性の付与の研究を進めていなかったのだ。


「いろいろな魔法陣を見せてもらったからな。闇属性に置き換えるだけなら問題はない」


「お前が言うのならできるのだろうが……ルークスの連中が何か言いそうじゃな」


 ルークス聖王国の国教、光神教は光の神(ルキドゥス)を主神とする一神教だ。他の属性は天使に近い扱いだが、闇だけは違う。闇属性は魔族の使う邪悪な属性で、闇属性を使う魔術師は迫害の対象にもなっているほどだ。


「奴らに文句は言わせない。ルキドゥスはそんなことで文句を言うはずはないからな」


「まるで神に会ったような言い方じゃな」


 その言葉に言い方をしくじったと思ったが、すぐにニヤリと笑い、


「光と闇が共存する魔剣って、ロマンがあると思わないか?」


 そう言うとウルリッヒも「そうじゃな。反属性の二重掛けはただの四属性よりやりがいがあるわい」とやる気を見せていた。


 この光と闇の組み合わせは神々に会ったことから思いついたものだ。ルナが闇の神(ノクティス)の御子で、もう一人が光の神(ルキドゥス)の御子と呼ばれていた。

 この二人を象徴するような剣を作ることで、邪魔をしそうな光神教に一泡吹かせようと思っているのだ。


 何気なくリディたちの方を見た。

 彼女たちは俺が楽しそうに話しているのを見て微笑んでいた。

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本作品とは毛色が違い、非転生・非転移ものですが、こちらもよろしくお願いします。
最弱魔術師の魔銃無双(旧題:魔銃無双〜魔導学院の落ちこぼれでも戦える“魔力式レールガン戦闘術”〜(仮))
― 新着の感想 ―
[一言] シャロンとメルってそういえば23…?脳内で16くらいの少女としか再生できない…笑 シャロンはまだ貴族の令嬢といった感じで想像できますが、メルはあどけない元気いっぱいの可愛らしいイメージが強い…
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