3 真相………そして………
正直、今は金が三千円しかない。
ドリンク・バーでコーヒーを飲みながら、僕は彼女を待っていた。
三千円しかないから、明日はパンにマヨネーズを掛けて食うしか無い。バイト代が恋しい………後、何日あるんだよ?
クスン。
そこに、誰かが入って来た?
「ごめん、待った?」
スーツ姿の女性。見た目は若いけど、母親と年が一緒。だから………いや、今はやめておこう。女性に年齢と体重を聞くのは禁句だからな。
「いえ、今ファミレスに来た所です」
川村さんは僕のコーヒーカップの中を見て気付いたけど………あえてスルーしてくれた。
川村さんはバックを置いて。
「OLも大変でね」
川村さんは会社員らしいけど、どんな会社なのかは知らない。
でも、僕には母親の様に接してくれるから大好きなんだ。
「大きくなったわね。リンクは元気だった?」
「はい。川村さんは元気でしたか?」
「ええ。ルキアと………リンクのお母さんと一緒に遊んでいた頃と変わらないわくらい元気よ」
ルキア―――僕の母さんの名前を聞くのは久しぶりだな。川村さんは母さんとは同級生だったから、僕は色々と昔から母さんの事を聞いていた。ある事を除いては。あの事………でも、大きくなるまで、母さんが死んだ時の事は大きくなるまでダメだと言われていた。だから、今夜がその時なんだろう。
「所でリンク。実は………あたし、ルキアの事を忘れかけているのよ」
「忘れ………かけている?」
彼女は苦しそうに言い始めた。
「ええ。それに、他の人はもう忘れているし、覚えていないわ」
川村さんは………真剣な目で言う。なんか、都市伝説みたいな………。
「だから、リンクだけはルキアの事を忘れないで」
「はい。じゃあ、今夜あの事を教えてくれるんですね?」
彼女は頷いた。
「ストレートに言うわ。リンクのお母さんは殺された。犯人はストーカー的なルキアのファンよ」
手が震えている………。胸が苦しい。死んだ原因は………病気じゃねぇのかよ!
「リンク、本当は明日に言おうと思ったけど……今夜のはずなんだけど………クリスマス・イブがルキアの命日よ」
「………!?」
母の日じゃない!?………何で皆言ってくれなかったんだ?
「リンク、貴方は強いわ。心も………身体も。だから、今夜言う事は………決して忘れないで」
「母さんはアイドルだったんですよね?」
「ええ。だから、リンクはアイドルをしているのよね?ルキアの意志を繫ごうとしているのよね?未来に持っていこうとしているのよね?」
「はい。アイドルになれば………喜んで貰えると思ったからです。でも………ファンが………」
川村さんは一度飲み物を飲んだ。そして、僕を見る………何かを確信しているように。それを言うことで引けない何かを含む様子で。
「リンク、アイドルになりなさい。再デビューするの。あたしが何とかするから!」
川村さんの口調は………初めて聞く口調だった。まるで、何時もの優しさではなく、母親の様な命令口調と言えばいいか?そんな口調だった。
でも………。
「リンク、貴方は今の事務所に居ない方が良い。あたしは、ある芸能事務所のマネージャーをしているわ。そこでアイドルになりなさい」
「無理なんです」
分かっていた。川村さんを町で見掛けた時、若手のアイドルの傍で動いていたから。だから僕は迷惑を掛けられない。
「社長が知っているのね?」
僕は黙って頷いた。
「分かったわ。ルキアの話しに戻りましょう」
もし今すぐに泣けたら僕は楽になれるのかな?全てを言えれば笑えるのかな?
「ルキアはアイドルだった時もあったけど、本当はシンガーソングライターだったの。彼女の本当の姿は」
「あの………どう言う事ですか?」
聞いていた話しと違うぞ?母さんはアイドルをやっていたんじゃないのか?
「彼女はアイドルを3か月しかやっていなかった」
「活動をですか?」
「ええ。でも、曲の力でしょうね。ドームのステージに3か月で立ったわ」
「3か月で………!?」
「リンク、「ツイン」の曲は貴方が書いているんでしょ?あの人気の2人に」
「はい、そうです」
「あの社長には書けない楽曲よ」
「そうです。だから僕が書いています」
「貴方ならデビュー1曲目でドームに立てるわ。そのルキア譲りの顔と声……あたしの事務所ならそうする」
「川村さん…………僕は死にたい」
彼女は僕の手を握った………温かい。
「リンク、泣かないで。泣いてはダメよ」
もう、涙が止まらない………。
「リンク、貴方が望むなら、殺人の件………公表しましょう」
「でも………」
「未成年だった。だから………大丈夫よ、リンク」
「証拠が無いからですか?」
「ええ。だから、リンクは容疑者の疑いだけ………そして、物的証拠も無い。きっと………いえ、大丈夫よ」
「………すいません。社長が待っているんで」
「………御免なさい」
彼女は………僕の手を握りながら俯いていた………。




