真実は苦しいもの
「誰だ、ノックもなし…に……どうしてここに…」
信じたくなかった。この人が犯人だと…
「ランストお兄様…あなただったのですね…」
目の前にいるあの人。
それは私の兄だ…
尊敬し、誇りに思い、愛している私のお兄様。
まだ信じられない。信じたくない。お兄様が全ての黒幕だなんて。
「ランスト・フィーレス。お前を捕える。」
「ちょ、なんの冗談を…私は何もしておりません…!私はただ、ここにいただけで…何をしたと言うのです…?」
あくまでも自分は無実だと言うお兄様。
私はそれを信じたいけど、証拠がある以上…無理な話。
「何もしていないと?」
「はい…!横領などしておりま…っ…!」
自分で墓穴を掘ったのね…
「俺は一言も横領の話で来たとは言っていないが?」
「…っ。」
ユーリス様の言葉に唇を噛むお兄様。
「ランスト。お前は自分の父親が寄付をしたお金を横領し、自分の私利私欲のために使ったんだな!」
「それは…」
「調べならついている。賭場へも調査が入った。その証言としてお前の名前がよく上がってるぞ。そして、その賭場ではお前が一番よく金を使い、羽振りもいいらしいな?そして、お前が俺やマーガレットに伝えたロベルト王子が賭け事に大金を使い込んでいると言うのは嘘だ。ロベルト王子も賭け事をしていたがお前以上の大金は使ったことがない。全部調べがついてるんだ。全て話せ。」
「…っ。」
「お兄様。お兄様が盗賊たちを操っていたことも調べがついています。証拠もしっかりと。そして、お兄様が依頼を受けその盗賊たちに私を襲うように指示をしたことも…すべて分かっています…もう、逃げられませんよ…」
お兄様は一つ息を吐いた。
「あははっ!バレたかぁ…仕方ないなぁ…そうだよ、マーガレット。全部俺だよ?」
どうして…
「どうして…!どうしてお兄様!どうしてそんなことをしたのですか!」
なぜ、どうして…!
お兄様…教えてよ…
「全部、お前のためだよ。マーガレット。」
…は?
「私の…ため?」
「そうだ。お前のためだ。俺はお父様に言ったんだよ。ロベルトとの婚約は認めないと!それなのに…お父様は勝手に決めた…そして見てみろ…お前は傷つき、婚約破棄され、挙げ句の果てには国を追放された!全部、お前のために起こした俺のお父様に対する復讐だ!!」
「…お兄様…」
そんなことされても嬉しくないわ…
なんで…なんで…そんなことのためにお父様を陥れたの…?ふざけないで…
「ふざけるな…!そんなことをして誰が喜ぶか!マーガレットは今傷ついている。誰のせいか…それは間違いなくお前のせいだ!マーガレットのためだと?なら、マーガレットを襲うことを指示したのはなぜだ!」
「…マーガレットは、俺に助けを求めなかった…婚約破棄されてもこの瞬間を待っていたかのように振る舞っていた…普通は兄である俺に頼るはずなのに…!そして丁度いいところに依頼が来たんだよ。マーガレットを殺せと。だから指示したまでだ!これで十分だろ?」
お兄様はそんなことを考えていたの…?
そんなことで私を襲わせようと…
「その依頼をしたのは、誰だ。言え…!」
「さあな。」
するとお兄様は剣を抜いた。
お兄様はユーリス様に向かい剣を振る。
そしてユーリス様も剣を抜き応戦する。
周りにいる衛兵たちも剣を抜いていく。
「お前たちは手を出すな。俺がなんとかする。」
なんとかするって言っても…
お兄様はやり手の剣士でお父様が認める愛弟子でもあるのに…
「ユーリス様、あなた一人ではお兄様に勝てません…!信じたいけど、これだけは…」
私も…応戦する。だから剣を抜こうとしたとき、腕を掴まれた。
「…レイス…何をしているの…?」
「…。」
「離しなさい!私は、ユーリス様と共にお兄様と戦うわ!」
私はレイスに向かって言った。
すると私に短剣を真正面で突きつけた。
「レイス…何をしているの…?…まさか…レイス…あなたが…」
「マーガレット様。依頼したのはこの僕ですよ。」
信じられない…だって、レイスは…
レイスはずっと私の執事だったじゃない…
「どうして…」
「あなたが死ねばフィーレス家は終わるから。」
「だから、なぜ!」
「僕の父親はロンド・フィーレスの弟だ!そして…ロンド公爵が俺のお父様を殺した…!」
「…なんですって…!」
「嘘だと思います?本当ですよ…全て。あの男がしたこともないくせにクッキーを焼いたんだ…それを食べた僕のお父様は食中毒で死んだ…!あいつが、クッキーを焼くから…!」
お父様がクッキーを焼いた…?
