さよならフェリーナ
春斗くんも家にはいなかった。
暗くなり、夜ご飯を作り子どもとご飯を食べた。
いつもと同じ日常なのに自分だけが世界に一人のような感覚だった。
家族といてもさみしくて孤独だった。
ここが自分の居場所じゃないような気がした。
夜になり昔のようにベランダでビールを飲んだ。
季節は春だろうか。暖かいから、きっと春だと思う。
私はすべてから自由になっていた。
時間に追われることもなく、
煩わしい人間関係もなく、お金の奴隷でもない。
常識や思い込みに縛られることもない。
朝起きて、好きなことをして、夜を待ち、眠る。
退屈だと思う人もいるかもしれない。
でも、本来は人間の目標は生きること。
私は毎日、生きている。
くだらない情報に惑わされることもない。
そのとき、ふと思った。
フェリーナはもう必要ないのかもしれない。
私は立ち上がり部屋に戻った。
机の上にはノートが置いてある。
フェリーナの地図。
「私が書いた?いつ書いたの?」
登場人物、世界のルールたくさん書いてあった。
私はページをめくった。
そこには、私が書いた世界があった。
山も、川も、街も、人も全部書いてある。
私がこの世界を作ったんだ!
私はノートを閉じた。
メリも、春斗くんも、
きっと最初から
ここにはいなかった?
私はベランダに出た。
夜の風が静かに吹いていた。
遠くで犬が鳴いて、
電車の音がかすかに聞こえた。
現実の世界はちゃんと動いている。
私は空を見た。
星が一つ光っていた。
そのとき胸の奥で何かがほどけた。
固く結んだリボンがほどけるように、
スルスルとほどけて、
フェリーナは静かに消えていった。
そして私は自分の世界に戻ってきた。




