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正義のヒロインは魔王様!?〜巫女見習いと元魔王が紡ぐ絆物語  作者: 石島マコト
第3章 舞桜、全国デビュー!?

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第063話 希望の少女と脅威の魔王

 20畳ほどの広い和室。部屋の中央には黒漆塗りの大きな机があり、その上座には狩衣を着た壮年の男性が腰を下ろしていた。


「やはり、もう隠蔽は不可能かと」


 淡々とした口調で、電話口にそう告げる男性。するとすぐに向こうから返答が返ってきた。酷く慌てたような声で。


『か、簡単に言わないでくれ! 公表するにしても、どう公表しろと言うんだ!?』

「それを考えるのは、貴方たち政府(・・)側なのでは?」


 慌てる通話相手の様子など気にも留めていない調子で、事務的に語る男性。それが相手をさらに動揺させたようだ。


『だ、だからと言って、“魔族”が我々の世界にやってきていて、“人間”に取り憑いて暴れているなど、公表できるものか!!』


 その反応も無理はない。狩衣の男性と違い、この政府側の人間は魔族の存在など今まで認知しておらず、伝承の中の存在に過ぎないと認識していたのだから。


「ならば、『この超常現象については現在調査中です』で押し切ればよろしいかと」

『そ、そんなことができるか! 数千人規模の目撃者……いや、既に動画はSNSでも拡散されている。それも含めたら、何百万、何千万の人々が目の当たりにしているんだぞ!?』


 大人気アイドル・Gracie(グレイシー)☆Stella(ステラ)。そのライブ会場で起きた、魔族に取り憑かれた少女たちの激突。

 実際に現場にいたファンたちや配信を観ていたファンたちによって、その惨劇は瞬く間に全世界へと拡散されてしまっていた。


「映像はAI等を活用したフェイク動画……との意見も多いようですが?」

『そんなもの、専門家が調べればすぐに本物だとバレる! それに、実際にライブ会場が一つ、災害の跡地のようになっているんだぞ!? フェイクなんて言い訳、通用するものか!』


 声を荒らげ続ける政府の人間に対し、狩衣の男性は内心嘆息していた。


 確かに、魔族の存在を公表すれば国民の大混乱は避けられないだろう。だが、どう足掻いてももう隠蔽は無理。その段階に来ている。ならば腹を括る他ない。――彼はそう考えていた。


「まあ確かに、私も隠蔽すべき理由はあると思いますがね」

『何……?』


 彼の言葉が予想外だったのだろう。政府側の男性は少しだけ落ち着きを取り戻したようだった。


「魔族の存在を知り、パニックになれば人々は醜く争うことでしょう。そうなれば魔族共の格好の餌食になってしまいますから」

『ふ、ふむ……』


 魔族は悪しき欲を抱く人間を好み、取り憑く。そしてその人間の生命力を糧とする。

 有事の際、全ての人々が皆で手を取り合い、助け合えるのならば問題はない。

 だが、現実はそう上手くはいかない。我が身大事に、他者を蹴落とす者もいるだろう。混乱に乗じ、利を得んとする者も現れるかもしれない。中には、力欲しさに自ら魔族を求める者まで現れる可能性さえある。狩衣の男性はそこまで見据えていた。


「ただ……そこまで考慮した上で、やはりもう公表せざるを得ない段階まで来ている。そう私は判断します」

『むぅ……』


 隠蔽すべき理由を並べた上で、それでも公表すべき。その言葉は重い。そこまで理解した上で電話口へ告げる男性。


『……わかった。今夜にでも緊急の記者会見を開くとしよう』


 観念したのか、電話口から聴こえる声に覇気はない。


『……志藤艶美はどうする?』

「そちらは既に手配済みです。久池風茉と同じ、我々の目が届く警察病院へ搬送させました」


 1週間ほど前に美多摩市で起きた、魔族による誘拐及び食糧強奪事件。その一件で連中の親玉に寄生された女性・久池風茉。彼女は魔族から解放された後、とある警察病院へ搬送されていた。似た境遇の艶美が同じ場所へ搬送されるのも当然だろう。


「千房愛奈と仲田立花についても。彼女らも、記者会見の後にでも搬送する予定です」

『あの二人まで?』


 彼女たちは風茉や艶美とは異なり、被害者側だ。だが、彼女たちは知りすぎた。例(・)の(・)少(・)女(・)を庇い、逃がした件もある。放置はできない。

 もっとも、逃がしたことより正(・)体(・)を目撃していることの方が問題なのだが。


「彼女たちはただの被害者ではありません。余計な情報が漏れ、人々の混乱を煽られる事態は避けたいのです」

『それもそうか……』


 こう言われれば納得せざるを得ないだろう。そう考えた上で発言する壮年の男性。


『最後にもう一つ。魔族に支配された志藤艶美。彼女と戦っていた少女については? あの少女について、何か情報はないのか?』

「そちらも心配には及びません。既に手は打ってあるので」

『……?』


 訝しむような声が電話口から返ってくる。だが、狩衣の男性は気にも留めない。


「とにかく、例(・)の(・)少(・)女(・)の件は我々“陰陽寮”に全てお任せください」


 沈黙する電話相手を無視し、通話を終える“陰陽師”の男性。


「白峰舞桜……いや、ク(・)イ(・)ン(・)・(・)ル(・)シ(・)フ(・)ェ(・)リ(・)ア(・)。君が人間界を守る希望の光となるか、最大の脅威となるか……」


 彼は呟く。1枚の写真を見つめながら。――その写真には狩衣の若い男性、そして巫女装束の若い女性が写っていた。


「我が陰陽寮――いや、人間界最強の戦士が確かめさせてもらおう」


 舞桜とルーシーの身に、新たな試練が迫る――

お読みいただきありがとうございました。

続く第64話も投稿しております。よろしければお読みください。

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