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正義のヒロインは魔王様!?〜巫女見習いと元魔王が紡ぐ絆物語  作者: 石島マコト
第3章

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第059話 断首の刃

 捨て身の黒雷攻撃でも、マリン・レヴィアを倒すには至らなかった。それどころか、こちらは虫の息だというのに、向こうはまだまだ活力に溢れているようだった。


「……さすがにおかしい。ポルヴォの腕に抱えられていた時、確かに奴はダウンしていたはずだ」


 私もルーシーさんと同意見だ。確かにあの時、レヴィアは追い詰められていたはず。デビライズこそまだ解けていなかったけど、狸寝入りには見えなかった。


「フフン♪ 冥土の土産にぃ、ネタばらししてあげるわぁ」


 毛先を指でくるくると弄りながら、私たちの疑問に答え始めるマリン・レヴィア。その声は楽しそうだった。まるでドッキリ企画のネタばらしをする時のように。


「アンタらさぁ、アタシらがポルポッドをばら撒いてた理由、どう考えてんのぉ?」

「なに……?」


 ルーシーさんの推測では監視ということだったけど、違うのかな?


「まず一つは偵察。アタシの依代候補とルシフェリアを探すためね」


 なるほど。それで艶美さんに目をつけ、彼女のそばにマスコットとして潜伏していたんだ。


「待て。いくらポルヴォが上級とは言え、さすがに人間界の各地に大量のポルポッドをばら撒くことはできんはずだ」

「ハァ? それが何?」

「大量にばら撒いたのは美多摩市周辺だけなんだろう? 何故美多摩市に絞れた?」


 ルーシーさんは基本的に私にソウルダイブしている。その間、彼女の気配はかなり弱まるのに、どうして……?


 しかし、マリン・レヴィアは嘆息した。まるで「そんなこともわからないの?」と馬鹿にしてるように。


「アンタら、ベルゼと派手に殺り合ったんでしょー? じゃあその周辺に潜伏してるんだろう、って普通は考えるんじゃなーい?」

「チッ。ベルゼの件も共有済み、というわけか……」

「ま、待ってください。ひょっとして私たちの情報って漆罪魔たちの間で共有されているんですか!?」


 もしそうなら今後も漆罪魔たちは私たちを狙って現れるかもしれない。


「さぁねー? ま、ここでアンタらはアタシに殺されるんだしぃ、気にしても無駄無駄」

「……」


 それはその通りだ。ここで殺されてしまったら、他の漆罪魔に狙われるかどうかなんて気にしても意味がない。


「そんじゃ二つ目。二つ目は監視! 対象は当ッ然アンタらと……ついでに部下ども。サボってないかちゃんと見とかないとねぇ」


 やっぱり見られていたんだ。ということはきっと私が依代だということも……


「そしてー? 恐らくアンタらが気付いてない、最後の一つはー?」


 ――ゴクリ。いよいよマリン・レヴィア復活の理由が明かされる。


「生命力の吸収と還元。ポルポッドにキャーキャー言ってた馬鹿な人間どもからチューチュー吸い上げて、このアタシに還元させたってわけ」

「それが復活の理由か……!」


 街中に大量に放たれたポルポッドちゃんたち。彼らは人間たちに可愛がられながら、その生命力を奪っていた。


「生命力を奪われた人たちは……?」

「さぁねー? 人間どもが死のうが生きようが、アタシは興味ないしー」


 ……ベルゼたちと同じだ。レヴィアも人間の命なんてなんとも思っていない。その事実が私の心に重くのしかかる。やっぱり人間と魔族の共存なんて夢物語で、実現なんて無理なのかな……


