現実の世界?
朝になり、
いつも通りの日常が過ぎていく。いつもと同じ朝に見えるけれど、
昨日の世界と、今日の世界は違う。
昨日は、私がつくった仮想の世界。
そして今日は、現実の世界。
少し前までの私は、
日常から逃げるように、自分の中に閉じこもっていた。
外部との接触を避けて自分だけの世界をつくり、その中で暮らしていた。
世界は、自分で自由につくれる。試練の多い世界も、
楽で何も学ばなくていい世界も。
でも今、ここは現実の世界。
私はその場所から出て現実へと帰ってきた。
明日もきっと、同じ一日がやってくる。
ご飯を作り、子どもと笑い、夜になれば眠る。
特別なことは、何もない。
でも、それでいい。私は今日も、生きている。
それだけで、
世界はちゃんと続いている。
外の世界との接触を避け、寂しさから生まれた、私だけの世界。
メリも、春斗くんも、すべて私がつくり出した幻想だった。
私はきっと、完璧な世界を求めていたのだと思う。
でも
完璧な世界なんて、つくれなかった。
メリは消え、春斗くんも消えた。残ったのは、現実だけ。
それでもいい。
これからは、この現実の世界で生きていこう。
私は、玄関のドアを開けた。その瞬間、強い風が吹き抜ける。
思わず、目を閉じた。
そして
ゆっくりと目を開けると、そこには、海が広がっていた。
「まだ、終わっていなかったんだ」
波の音が、胸の奥に触れる。
遠くで光る水面は、まるで、もうひとつの世界の入り口みたいだった。
現実に戻ったはずなのに、心のどこかは、まだ揺れている。
風が、髪を揺らす。その風はあの世界で感じたものとどこか似ていた。
「ここも、私の世界なのかな」
そう呟いて、少しだけ笑う。完璧じゃなくていい。
消えてしまうものがあってもいい。
ここには、触れられる風があって、確かに聞こえる波の音がある。
私は一歩、前に踏み出した。足元の感触が、
確かに「今」を伝えてくる。
それでも
胸の奥には、まだあの世界のかけらが残っている。
それでいいと思った。
消さなくてもいい。忘れなくてもいい。
私は、私がつくった世界も連れて、
この現実を生きていく。
波が、静かに寄せては返す。
まるで、「大丈夫」と言うみたいに。
おわり




