17 プライド
リンクはテーブルに突っ伏していた。
「アル………何でだ?」
「ジョーも分かっているはずよ。それとも、何かを吹き込まれたの?」
アルバートは皆の前で笑みを見せていた。そして、揺るぎない真剣な目。
そこに、メイが近づいて来た!
「あんた、自分が何をしているのか分かってんの!?」
「メイ、こうしなきゃリンクは死んでしまうわ。それは、分かっているはずよ」
そこにエリックが間に入る。
「人間は生きているんだよ」
「エリック………貴方は常識人だと思っていたのに……残念だわ」
「アル………俺はリンクが好きだ。だから、考え直せ」
「ジョーまで………決戦はすぐそこよ」
アルバートは………笑っている。
「分かっているよ。だから聞きてーんだよ。お前の本心ってやつを」
アルバートは女の子の様に「クスクス」と笑っていた。
「宣言するわ。リンクが死ぬ時はワタシが死ぬ時よ!」
「ボクもだよ。だからPちゃんに1つ聞きたいんだ?」
「ドラの質問は何かしら?」
「リンクにアレは教えたの?」
Pちゃんは首を横に振った。
「異世界アイドルは向こうに帰ったら、例外を除きコチラに戻れない。言わなきゃダメだよ」
ドラはどこか楽しげに言うと、リンクを担いで長椅子に寝かせた。
「アル。アタイは、あんたが気に入らない!」
「ええ。メイの言いたい意味は分かっているわ」
「でも、アルは………アタイ達の一族を助けてくれた。売り買いされるだけの、家畜と呼ばれたアタイ達を連中から助けてくれた!そして、初めて認めてくれて、プライドって言葉を教えてくれた。………その借りを返すよ」
「メイ、今回の敵はヤバいわよ。ここ1週間で2つの国を潰しているから。そして、10年おきに幾つもの国を滅ぼしてきた奴だから。魔王より危険かもね」
「上等だよ。やってやるよ。それに、ここから離れられないし、ココに居ても死ぬだけだから。なら、リンクに命を預けるよ。ルキアの………レインのPだった、伝説のルキアの息子に」
「そうね。ルキアなら………かつて、今から百年前にこの国は半分が死んだ。ワタシ達エルフのアイドル達の死を引き換えに、死神を追い返したけどね」
そこで、Pちゃんはイスに座る。
「そうね。あの頃は全滅が普通だったから、百年前に半分だけで済んだのはラッキーだったわね」
「フフッ。Pちゃんの口からそんな言葉が聞けるなんて………何か良いことがあったのかしら?」
「死んだらアルの顔を見なくてすむって考えていたけど………リンクのライブを観る権利をアルとドラがくれそうだから嬉しいのよ」
ジョーの差し出したタバコを取って、テーブルの上のローソクの火で点けた。
そんなPちゃんにアルは嬉しそうに微笑んだ。
「アリーナではなく、楽屋パスも上げるわよ」
そこで、Pちゃんはハッとした!
