20 全ては彼が知っている。
リンクはPちゃんの腕の中で眠っていた。泣き疲れたんだろう。
「ドラ、リンクを術で寝かせたね?」
「正解だよメイ。でもね、仕方ないよ」
ドラは皆を見回す。
「だって、レインとルキアの関係性を皆は知りたいんでしょ?あの場では言えないよ」
「じゃあ、誰がドラを監視しているんだい?」
エリックの中には、それは1人しか居ない。そして、出来るのは1人だけ。でも、エリックの言葉に皆は気付いて、本人の口から聞きたかった。
「色々とあったからね。でも、それをアルが教えてくれるよ」
皆は気付いた。気配が生まれた事に。
「ルキアとレインは同一人物よ」
「………どう言う事?」
メイは首を傾げるが………アルバートは座った。でも、そんなアルバートからは殺気を感じないから納得をした。
「同一人物ってどう言う事?」
メイは用心していたから、ナイフを握っていた。それはジョー以外は皆一緒だった。
「ルキアのアイドル・ネームが「レイン」だったからよ。だから………ルキアはアイドルを演じる様に言われていただけなのよ」
「演じていた?」
「そうよ、メイ。彼女には俗に言うセルフ・プロデュースで、向こうの世界での芸名「レイン」を名乗ってアイドルを演じていた。だから、リンクは知らないのよ」
「なる程ね。スマホって言ったっけ?Pちゃんの言っていた、リンクの持っている全能の機械?それで調べられなかったのは?」
エリックの目はジョーとPちゃんを交互に見た。
「俺は詳しく知らないが、アルとドラに聞いたよ。そして、分かった」
ジョーはタバコに、焚き火の枝で火をつける。
「ジョー、あんたは色々と考える時は酒なのに、タバコに逃げるから気になっていたんだけど。アタイ達を騙したのか?」
「メイ、エリック、コレはアルがカレンから逃げる為だ」
「理由は?オレ達にも教えてくれる?」
「エリック達の想像は分からないけど、コレからリンクを向こうの世界に帰すわ」
アルバートはハッキリと言った。
「死神は?」
「ワタシ達で殺るわ。エイミー、そうでしょう?」
Pちゃんはアルバートを睨む。
「アル、私はあんたがムカつくわ。でも、全部を言ってくれたら好きになるかもね」
「嬉しい。なら、教えて上げるわ」
アルバートは酒をリュックから出して、瓶で口の中にウイスキーを含む。
「表面上には現れないけど、国王派と政治屋………まあ、大臣の間に衝突が見え始めていた。それがカレンだ。奴は父の為にリンクを利用したいんだよ。………父親を生き返らせる為に」
アルバートの口調は男のそのものだった。
「………リンクの身体に自分の魂を……「反魂の術」を使う気なのかしら?」
「正確にはリンクの子供にだ」
「つまり、リンクとの子供を作るの?」
「ああ。セルフ・プロデュースをして、アイドル全てを支配するのよ。Pちゃんなら分かるでしょ?」
アルバートの口調は元に戻った。
「魔王降臨の再現………魔王リンクの再現ね?」
「「………!?」」
エリックとメイはリンクを見た!?が………Pちゃんは首を横に振る。
「かつての魔王の名前が「リンク」を名乗っていたのよ。「繋がるの名前をね」
Pちゃんはアルバートを見た。そんなPちゃんにアルバートは微笑む。
「ルキアは彼を殺す時に彼の名前、「リンク」の名前を受け継ぐ事を約束したわ」
「アル、ドラ、ルキア………生き残った3人で何を話し合ったの?」
「1つ。リンクを血に染めないと約束したわ」
「他にもあるのね。まあ、リンクにモンスター退治の仕事を持って来ようとしたら、受付に断られたのは………アルが裏で画策していたのね?」
アルバートは頷いて酒を呷る。
「リンクはファンタジーの世界に来たけど………思う様にいかなかったでしょうね。でも、ルキアに似すぎていたから、王も止めていたわ」
「早く言って欲しかったわ」
「ただ………リンクに会いたかった。それだけなのよ」
「そう。アルらしくないわね、ドライなのに」
Pちゃんはアルバートの目に、焚き火の反射で光る涙を見た!?でも、今はPちゃんはリンクに目を向ける。
「他に知りたい事は?」
「カレンはどうするんだい?」
エリックの口元は笑っていた。
「殺すわ。そして、死神を倒し、ゲリラと共に国を取り返すわ。そして、王に再び立って貰う」
「町に変化は無かったよ?」
「違うよ、メイ」
「何が?エリック、教えてよ」
「本当の戦争の足音って言うのは静かなものなんだよ」
「………アタイは知らないぞ?」
ジョーは酒を手に取る。
「メイ、俺とエリックは傭兵だ。だから、よ~く知っているよ。つまり、情報が必要だ。それと時間もな」
「リンクに関係するのか?」
「メイ、狙いはリンクなのに、そのセリフは良くないぜ」
「ジョー、リンクは狙いかもしれないけどさ、戦争とは関係無いだろ?」
ジョーは酒に口をつける。
「あるよ。「心の扉」は世界に7つしかない。そして、その1つが俺達の国。その扉を守る為にギルドがあの場所に建った。でも、扉の許可が無ければ開かない。そして………」
エリックはアルバートを見た。
「もう一つ方法がある。それは鍵だ。そして、その鍵を持っているのはアルバートなんだよ」
「そうよ。でも、その鍵をカレンが隠したわ」
メイは酒を吞んで、ナイフではなく杖を持った。
「殺してくんよ」
「待てよ、メイ」
「止めんなよ、ジョー!」
「お前らしくねぇな」
「アタイは何時でもこうだよ!」
「昔の傷か?」
「………リンクには笑っていて欲しいんだよ」
涙のメイ………。
ジョー達は夜空を見上げた………。そして、ジョーは笑った。
「メイ、それを人はファンって言うんだぜ」
そんなメイの口元が緩んだ。
「夢も希望も無かった。曲を聴いても何も感じなかった。でも………リンクの曲はジワジワとくんだよ。今すぐにでもリンクを起こして歌って貰いたいんだよ。………ファンとして」
「良いよ」
皆の目は………リンクに向いた!?
ドラがそんな時、水晶で曲を流し始めた………。
リンクは………大きな夜空の星々が照らすステージで歌ったのである………。




