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正義のヒロインは魔王様!?〜巫女見習いと元魔王が紡ぐ絆物語  作者: 石島マコト
第4章 憧れの生徒会長

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第075話 憧れと決別

「ルーシーさん……」


 ルーシーさんを滅するためにやってきたという憧れの先輩・神代優咲。ルーシーさんは私と先輩を戦わせられないと言い、一人で先輩と戦うために霊山へ向かってしまった。


「本当にこれで良かったの……?」


 私だって神代先輩と戦いたくはない。だけど、ルーシーさんが先輩と戦うのだって嫌だ。それなのに私は二人を見送ってしまった。


 元魔王と人間の中学生。普通に考えれば戦いにすらならない組み合わせ。だけど、先輩はただの中学生じゃない。特級陰陽師と名乗っていた。ただの陰陽師ではなく、特級と。


 背筋を嫌な汗が伝う。不安が胸を押し潰そうとしてくる。


『私は私の夢を諦めるつもりはない。たとえお前に否定されようとも、お前の前で誓った夢は叶えてみせる』


 脳裏に浮かぶ、ルーシーさんの言葉。


『初めてお前の心にソウルダイブした時に感じた温もり。そして優しさ……。あの時感じたあの感覚は尊く、素晴らしいもの。私はそう信じている。そして――他の魔族だってそんな感覚を抱いていい。抱いてほしい。そう思っているんだ』


 夢を語る、彼女の言葉。


 今だって彼女の夢が正しいかはわからない。だけど。


 ――その夢を応援したいという気持ちは本物だ。


「……そうだ。そうだよ」


 ルーシーさんが私と人間を戦わせられないと言ったように。


「私だって……ルーシーさんと人間を……戦わせたくない……!!」


 そうと決まれば、向かうべき場所は我が家じゃない。ルーシーさんのいる、白峰霊山だ。


「ルーシーさん、待っていてください……!」


 私は全力で駆け出した。独り戦う彼女のもとへ向けて。




 ――バサバサバサ……


 山の中から度々聞こえる轟音。その度に鳥たちが一斉に羽ばたく音も聞こえてくる。どうやら二人の力が激しくぶつかり合っているみたい。


 先輩の霊力はわからないけど、ルーシーさんの魔力の気配はわかる。その反応を頼りに、霊山の奥へと進んでいく。


「どうしてだろう? 二人に近づいているはずなのに、ルーシーさんの気配が強くならない。むしろ弱まっていっているような……」


 反応の対象に近づくほど、気配を強く感じるはずなのに。

 答えは至って簡単だ。だけど、私はすぐにはその答えに至らなかった。きっと私がそれを信じたくなかったから……かもしれない。


「……まさか、ルーシーさんが本当に追い詰められている……!?」


 嫌な予感が加速する。運動の汗とは別の汗が肌を伝う。


「ルーシーさん……ルーシーさん……!!」


 彼女の名前を呼びながら、山の中へ分け入っていく。そして。


「ルーシーさ……」


 ついに見つけたルーシーさんと神代先輩。だけど、ルーシーさんは既に血塗れで横たわっていた――




「ルーシー……さん……?」


 血溜まりの上に力なく横たわるルーシーさん。そして蒼白く光る剣を、ルーシーさんの頭に突きつけている神代先輩。対照的な二人の姿が一気に視界へ飛び込んできた。


「結局一人では勝てないと踏んで呼び寄せたか」


 軽蔑するような冷たい口調で言い放つ先輩。


「先……輩……? ルーシーさんは……?」

「さすがにしぶといわ。全身を斬りつけたのに、まだ生きている」


 まだ生きている。その言葉を聞いても、安堵なんてできなかった。


「安心しなさい」

「え……?」

「すぐにとどめを刺して、あなたをこの魔族から解放してあげるから」


 ――ゾクッ。


 思わず身震いした。先輩の言葉は私を想って発したもののはずなのに。背筋に悪寒が走った。


 先輩は本気で「私のため」にルーシーさんを手に掛けようとしている。それが正しい行いだと信じて疑っていない。彼女の声色からはそれがはっきりと伝わってきた。


「やめて……ください……」


 だからこそ、言わなくちゃいけない。


「ルーシーさんは……」


 だからこそ、伝えなくちゃいけない。


「ルーシーさんは、悪い魔族じゃありません……!」


 私の声は震えていたと思う。だけど言った。言い切った。


 ――しかし先輩には微塵も響かなかったみたい。


「ここまで追い詰められてもなお洗脳を解かないか」

「ッ……!」


 駄目だ。何を言っても先輩は信じてくれない。


「やはり殺す以外に白峰さんを解放する手段はなさそうね」

「だ、駄目……やめて……ください…………!」


 どれだけ懇願しても、届かない。先輩は刃を納めてはくれない。


 ――こうなった以上、ルーシーさんを守る方法は……一つしか、ない。


 一歩、また一歩。ルーシーさんのもとへと歩みを進めていく。


「白峰さん……?」


 ルーシーさんの傍に立ち、先輩の前に立ちはだかる。


「これ以上……ルーシーさんは傷付けさせません……!!」


 先輩の瞳を見つめながら、はっきりと示す。


 ――私の覚悟を。


「……ルーシーさん!! デビライズを!!」

「くっ、まだ白峰さんを操り、利用するつもりね……!!」


 私たちのデビライズを阻止するためだろう。先輩は蒼白い剣で斬りかかってきた。だけど。


 ――キィィィィィンッッッ!!


 私の身体から放たれる光が、溢れる力の衝撃波が、彼女の斬撃を弾き返した。


「白峰さんが魔族化した……。魔族め、よくも……!」


 まだ私が操られていると信じて疑っていないらしい。私たちがデビライズしたことで、先輩の魔族への敵意が更に増したみたいだ。


「神代先輩、あなたは私の憧れです。……いいえ、憧れでした」

「…………」


 神代優咲。学院みんなの憧れの存在。いつも優しく生徒たちに寄り添ってくれる、頼りになる生徒会長。いつも自信に満ち溢れた、凛々しい先輩。

 そんな彼女に、自分に自信のない私は漠然と憧れていたんだ。だけど。


「でも、あなたがまだルーシーさんを傷つけるつもりなら……」


 ――私は憧れと決別する。


「私は……あなたと戦います!!」

「ッ……!!」


 先輩は強い。先輩は怖い。それでも、ここで退くわけにはいかない。絶対に――!!

お読みいただきありがとうございました。

続く第76話も投稿しております。よろしければお読みください。

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