どうして…
それに、レイスのお父様が私のお父様の弟だったなんて…確かにレイスのお父様は亡くなったとは聞いていた。でも、そのお父様が私のお父様の弟だったなんて…
「レイス。すまなかった。」
「はっ!お父様…!」
「…っ!ロンド・フィーレス…!お前は俺のお父様を殺したんだ!そのせいで、お母様も病気に倒れて死んだ!全部全部、お前のせいだ!!」
今にもレイスはお父様の方に向かっていきそう。
だけどそれを守るように衛兵が盾になっている。
「お父様、なぜクッキーを焼いたのですか…」
「…それはだな…実はあの日、妻と喧嘩をしてしまったんだ…味が薄いとかいろいろ文句を言ってしまって…そしたら自分で作ってみなさいよって言われて…その時食べていたのがクッキーだったから、自分で作ったんだ…そのとき丁度やって来たのが弟のセインだった。クッキーのせいで食中毒になり亡くなったと聞いたときは酷く自分を恨んだよ…もちろん、私も食中毒になったが、助かってしまった。なぜ自分が生きてセインが死ななければならなかったのか自分を酷く恨んだよ…」
「そ、そんなの言い訳にしかすぎない!僕は、僕はこの手であなたを殺す!そして復讐するんだ!お父様とお母様のために!」
レイスは走ってお父様の方へ向かう。
私は、それを止めるために、剣の鞘を投げそれにレイスがつまずき転んだ。
衛兵はすぐさまレイスの持っていた短剣を奪い取りレイスを捕えた。
「…クソっ…!クソーーーっ!!」
私はレイスのところに行き、泣きじゃくる彼を抱きしめた。
「離せ、離せよ!!」
「離さない!!絶対に…」
暴れるレイスを自分の力全てで抱きしめた。
「僕は、僕は…マーガレット様を…殺そうとしたんだ…!優しくしないでくださいよ…」
そう言って泣くレイス。
「レイス…ごめんなさい。私は何も知らなさすぎたのね…あなたがどれだけ辛かったのか私も知っておくべきだったわ…私はあなたの主人失格ね…でもね、レイス。これだけは言えるわ…あなたと過ごした時間に一つも嘘はなかった。全てが大切だった…たとえ最初は復讐だったとしても、レイスは私を心配してくれたじゃない。危ない、危険だって私を止めたりして…私はレイスのその姿は嘘じゃないと思う。レイス、私はあなたが執事で幸せだわ。」
「…マーガレット…様…」
さっきよりも涙を流し、声をあげて泣くレイス。
「マーガレット様…すみません……」
そうしてレイスは衛兵に連れて行かれた。
もちろん、お父様へ謝罪もして…
ユーリス様は…
「マーガレット。俺は大丈夫だったよ。」
「ユーリス様…!無事だったのですね…!」
「うん。大変だったけどね…」
ユーリス様が指を指す方を見ると捕えられているお兄様がいた。
「お兄様…私はあなたを許しません。お父様をそして国民を馬鹿にし苦しめたこと、そして私を襲うように指示をしたこと。全て許しません。きちんと罪を償ってください…」
「…マーガレット…」
私は涙が出ていた。
それを見たユーリス様が私を抱きしめ涙を拭う。
「マーガレット。よく頑張ったね…」
「ユーリス様…!」
私は声を上げながらユーリス様の腕の中で泣いた。
全て明らかになって良かった。
でも、知りたくなかった。
知らなかった事実も知ってしまった。
この感情はどうすればいいのか分からない。
でも、それで良い。
この感情は心に留めておくべきだ…
一つの経験として、そして私のこれからのためにも…




