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正義のヒロインは魔王様!?〜巫女見習いと元魔王が紡ぐ絆物語  作者: 石島マコト
第4章 憧れの生徒会長

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第079話 “私たち”の証明

「行きますよ、神代先輩」


 宣言する。先輩の目をしっかりと見据えながら。


『ルーシーさん、前に言っていましたよね? 私がイメージすれば何でも形にしてくれるって』

『ああ、確かに言ったが……どうするつもりだ?』

『それは……こうです!』


 イメージする。2本の指で御札を挟む姿を。


『ブラディウスを現出させた要領か』

『はい!』


 指先に霊力が収束し、御札が形作られていく。

 次に私が思い浮かべるのは燃え盛る炎。すると今指で挟んだ御札から炎が噴き出し、私の指先で燃え盛る。


「行きます! “炎ノ護符”!!」


 炎に包まれた御札を先輩目掛けて飛ばす。マジシャンがトランプを投げるように。


 私の手を離れた御札は空中で3つに分かれ、先輩を狙う。


「魔力ではなく霊力の物質化か。だけど――」


 先輩の周囲を無数の紙人形が包み、渦のように回転し始めた。すると紙人形は水へと姿を変え、渦を巻く。渦は炎から彼女の身を守る盾となる。


『チッ、難なく防がれたか』


 初めて使う技にも先輩は瞬時に対応してくる。戦闘経験の差が顕著に現れる。


「ただの盾ではないわ。“清(せい)水(すい)怒(ど)濤(とう)”!!」


 先輩の周囲を覆っていた水の渦が竜巻となり、私の方へと向かってくる。呑み込まれたら一溜まりもない。そんな一撃。

 だけど、そんな攻撃さえ今の私たちには痛手にならない。先ほどの斬撃や電撃のように、腕を振るうだけで逸れていく。


「やはり厄介ね、その腕……いいえ、その袖(・)と言うべきかしら」

「袖?」


 彼女は小さく頷く。


「あなたの腕、正確にはその袖に集められた霊力が磁石のような役割を果たしているのでしょう? 霊力同士を反発させるためのね」

「…………」


 さすが先輩だ。私が感覚で行なっていることを冷静に分析し、私以上に理解しているみたい。


「……では、袖で触れて受け流せないほどの攻撃ならどうかしら?」

「え……?」


 先輩が言い終えると同時に、私の足元が青白く光る。次の瞬間、霊力で生み出された五角形と六角形のパーツが現れ、サッカーボールのような球体を作り上げていく。


「こ、これは!?」

『結界だ! どうやら閉じ込められたようだな。これはマズイかもしれん……』

「……」


 ううん。きっと大丈夫。今の私たちなら。


「この技であなたの本質を見定めるわ」


 私たちを包む霊力の結界。その内側に膨大な霊力が満ちていくのを感じる。全身を覆うように圧迫感が迫る。


「悪しきよ、爆ぜよ! “浄(じょう)魔(ま)裂(れっ)界(かい)”!!」


 結界内の霊力が膨張し、感じる圧が高まる。直後、私の耳を劈(つんざ)く轟音が辺りに響いた――




 土煙が視界を覆う。木の焦げたような臭いが鼻腔を刺激する。


 すると突風が吹き、一瞬のうちに土煙が晴らされた。手を突き出し、こちらを見つめる先輩の姿が現れる。どうやらこの風は先輩が起こしたものみたい。


「これでも無傷……。まさか本当に……」


 目を見開きつつも、何か思案している様子の神代先輩。


「まだ……続けますか?」


 先輩の目をじっと見つめながら問う。私としてはもうこれ以上先輩と争いたくはない。


「まさか本当に人間を支配しない魔族がいて、しかも神聖な巫女と共存し、共闘しているというの……?」

「先輩……?」


 先輩の声は僅かに震えていた。まだ完全には受け入れられていないのかもしれない。


「白峰さんの瞳……装い……そして清らかな力と霊術……」


 声を震わせながら、目を閉じる先輩。彼女が何を考えているのかはわからない。私には受け入れ難い事実を必死に受け入れようとしているように見えたけど……


 先輩の次の言葉を、そして一手を、固唾を呑んで見守る。すると、先輩の両腕が脱力したように垂れ下がった。


「先輩……?」

「…………」


 返事はない。代わりに彼女の身体を淡い光が包んだ。直後、彼女の纏う白と青を基調とした狩衣が消え始めた。まるで空気に溶けていくように。


 狩衣が消え去り、見慣れた神楽女学院の制服姿に戻った先輩。私の憧れの存在だった彼女が帰ってきた。そんな感じがした。




「俄には信じ難いけど、どうやら本当に操られているわけではないようね……」


 狩衣姿から制服姿に戻り、刃を収めた先輩が語り始める。


「信じて……くれるんですね……?」

「今のところは、ね」


 やっとだ。やっと先輩がわかってくれたんだ。


「『今のところ』というのが引っ掛かるな」


 デビライズを解き、実体を露わにしたルーシーさんが口を開く。すると先輩が刺すような鋭い視線をルーシーさんへ向けた。


「魔族は黙ってなさい。白峰さんが洗脳を受けていないというのは信じるけど、まだ貴様のことを信用したわけではないのだから」

「フン、面倒な奴だ」


 ……どうやらまだルーシーさんのことは認めてくれていないみたい。


 ルーシーさんが表に出たままだと話が進まなそうなので、一旦ソウルダイブで引っ込んでもらうことに。


「ひとまずすぐに脅威になる心配はない。陰陽寮にはそう報告させてもらうわ」

「先輩……ありがとうございます」


 良かった……。とりあえずこれ以上陰陽寮の人たちと争う必要は無くなりそう。


「ただし、さっきも言った通りルシフェリアを信用したわけではないわ。だから今後もあなたたちの監視は続けさせてもらうわよ」

「え゛っ……」


 私の反応なんて気にも留めずに、先輩は歩き出した。どうやらまだ完全に自由の身とはいかないみたいだね……


 とりあえず今日のところはこれで解放される。そう思っていたら突然、先輩が踵を返し、こちらへ向かってきた。


「あ、あの……まだ何か……?」

「…………」


 私の前に立ち、無言で見つめてくる。もう私には先輩に対して後ろめたいことはないはずなのに、思わず後退りしてしまいそうな眼力だ。


 ――だけど、すぐに先輩の視線は私から外された。


「ごめんなさい!」

「……へっ?」


 先輩からの思わぬ言葉に、素っ頓狂な声を上げてしまった。


「目的のためとはいえ、あなたの身体をたくさん傷つけてしまった。きっと怖い想いもさせてしまったわよね? だから……ごめんなさい!」

「い、いえ、もう大丈夫ですから! だから頭を上げてください!」


 先輩に頭を下げられ、なんだかこちらも申し訳なくなってしまった。


『フン、私の方がもっと痛い目に遭わされたんだがな。私への謝罪はなしか?』

『る、ルーシーさんは黙っていてください!』


 ソウルダイブ中だから先輩には聞こえていないと思うけど、とりあえず今は静かにしていてほしい。そう切に願う。


 突然先輩が現れ、戦うことになった時はどうなることかと思ったけど、無事に済んでとりあえず一安心……かな?


 とはいえまだまだ魔族の脅威は続くだろう。でも、私たちには新しく手にした力もある。ルーシーさんと二人、力を合わせればきっとみんなを守れる。ルーシーさんの夢だってきっと叶えられる。今の私はそう信じることができた――

お読みいただきありがとうございました。

続く第80話も投稿しております。よろしければお読みください。

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