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第一章:全力疾走で逃げていたら、Aランクのイケオジ冒険者に拾われました 1/3

※次回は明日20時~20時半の間に更新

 森の奥では冒険者ギルドから派遣された調査班が、危険区域周辺の様子を探っていた。

 最近この一帯で高ランクの魔物が増えており、魔物の動きや結界に異常がないかを確認するための調査で、彼らはいつものように周囲を警戒しながらいくつかの組に分かれて森の奥へと足を進めていた。


「ん?」


 調査班の中でも非戦闘員で構成された後方支援組の一人が声を上げる。

 森の調査に入っていた彼らは、少し離れた場所で不自然な人影を発見したのだ。

 最初は遭難者かと思ったが近づくにつれて服装が明らかにこの世界のものではなく、裸足で武器らしいものも持っていないことに気が付いた。


「……あれは、まさか……」

「異世界人じゃないか?」


 そう判断して近づこうとした直後、その女性は突然走り出してしまった。


「あ、おい! 待ってくれ!」


 調査班が慌てて声をかけるが、聞こえていないのか立ち止まることない。

 そんな彼女が向かった先を見て調査班の一人が顔色を変えた。


「……まずい」


 彼女が向かった先は、危険区域へ繋がる方向だった。


「デヴィッドたちに知らせろ!」

「分かった!」



***



「……結界の状態は?」


 その頃、少し離れた場所では調査班の1人であるデヴィッドが数名で森の状態を確認していた。


「今のところ大きな異常はないが、昨日より少し魔力濃度は上がってるな」

「……そうか、まぁでもこっちは問題なさそうだな」


 太い木の幹に手を添え、目を閉じて周囲に流れる魔力の感覚を探る。

 この一帯を覆っている結界には、大きな乱れはなく、少なくとも目立った異常は確認できなかった。


「なら、次は東側か」


 デヴィッドは一度視線を上げる。

 彼はAランクの冒険者で、長年危険な魔物の討伐や護衛や探索依頼をこなし続けてきた実力者であり、特に剣術と体術においては同ランクの冒険者の中でも頭一つ抜けた存在として知られている。

 元々は単独行動を好む彼だが、今回のような危険区域周辺の調査では、ギルドから頼まれて調査班に加わることもあった。


 ただし


「……魔法は得意じゃねぇんだよなぁ」

「お前、魔力操作が雑すぎるんだよ」


 隣の冒険者仲間が笑う。


「うるせぇ」


 デヴィッドは肩を竦めた。


「斬れるもんは剣で斬ればいいだろ」

「それでAランクまで行ったのが腹立つんだよな」

「知らねぇよ」


 そんな会話を交わしながら歩き出したとき、遠くから慌ただしい声が聞こえてきた。


「ディー!」

「……あ?」


 振り返ると調査班の一人が慌てた様子でこちらへ走ってくる。


「どうした?」

「人が……いや、女が森の中に!」

「女?」

「おそらく異世界人だ!」

「……何?」


 デヴィッドたちは知らせに来た調査員と走り出す。

 異世界人はこの世界に突然現れる、極めて珍しい存在だ。

 そしてこの世界では珍しいだけの存在ではなく、過去には異世界人が持つ知識や特異な能力を利用しようとした者が命を脅かす事案もあったようで、王家直々に見つけた際の保護要請が各ギルドにも通達されているほどである。


「どこだ?」

「すぐそこだ」

「怪我は?」

「分からない。突然走って行っちまって」

「しかも、それが危険区域の方向で」

「はぁ!?」


 デヴィッドの眉間に皺が寄った。


「何やってんだ!」


 現場に到着次第、デヴィッドはその女が走り去った方向を確認してすぐさま森に入る。


「ディー、頼む!」

「結界の向こうへ行かせるな!」

「分かってる!」


 デヴィッドは再び地面を強く蹴り勢いよく突き進んだ。

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