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正義のヒロインは魔王様!?〜巫女見習いと元魔王が紡ぐ絆物語  作者: 石島マコト
第4章 憧れの生徒会長

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第068話 気になる魔王様

 ルーシーさん実体化生活2日目。外出自粛要請が解かれていないため、今日も学校はお休み。


 でも、お休みだからといってだらだらとは過ごさない。いつも通りの時間に起き、身なりを整え、朝ご飯を食べる。


 食べるんだけど――


「なんだ舞桜? 先程からじっとこちらを見ているが」

「あ、いや……」

「言っておくが、この鰈の煮付けはやらんぞ?」

「別にルーシーさんの分のご飯は狙っていませんよ!」


 確かにお祖母ちゃんの作る鰈の煮付けは美味しい。味がよく染み込んでいて、白米との相性もピッタリだ。


 ――でも、今はそうじゃない。


「ルーシーさんの着ている巫女装束のデザイン、昨日着ていたものとは違うデザインですよね?」

「おっ、気が付いたか。これはだな……」

「る、ルーシーちゃん! しーっ! しーっ、じゃ!」


 ルーシーさんがにこやかに説明しようとしたところで、お祖父ちゃんのストップが入った。明らかに様子がおかしい。慌てっぷりが怪しすぎる。


 そう思ったのはどうやら私だけじゃなかったみたい。


「まーたこのスケベジジイは! ルーシーちゃんが嫌がらないのを良いことに、また別の服を着せて!!」

「しょうがないじゃろ! ルーシーちゃんにずっと同じ服を着てもらうわけにもいかんし!」

「だとしても、せめて雪(せつ)華(か)や賢(けん)志(し)君の服で――」


 祖父母のいつもの夫婦のじゃれ合いが始まってしまった。


「爺さんたちは相変わらずだな。しかし、雪華に賢志とは誰のことだ?」

「……私の……お母さんと、お父さんです……」


 白峰雪華と白峰賢志。10年前に事故で亡くなった私の両親。


「……亡くなっているんだったか。思い出させてしまったか?」

「いえ……大丈夫ですよ。10年も経ちましたし、もう立ち直っていますから」

「そうか。それなら良いが」


 嘘は言っていない。だけど最近、彼らの登場する夢をよく見るようになった。そのことは気になっている。夢の中の両親は、知らないはずのルーシーさんの名前まで知っているみたいだったし。


「…………」


 両親が亡くなっていること自体はもう気にしていない。だけど、私の言葉数は減っていた。


「何か気になるのか? それともやはり……」


 私の様子を気にかけてくれたのか、ルーシーさんが声をかけてくれた。


「いえ、本当に大丈夫ですから」

「そうか?」


 夢のお告げのような、「ルーシーさんを信じろ」というお父さんの言葉。その話をルーシーさん本人にするのはさすがにちょっと気恥ずかしい。それに――


 わざわざ口に出さなくたって、私はルーシーさんのことを信じているんだから。




『おはようございます。6月3日火曜日、8時のニュースです』


 テレビから聞こえてくるキャスターの声。ただの挨拶なのに、ルーシーさんが反応を示した。


「今日は6月3日なのか」

「そうですけど……。それがどうしたんですか?」


 6月3日という日に、何かあるのかな?


「つまり明日は6月4日、ということだろう?」


 当たり前すぎる内容の確認。本当にどうしたんだろう?


