30 ドラの記憶と………。
「ここは………」
雪が降っていた………。でも、寒くもない………いや、風も吹いていない。
でも………あの時と同じ、季節外れの雪が降っていた。
「理子、あの奥だよ」
ドラに手を引かれ、理子は握ったままついて行く………。
そして………裸電球がぶら下がったドアの前で、1人の女性を見つけた!?
「ルキア………」
理子は泣いていた………。
そのルキアの腕の中には赤ちゃん。産まれて間もないであろう赤ちゃんの頃のリンク。2人は赤いドアの前で、寒さに震えていた………今すぐに、理子は温めて上げたい。そんな気持ちになっても、コレは過去の幻………分かっている理子。でも、子供の時からの付き合いの理子にはルキアを………包みたかった。
「アル………何で開かないの?」
ルキアは泣いていた………。
「理子はこの夜、出て行ったルキアを探していたんだよね?」
「うん。まさか………置き手紙を置いて行くなんて………」
「扉の向こうを見てみる?」
怖い………彼が………アルが何をしていたのか?でも、見なきゃいけない!
「行くわ」
理子は1歩を踏み出した。
ドアをすり抜け………血を見た!?
「アル、とっとと行け!!」
そこは戦場にも見える店の中だった!?
褐色の、モヒカンの大男が武器を振るって、血塗れの彼………アルバートに叫んでいた!?
「ジョー!エリックとメイは!?」
「入り口で殺り合っている!!」
「クソッ!………敵が多すぎる!ドラ!どこだ!?」
ドラ君が戦っているのは兵士。
「アル!コッチ!!扉が使えないから、ボクの命を使う!!」
「ドラ!何を言ってんだ!!」
アルは叫ぶが、そんなアルにドラは近づき抱きついた!
「ジョー!後は任せたよ!!」
「任せな!ドラ!俺達みたいな傭兵は殺し合いが仕事だかんな!ハハハッ!!」
そこに、1人の戦士が近づいて来た!
「ジョー!押しきって、そこから一旦道を作る!そこから撤退だ!」
「エリック!メイは!?」
「魔術隊を連れて、ドラの力を増幅させる!時間を稼ぐしかない!それから、撤退だ!アル、ドラ、早く行って!」
アルは泣いていた………。
「皆………」
そして、アルバートはドラと姿を消した!?
「コッチだよ、理子」
「でも、皆は………そうね。コレは過去の事………行きましょう」
理子は赤いドアをすり抜けて現実世界に………。
そこには倒れたドラと、アルバートが走って行く所だった!?
「ルキアー!!」
理子の足は………アルを追っていた。
あの夜………理子はルキアを子供と―――リンクと2人だけにしてしまった。きっと、命を狙われると分かっていながら。それが理子の、最大ミスで、最大の罪だった………。
通りに出ると、ルキアは刺されて倒れていた!?
その傍にはリンクを抱える自分。
あの時………理子は無力だった………。
「貴様ー!!」
アルバートは血で染まった剣を振るい叫んだ!
でも………リンクの事務所の社長は包丁を捨てて、走って逃げた!!
………あの後ろ姿は忘れた事が無かった………のに、理子は何でか忘れていた。
「理子、今はここまでにしよう」
「フッ………フフフッ!全部思い出したわ!あの後………あたしはリンクを育てようとした。でも、ルキアの御両親に頭を下げられて、渡した………そして、全てを伝えたわ」
「そう………だから、ボクは理子の記憶を少しづつ消していった」
「きっと………ドラ君の優しさだよね?」
「理子は良い女性だ。そして、ルキアの頼みだった」
「あたしへ?………ズルいよ………自分だけ悲しい思いをしてさ。あたし達は友達でしょ?」
苦笑しているドラの隣のセイレーンが理子の手を握った。
「理子、セイレーンは分からないけど、ルキア様は言っていました。昔から友達は楽しい事も辛い事も分かち合うものだと。そうセイレーンは学びました。なら皆で分かち合って、笑い合うのです。コレからルキア様の残したマスターと共に。ルキア様の為に❤」
理子の目から涙が止まらない。でも、今の彼女には最後に聞かなくてはならない事があった。
だから、彼女はセイレーンとドラに問う。
「リンクは罪人なの?殺人犯なの?」
不安な声………でも、ドラは笑顔で横に振った?
「いいや。リンクは誰も殺していない」
「ルキアの両親は?」
「例の社長の雇った者だけど………リンクはボクだと思っているはずなんだ」
曖昧な答えの中に、ドラの確信めいた声があった。
「………?どう言う事?」
理子はドラの言葉に聞き返した。
ドラは天井を見上げ、そして語り始めた………。




