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御神先生の秘蔵っ子  作者: 蒼良美月
第三楽章 乙女の祈り

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25.夢の国(2)

 電話が終了した感じだった為、少しづつ様子を伺いながら近づいて行く。

 ゆっくり、そぅっと音を立てないように気をつけながら。


 先生?

 やはり怒ってる? 大丈夫かしら?


「先生?」


 一応ドアの外から声を掛けてみた。


「早いな? 乗れ」

「おはよう御座います。何かあったんですか? トラブルとか?」


 先生の仕事のことに関しては、普段は私からは聞かないようにはしているつもりだが、先程の先生の怖い顔が気になってつい聞いてしまった。


「いや。朝飯食ったのか?」


 普段と同じ先生の顔に戻ったので安心した。


「あまりにも嬉しくて色々考えていたら。すいません……」

「手の掛かる子だな相変わらず」

「すいません……」


 心配していた顔は、今は笑っていた。

 良かった……


「先生って大人っぽい服と、可愛い感じとどっちが好きなんですか?」


「下着だけか、何も着ていないか」


「ぇ?」


「脱がす時、楽だから」


「……」


「阿呆、冗談だ。似合ってる」


 先生が私の頭を軽く撫でて笑った顔がとても優しくて、ずっと見ていたくなる。


「今のお前にチャイナドレス着ろって言ってもなぁ」

「やっぱりそういうのが好きなんですか?」


「嫌いな男がいたら、そいつ一回医者に診て貰うことを勧めるわ」

「やっぱりそうなんだ……」


 なんとなく、自分の胸元に無意識に視線が下りていた。

 チャイナドレスか……


「お前に一番似合うと思うものを、毎回送っているはずだけどな?」

「そうだったんですか?」


 顔色一つ変えることなく、淡々と言う先生に少しだけ悔しい? 気持ちと複雑な気持ちが入り交じる。


 無意識に再度自分の胸元に視線を移していた。






 ◇




 そんな中、驚愕の光景が目の前に現れたのだった。


 え? もしかして? 此処って……


 画像でしか見たことがなかった「夢の国」が近づく中、ピンク色の建物の中に、ごく普通に何事もなかったかのような顔で、運転しながら入って行く先生の顔をまじまじと見るが、驚きのあまり足が震えていた。


「先生ここって?」


「どれが良いのかよく分からなかったから、取り敢えず適当に部屋に呼んで貰った」


「え? へ、部屋に????」


「専用の人が色々案内してくれるらしいぞ? 部屋で食事したいって言ったら、ねずみが()()()()で来てくれるって」


「ぇ? 今なんて仰いましたか? まさかとは思いますが?」


 泊まりは駄目って言ったわよねぇ? 日帰りプランなんか無かったような……


 う、嘘よねぇ……


「並ばなくて良いらしいぞ。ちゃんとレストランとかも席予約してくれるそうだ。良かったな?」


 もしかしてそれって噂には聞くアレですか? 

 王様やそのご家族がご利用するアレですか?


 あ、でも神様ですから同じで御座いますわね。


 すっごいお高いってお話で御座いますが?

 あ、昨日電話してたのって?


 神は「夢の国」まで支配できるので御座いますね。

 さすがで御座います。

 そして本日は愚民である、わたくしめもその御威光を……

 嗚呼、何て尊いのでしょう!


「ああ、ここ俺、昔仕事したことあるんだよ」


 神が私の疑問に答えるように、サラリと息が止まりそうな重大告白をされた。


「ぇ? いつ?? え?? 御神教本にそのようなことは載っておりませんが?」

「御神教本って……昔な。何周年だったかな? 代理で一回振ったことある。眠れる森」


「うっそ!! ええええええええええ」


「バイオリンで行ってたら、突然コンダクター熱中症で倒れて、急遽誰かいないかって。無茶苦茶だろ? ハハハッ」


「先生その時もう指揮者としてデビューされてたんですか?」

「いや? ドイツ渡って直ぐの頃だかならぁ」

「……凄い」


「いやぁ。あの頃は若かったわ。それ以来たまに仕事でな」


「ぇ?」


 私の驚いた顔に、先生が遠くに見える、ある建物を指差した。


「え?」


「音源、俺のだ」


「ぇえええええええええええええ!!」


「書いてるだろ? Мカンパニーって。まだまだだねぇ。ハハハッ」


 今日一番驚いたかもしれない。まさか先生が「夢の国」に降臨していたとは!


「腹減った。さっさと行くぞ」

「せんせい……」


 神が……腹減ったって。


「何だよ? ほら置いてくぞ?」


 先生が手を差し出した時に見せた笑顔は「夢の国」のどんな王子様より、キラキラしていて息をするのを忘れてしまいそうなぐらい輝いて見えた。





 ◇





「嘘っ! 先生見てみて、こんな近くで!!」

「そりゃそうだろう。その為に呼んだんだろ? 何言ってんだよ?」


「何言ってるんですか! 凄い貴重なんですから!」


 真面目な顔して、頬を膨らませながら言ってくる娘に、半分呆れたがその顔は穏やかに笑っていた。


 いや中身人間だろ? ならデカいぬいぐるみ買えば良い話しじゃないのかよ。


「そんなに欲しいならデカいぬいぐるみ買ってやるが?」

「何言ってるんですか! それとこれとは違います!」


「なぁもう食っていいか?」

「せんせい……」


 いっぱい一緒に写真も撮れたし。凄い貴重な時間だった。


「先生! 感動しました! ありがとう御座います! って……何普通に食べてるんですか!!」


「いや、食うだろ普通。まあ落ち着け。座りなさい」


「……先生って見た目と違って結構食べますよねえ?」


 そうなのよ。生御神様を拝謁して一番驚いたのが()()だった。

 食事する姿が世界で一番不思議な人? と言っていいぐらい似合わない? 人だったのに、普通に食べる。

 しかも、愚民と同じものを平気で召し上がる。


「オケ入ったら一日食えないとか普通にあるからな。貴重なんだよ。こうして座って飯食える時間って。大抵、後ろで佐々木がせかしてるしな。食えたとしても車の中か飛行機の中が殆どだからなぁ因果な商売だよなあ」


 商売って……


「先生って奏者にはもう戻らないんですか? 何で指揮者に?」


「昔、俺の音にああしろとか、もっとこうしろとか言う化石コンダクターいて。頭きたから自分でやることにしただけ」


 先生らしすぎる回答に思わず笑ってしまう。

 神が、人の下につくことは無理ですよね?

 先生?


「あ? 何笑ってるんだよ?」

「何でもないで~~す。先生って好き嫌いないんですか?」


「あ、牡蠣は無理。昔あれで食(あた)りおこして死にかけたことあって。それ以来食ってないわ」


「えええええ? 死にかけたって? そんなに酷かったんですか?」

「一週間ぐらい入院した。今度、由紀に聞いてみろ。それ以来食ってない」


「ご無事で何よりで御座いました」

「苦手なのあるのか?」

「御座いません! そのような選べるような身分では御座いません」





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