「………つまり、百年前に失った術式が使えるのね?」
「負ける訳にはいかないし、ただ黙っていた訳でもないわ。それに………今度は半分だけで済むとは思えないのよ」
「どう言う事?」
「夜のモンスターを率いているのよ。町が現時点で30以上は消えているのよ?動きが遅いから町の人は逃げたらしいけど………目的地はココよ」
「理由は「心の扉」ね」
「そうね。きっと、異世界に行く気よ」
そこで、エリックが笑った。
「それなら、オレ達の考えも変わるね」
「エリックならそう言うと思ったわ」
「まあね。死に場所が無かったから丁度良いよ」
そんな笑っているエリックにメイは肩を叩いて。
「そう?アタイ達は死ぬ気は無いよ」
「メイ達はね。でも………リンクのライブを観たかったな」
エリックが少し残念そうに言った。
「あら?それなら、ワタシが水晶で繫いでアッチのライブを見せて上げるわよ」
「じゃあ、生きる理由が出来たね。あっ!皆にも見せて上げてね」
エリックは嬉しそうに微笑んだ。
「良いわよ。でも、リンクに許可を貰ってからね」
何時もの笑顔のアルバートを見ながら、ジョーはウイスキーを口にする。そして、タバコのケムリをくゆらせる。でも、その顔は笑っていた。
「ジョー、何か良いことあったの?」
「ヘヘヘッ。アル、カレンに聞いてみな?」
カレンの後ろにウエイトレスが3人。グラスと酒がテーブルに並べられた。
「カレン、どう言う事かしら?」
「アルバート様。今は肉より酒だと思いまして………その、高級酒を」
確かに高い酒を持っていた。
「フフッ。ジョーは香りで分かるようね」
アルバートは酒をグラスに注いでいく………。
「アル、所でリンクは何時まで眠るんだ?」
「ジョーが思う程長いわ。約、30分位かしらね」
「そうか。なら色々と話せそうだな」
皆はグラスを手に取り、ウイスキーを口にした。
「俺は天国って所に行った事は無ぇから、アルが俺達の道先案内人をしてくれ」
「アラアラ❤ジョーったら、ワタシ達が行くのは地獄でしょ?」
「ハハハッ!だったらよく知っているぜ」
皆の口元が笑い出した………ギルドに集まってきた仲間もだ。
そんな中、ドラがPちゃんの傍に立った?
「Pちゃん、さっきの答えは?」
「ドラ、貴方は私が答えたら貴方も私の質問に答えてくれるの?」
「アルも答えてくれるはずだよ❤」
「そう。なら、答えとしてはリンクに教えるわ。それで良い?」
「Pとしてそれを言うのは初めてだね。ボクはPちゃんでは出来ないと思ったけど、少し安心したよ」
「そう。で、ドラに聞きたい事があるんだけど………アルにも聞くわ。町が静かだけど、どう言う事かしら?」
Pちゃんだけが首をかしげる?
「言わなくても、皆が危険を察したのよ。ワタシ達はドラとカレンを使ったわ。伝説のPの娘をね」
Pちゃんはカレンに目を向けた。
「色々と言いたいけど、どう言う事か教えてくれる?」
「父の名前を使いました。ルキア様の御子息が国を救いに来たと、町の人に伝えました。そうしたら、皆が黙って従ってくれました。覚悟は出来ているはずです。そして、皆が信じています」
「Pとして10人以上のアイドル達を殺し、ルキアを呼んだから?」
「はい………わたくしは………」
カレンは黙ってしまった。だから、Pちゃんはアルバートに目を向けて。
「この国や国民にはヘドが出るわ。王様にもアルにも」
「分かっているわ。でも貴女もこの話には乗ったはずよ」
「カワムラ リコの話しを聞くまではね」
Pちゃんはドラに冷たい視線を送る。でも、彼は笑顔を崩さない。
「彼女に会ったの?話しをしたの?」
「話しをしたわ。そして、ルキアを殺した犯人も教えてくれたわ」
「ボクとアルで終わらせるよ。そして、ボクは………この国から去るね」
「ドラ、貴方はルキアと何があったの?」
「恋をしたんだよ。ルキアのファンになってから……彼女に恋をしたんだ」
ドラの表情は幸せそうだ。だが、それはPちゃん疑念を持たせた。
「アルはどうなの?」
「ワタシもルキアに恋をしたわ。そして最後は………ワタシの腕の中で死んだわ………。カワムラさんは元気?」
「貴方が思う以上にね………。でも、ドラは会いに行っているはずよね?そしてリンクに呪いを掛けたわね?」
「そうだよ」
悪びれもしないドラにPちゃんは殺意を覚えた。でも………Pちゃんは怒らなかった。
「なら、2人は同罪よ。リンクの願い………もしもの時2人で叶えなさい」
「ボクがその時は次元を通ってリンクを連れて行くね。アル、Pちゃん、サポートは任せたよ」
ドラの表情が笑っているのに、Pちゃんは目を細めていた。
「何か隠しているわね?」
「彼は聞いているよ」
「誰?」
「僕だよ」
Pちゃんは溜め息混じりにリンクを見た。そして、微笑んでいた………。