「3日じゃなくて4日の方に何かあるんですか?」

「ああ。……まあ、アザゼロス暦の6月4日の話だ。人間界の……確か西暦だったか。その6月4日とは違う。気にするな」


 こんな風に言われたら、気にするなと言われても無理だ。


「アザゼロス暦の6月4日だとしたら、何があるんですか?」

「…………誕生日だ」

「へ?」

「私の誕生日なんだ」


 意外だった。もちろん6月4日生まれなのが、じゃない。誕生日を気にしていることが、だ。


 魔王様が誕生日を気にしているなんて、イメージとのギャップがすごい。そのギャップがなんだか可愛らしい。愛しささえ感じる。


「へー! いいじゃないですか、誕生日!」

「いや、だからアザゼロス暦で、の話だ。こちらに来てからまだ2週間ほど。魔界はまだ11月頃のはずだ」


 珍しく照れくさそうにするルーシーさん。そんな姿を見せられたら、余計にお祝いしたくなってしまう。


 そう思ったのはどうやら私だけじゃなかったみたい。


「ルーシーちゃん、明日誕生日なのかい?」

「いや、だから、西暦ではなくアザゼロス暦の……」

「細かいことはいいじゃろ。せっかくうちに来てくれたんじゃからな」


 祖父母も乗り気だ。これにはさすがの魔王様もたじたじ。観念するしかないみたいだった。


「……ハァ。違うと言っているのに」


 嘆息するルーシーさん。でも、声色は明るい。


「……仕方がない。そんなに祝いたいと言うのなら、祝われてやろうじゃないか!」


 物凄い上から目線。でもその表情はすっかり緩んでいた。




「でも、外出自粛中だよね? どうしよう……」


 ルーシーさんの誕生日はお祝いしたい。だけど、街は2日前に魔族の被害を受けたばかり。出歩くのは躊躇われる。


「なーに、別に禁止ではないんじゃ。全く出歩かんなんて無理じゃしな」

「い、いいのかな……?」

「買い物もしないといけないしねぇ」


 それは一理あるかも。急に外に出るなと言われても、家に食べ物や日用品がなくなれば出ざるを得ない。


「それに、いざとなったらルーシーちゃんが守ってくれるんじゃろ?」

「フフン。任せておけ!」


 両手を腰に当て、得意気に語るルーシーさん。でもそれ、私も一緒に戦うやつですよね!?


 脳裏に不安が過ぎる。祖父母の前でクイン・ルシフェリアの姿になるのは絶対に避けたい。

 そもそも変身してもいいのかな? 結局祖父母がどこまで知っているのか、わからないままだし……


「それじゃあ明日、みんなで出かけようかね」

「む? これから行くのではないのか?」

「ほっほっほ。ルーシーちゃんはせっかちじゃのう」


 逸(はや)るルーシーさん。だけど祖父母は今日ではなく、明日出かけるつもりみたい。


「えーっと、それじゃあ明日お出かけ……でいいんだよね?」

「ええ。今日は準備もあるしねぇ」

「準備?」


 お祖母ちゃんは一体何を準備するつもりなんだろう?

 少し気になるけど、私はルーシーさんと一緒に部屋へ戻ることにした。


「舞桜、ちょっといいかい?」


 だけど、お祖母ちゃんに引き留められた。


「お祖母ちゃん?」

「あっ、ルーシーちゃんは先に舞桜の部屋に戻っていていいからね」

「む? そうか」


 ルーシーさんだけ先に戻らせ、私だけを残らせたお祖母ちゃん。どうしたんだろう?


「お祖母ちゃん、どうしたの?」

「実はお祖父さんと話していたんだけどね、ルーシーちゃんにスマホを買ってあげようと思うんだ」

「す、スマホ!? ルーシーさんに!?」


 あの魔王様にスマホを渡すなんて不安しかない。妙なサイトやゲームに知らず知らずのうちに課金したりしないか心配だ。


「今後一人で行動することも出てくるじゃろう? だから買ってあげようと話していたんじゃ」

「明日が誕生日だというし、ちょうどいいタイミングだと思ってねぇ」


 確かに今後ルーシーさんと離れる機会が増えるなら、スマホを持っていてくれた方が安心できるかもしれない。


「で、でも、ルーシーさんって好奇心旺盛だから、変なサービスを契約したりしないか心配だよ……」

「そこは設定で制限をかけたり、キッズスマホを使ったりとかいろいろあるじゃろ」

「キッズスマホ……」


 彼女の外見は20代前半の大人の女性。そんな彼女がキッズスマホを使っている姿はなかなかシュールかもしれない。

 ……ううん、そもそもキッズスマホなんて受け入れてくれるかな?


「さ、さすがにキッズスマホは……」


 ルーシーさんは魔王としてのプライドは高め。子供扱いなんてしたらきっと拗ねる。拗ねている姿は子供っぽいけども。


「そうかい。それじゃあやっぱり、制限でなんとかするしかなさそうだねぇ」

「その辺りの設定はわしらもあまり詳しくないし、舞桜にお願いすることになりそうじゃのう」

「うっ……」


 別に私も詳しくはないので自信はない。こういうのはトモちゃんや神主の瞬さん辺りの方が詳しいと思う。


(とは言えトモちゃんにも、瞬さんにもお願いしにくいよね……)


 ルーシーさんが魔族だと伏せたままスマホに制限をかけるなんて、傍(はた)から見たら変に思われるだろうし。


「調べながら頑張るしかないかぁ……」


 不安でいっぱいだけど、これもルーシーさんのため。私は少し重い足取りで彼女のいる部屋へと戻った――

お読みいただきありがとうございました。

次回、第69話は8/27(木)投稿予定です。よろしければまたお読みください。

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