 視界が滲む。無関係な人たちが犠牲になっているという事実。そしてルーシーさんの夢が軽く一蹴されているという事実が悲しい。苦しい。


「……ふざけるな」

「……ハァ?」

「ふざけるなと言っている」


 背後から聞こえる声は静かだ。だけど、その声には明らかに怒りが込められている。そう感じられた。


「いい加減にしろよ、レヴィア」

「キャハハハッ♪ ボロボロの依代の陰からしゃしゃり出てきても、ちっとも怖くないってーの」


 怒るルーシーさん。その様子を気にも留めないマリン・レヴィア。改めて対立する二人の漆罪魔。


「……やはり貴様(・・)とは一番馬が合わん」

「へぇー、それは光栄ねぇ♪」


 さらに声のトーンが一段下がったルーシーさんに対し、マリン・レヴィアは一段も二段も上がった。


「それじゃ、そろそろ終幕(フィナーレ)といこうかしら♪」


 マリン・レヴィアの右手がアリーナ席に溜まった水を吸い上げていく。吸い上げられた水が棒状に伸びていく。


 ――ヒュォォォッッッ……


 空気が一段と冷える。棒状になっていた水が凍っていく。


「あ、あれは……氷の剣?」


 マリン・レヴィアの手に握られた氷の剣。周囲には雪の結晶のようなものが舞っている。


「“氷雪(ネーヴェ)()刀剣(スパーダ)”」


 氷の剣を構え、その出来を確認するように刀身を眺めている“嫉妬”の魔。


「こいつでアンタらの首、斬り落としてあ・げ・る♪」


 瀕死の私たちに、マリン・レヴィアの氷の刃が迫る――




「大人しく斬り殺されるぅ? そ・れ・と・も、最後の悪あがき見せてくれるぅ?」


 氷の剣を構えたマリン・レヴィアがこちらへ向かってくる。氷の上を滑るかのように優雅に。


『……舞桜、イメージしろ。奴の氷の剣に対抗する、魔王の大剣を』

「えっ!?」


 急にそんなことを言われても困る。それに私たちにはもう、そんな力は……


『鞘から引き抜くイメージで! 急げッ!!』

「は、はい……!」


 ルーシーさんに急かされ、急いで両手に力を集中する。残り僅かな力を。そしてルーシーさんの指示通り、鞘から剣を引き抜くイメージで右手を動かすと……


 ――ギィン。


 両手に集めた力が剣へと変わる。血のように赤い刀身をした、魔王の剣に。


「こ、これは……!?」

『“魔王剣・ブラディウス”。詳しい説明は後だ。こいつでレヴィアの氷の剣を受け止めろ……!!』


 ――ガキィィィンッ!!


 刀身同士がぶつかり合う。氷雪の刀剣は金属じゃないのに、相当な硬度があるみたい。ブラディウスとのぶつかり合いで、金属同士がぶつかり合うような音が響いた。


「ぐ……ぐぐ……」

『く、くそっ! 身体の痺れは取れたが、やはりパワーが出せん……!』


 マリン・レヴィアはポルポッドちゃんたちの支援を受けて立ち上がった。一方、私たちは消耗したまま。考えるまでもなく分が悪い。


「ほらほらほら! 剣を出しただけでバテてるようじゃ、その首簡単に落ちちゃうわよー?」


 ――ガキィンッ! ガキィンッ!


 何度も何度も氷の剣が振り回され、魔王剣が叩かれる。本当は剣以外の部分も攻撃できそうなのに、わざと剣を叩いて楽しんでいるようだった。


「……なーんだ、抵抗してくんないんだ。つまんなーい。そんじゃ、本当にもう終わりにしてあげるわぁ!」


 氷雪の刀剣を振り抜くと同時に、吹雪が私を襲った。もう私の足腰には踏ん張る力もなく、吹き飛ばされてしまう。


「う……うぅ……」


 ゴロゴロと数メートルほど転がされ、私の身体はステージの端まで追いやられていた。


「正直言うとさぁ、魔王の座に興味なんかないんだけどぉ……」


 氷の剣が構えられる。――私の首を落とすために。


「サタナスのクソガキにくれてやるくらいなら、アタシが就こうかしらねぇ。……アンタらの首を手土産にして、さ♪」


 今度こそ終わり。彼女の刃の餌食になる。そう思い、思わずギュッと目を瞑ってしまった。だけど。


 ――私の首が落とされることはなかった。


「あ、あれ……?」


 恐る恐る目を開ける。視界に入ってきたのは氷の剣を持つマリン・レヴィア。ここまでは想像通り。当然のことだ。


 でも、彼女の視線は私を見ていなかった。

 彼女の視線を私も追う。するとそこには二つの影があった。


「ま、愛奈さんと……立花さん……!?」


 避難したはずの二人がどうして……? まさかポルヴォやポルポッドちゃんの仕業?


 そう考えたけど、どうやら違うみたい。


「つーちゃん、もうやめて……!!」


 愛奈さんの瞳から落ちた雫がキラリと光った。


 艶美さんを止めようとする言葉。それは彼女たちが自らの意志でこの場に戻ってきたことを示していた――

お読みいただきありがとうございました。

次回、第60話は7/27(月)投稿予定です。よろしければまたお読みください。

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