10 ドラ登場
乗り合いの馬車は石畳を軽やかな音を鳴らして進む。心地の良いリズム。最高のBGMだな………。
ただ、お尻は痛いけど。
でも風情があり、僕は好きだな。
都内が僕には慣れた光景だけど………街並みは石がメイン。そして、この場所はヨーロッパの田舎の感じがする。今の人は………まあ、僕もだけど。観光で見にいきたい場所だと言える。
「リンク、アルの事を教えておくわ」
「はい、Pちゃん」
Pちゃんの話しに耳を傾ける。
「アル………アルバートは宮廷アイドルのトップよ。歌って踊れて、戦える。アルバートはそれをマスターしている男のエルフよ。でも、彼でも異世界アイドルには勝てない。それが彼とリンクの差なのよ」
「異世界アイドルに勝てない?」
「死が問題なの」
そこで、ジョーがタバコを僕に渡して勧める。
「そこからは俺が説明するよ」
僕はそんなジョーを見ながらタバコに火をマッチで点ける………。
「この世界のアイドルは死ぬ事を許されない。理由はリンクの世界でも一緒だ。争いで死ぬ事をファンが求めないからだ」
「争い?………逆に英雄になるんじゃないですか?」
「それは独特な考えで、真のファンが争いでアイドルが死ぬ事を喜ぶのか?そして、この世界ではアイドルを別の名で「天使」と呼ぶんだ」
「つまり、英雄ではなくて、象徴として見られるですね?」
「首を取られりゃ死ぬ。それと同じく、アイドルはその国の………アイドルは国民にとっての首なんだ。親と言って良いな。そして、アイドルを殺された国は確実に滅んでいる。だから、仮でもアイドルが必要で、作ったのが死んでも困らない傭兵みたいな「異世界アイドル」って訳だよ」
「………何か分かりました。色々と」
ジョーは一呼吸入れた。
「あの日までは」
「………?」
あの日?
「リンク、「レイン」の話しは聞いたか?」
「名前だけは………」
「そう、レインは………彼女は、国民が神と呼んだ。何故なら魔王を倒したからだ」
「………倒した?」
「厳密には封じた。そして、モンスター達が余り動けなくなって平和が訪れた。でも、今は活発に動いているから、リンクが呼ばれたのさ」
ジョーの笑みは、深く刻まれた皺が老兵の様に見せていた。でも、優しそうな表情………きっとジョーは生き死にをくぐり抜け、生きた証を残しているはずだ。そして、彼が生きた道なんだろうな。
―――刹那、馬車が急停車した!?
「どうした!?」
手にはバスター・ソードを持ったジョーが前面に立ったけど、馬車の手綱を握っていたオジさんが目の前を指差した。その方向には、1人の青年が立っていた。
美しい顔に無邪気さを入れた青年だった。でも、エルフには見えないし、どちらかと言うと、獣の様な………子犬か、ライオンの子供みたいに見える可愛らしい容姿の青年だった。でも、長い髪もそうだけど、アイドルの衣装が似合っていた。しかも、今のアイドルみたいな、王子様みたいな雰囲気をだしている。
いったい、誰なんだ?
「よう、久しぶりじゃねぇか!」
笑顔のジョー………まさか、この子がアルバート!?
「ジョー、元気!」
いい声………無邪気さを声に乗せたらこんな子供みたいな青年なのかな?
「リンク、紹介するぜ」
僕はジョーに引っ張られて………。
「ドラ、コイツは異世界アイドルのリンクってんだ!」
「えっ!?そうなの?久しぶりだね。この世界に呼んだんだ?」
「今から城に行くから乗れよ」
「うん!皆、よろしくね」
ドラと呼ばれた彼が馬車に乗って来た。
「リンク、よろしくね。ボクはドラって言うんだ」
なんか愛嬌があるな~。でも、嫌味が一切無いのは、この子の特性なのかな?
「僕はリンク。よろしくね」
今は気になるけど、それよりジョーに聞かないと。
「それで、ジョーは「レイン」の話をしたの?」
「俺に聞くよりも、ドラに聞いた方が早いぜ。なんせ、ドラはレインと一緒に居たしな」
「ドラさん………それは………」
「一緒に戦ったんだ。魔王相手にね」
「えっ………?」
「ルキアの事も知っているよ❤」
「母さんの事を………!?」
「だって、ルキアはレインのPちゃんの1人だったからね」
そうだったのか………プロデューサーの仕事の1人………やる事があったなら、母さんなら出来るはずだ!
全てが揃った………。いや、そう思っているだけなのか?
でも、何で何も言っていないのに母さんの事を話しているんだ?
「泣かないで、リンク君。ボク、何かしちゃった?」
いかんいかん、何を泣いているんだ。僕はこんなに涙脆かったっけ?
「気のせいだよ。それより、僕の事はリンクって呼んで」
「じゃあ、ボクはドラって呼んで❤」
可愛らしい子だな。僕はドラと握手した。
❤❤❤
それから、僕は色々と聞きたかったけど………はぐらかされていた。
「ジョー、城に着きましたよ」
「ああ。皆、行くぞ」
馬車を降りて、城門を抜け………城の中に入ると、長い通路を通り会議室に通された。
初めての城の中なんだけど………今はそれよりも色々と聞きたい!
でも、疑問ばかりで答えが1つも無い。ココに一体何があるんだ?この世界に何があるんだ?僕の呼ばれた本当の理由すら妖しく思えてきた………。




